エピソード77『世界樹 -妖精さんを仲間にするには?-』
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- 2024年5月2日
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エピソード77
―グレイス城―
数日後、一行は大きな城に辿り着いた。
立派だが、聖都ギュイオンヌ大聖堂とは趣が全く違う。一言で言えば、無骨である。
なんでもグランバニアの町民は、「悪の軍勢と戦っている国だ」と言っていた。
なるほど、いかつい鎧で武装した、ガタイの良い男が数多い。
な「おぉー!なんか強そうな人がいっぱい!」
ゆ「でも、なんかみんな疲れてるような?」
一行はそういう印象を受けた。
宿屋に部屋をとると、宿のバーでは鎧姿の男たちが昼間から酒を飲んでいた。
兵「おい!もうこの兵数では限界だぜ!援軍はまだなのか?」
兵「募集は掛けてるらしいんだがな。応募がないんだよ」
兵「外の国からでも呼んでくればいいじゃねぇか!」
ちょっととっつきづらそうだが、意を決して話しかけてみた。
ア「あ、あの。誰と戦っているの?」
兵「なんだ?あぁ、冒険者か。
誰って、魔王軍に決まってるだろ!
知らないのか?グレイスの兵士たちが食い止めてるから、世界は壊滅せずに済んでるんだぜ!」
な「えぇ、そうなの!?ありがとございますぅ」
ゆ「そんな話、全然聞かなかったわね・・・」
ア「魔王軍のどんなヤツが来るの?やっぱり強いの?」
兵「おう!おまえも兵士になれよ!」
兵「バカバカ!志願兵なんてやめとけ!おまえらじゃムリだよ!
大神官ハーゴンの忠実なしもべだった、魔術師やらアンデッドやらが襲ってくるんだ」
な「まじゅつし!」
ゆ「アンデッド!」
兵「プチアーノンの比じゃねぇぞ!おまえらは海辺で遊んでろ!」
兵「そこまで言うなや。別に何も悪いことしちゃいねぇのに」
ストレスから苛立っているのだろうか・・・。
なんとなく事情はわかった。一行は酒場から出た。
すると、町はなんだか騒がしい。
大勢の兵士が外から担ぎこまれ、詰所とおぼしき建物の中へと運ばれていく。
ア「一戦交えて、こっぴどく負けたのかな」
キ「ハッキリ言わないの!」
な「なんか心配だよぉ。《ホイミ》してあげる?」
ゆ「行ってみましょう!」
一行は、戦力になれないとしても何かしてやれることがあるのではと意気込んだ。
野戦病院だ。詰所は無数の兵士が転がり、戦傷の手当を受けていた。
兵「僧侶を呼べ!」
兵「城の救護班を総動員!」
な「あの!」ななが手助けを提案しようとしたが、
兵「邪魔だ!どけ!」
この状況で、この子供のような一行が役に立つとも思われないのだった。
アミンは馬車に駆け戻った。手製の煎じ薬草やマヒ解き草などが力になるはずだ。
女たちはしばらく、ただただ野戦病院の様子を見ていた。
ア「これ、使ってくれ!」
アミンは自己紹介すらせず、ただ手持ちの回復アイテムを手近な負傷者や救護員に手渡した。
しかし、どれもこれもめぼしい回復を見せない。
な「やっぱり《ホイミ》だよ!
こういうときのために使えるようになったんだった!」
ななは適当に負傷者の元に駆け寄ると、回復魔法を掛けてやってみた。
幾人かはそれで体が動くようになった。
しかし幾人かは《ホイミ》をしても動かない。傷が深いようにも見えないが・・・
な「キキちゃん!おっきい《ホイミ》をしてあげ・・・」
ゆ「わかった!食事だわ!」
状況をずっと観察していたゆなが、ついに口を開いた。
ア「え?」
ゆなは救護員に駆け寄った!
ゆ「その食事では不充分です!
お肉だけでなく、もっと繊維質のある野菜をたくさん与えないと!
ミネラルも足りてそうにありません。この辺で海藻はとれませ・・・」
救「あぁ?なんだ君は。
野菜だって?何言ってんだ!兵士は肉を食って強くなるんだよ!」
ゆ「でも!肉だけでは・・・」
ゆなは元看護師だ。化学医療の限界に気づいて、食事や生活を重んじる知恵を持っていた。
救「お願いだから、救護の邪魔をしないでくれ!」
一行は建物から閉め出されてしまった。