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エピソード77 『天空の城』

  • 執筆者の写真: ・
  • 2024年7月21日
  • 読了時間: 4分

エピソード77


さぁ、ついに他の町へ旅立つことにするか。

れいはセレンに、1つ助言をした。

魔法を使えなくなる局面が来るかもしれないから、何か武器を持ったほうがよいのでは、と。

セレンは同意し、武器屋で《いばらのムチ》を調達してきた。冒険の初歩の武器である。遠巻きに攻撃出来る利点があるが、殺傷能力はあまり強くない。まぁ僧侶や魔法使いの定番の武器である。

剣のほうが良いのでは?とれいは進言したが、「僧侶はその戒律から、刃物を持ってはいけないのだ」とセレンは説明した。そういえばそのようなことを、以前デイジーも言っていた気がする。


教会のシスターに短く別れを告げ、二人は旅立った。

北西に行くと城下町があるらしい。様々なものや情報や出来事がありそうだ。

悠々と歩く二人を、荷馬車が追い越していく。

「乗せてもらうか?」とれいは提案したが、「いや、自分の足で歩きたい」とセレンは答えた。多少は馬車を活用してもよいのでは、とれいは思ったが、セレンの意思を尊重した。

旅路は野宿を挟んでなおも続く。

やがて地形が黄土色の荒野を終える頃、「ロマリア城はもうすぐ」という立札が増えてきた。



荒野を終えるその手前のことだった。

魔物の群れが現れた!

2匹のテベロと2匹のウインドマージだ。

まずいぞ、どうする!普段は、敵の得意な攻撃手段を《フバーハ》か《マジックバリア》か《スクルト》で軽減することで戦いを優位に進めてきた。しかしこのときは、炎を吐くテベロと魔法を使うウインドマージが同時出現だ!

セレンはほんの数秒を永遠のごとく迷い、仕方なくまずは《マジックバリア》を唱えた。

れいはどのみち《ヒャダルコ》で全体のダメージを削って様子見する。相手の攻撃を堅実にかわしたり防いだりしながら、まずはテベロから仕留めていく。

しかし、ここで予想外の展開が起きた!

ウ「《マホトーン》!!」

なんとウインドマージが、れいとセレンの魔法を封じ込んできた!もうこの戦いでは魔法が使えない!

れいは焦りを抑えながらウインドマージBを斬りつける!

しかし!その攻撃の隙を突いて、ウインドマージAがれいの背中を殴りつけた!

ウインドマージAはそのままれいを踏みつける。

れ「うっ!」

れいは倒れ込み、手から《破邪の剣》が零れ落ちる。

ウインドマージBは風の魔法で、《破邪の剣》を吹き飛ばした!れいに拾わせたくないからだ。

セレンは《いばらのムチ》を振り回す!

ウインドマージBに少しだけダメージが入る。ウインドマージBはそれでやっつけた!

しかしれいはまだ起き上がれない。

どうする!?2人には攻撃手段がない!

セレンは《破邪の剣》を拾いに走った。

セ「れいさん、これを!」

しかしれいはまだウインドマージに踏みつけられている!

ウインドマージは強力な《バギマ》を撃とうと両手に魔力を溜めている。

れ「セレン!あなたがその剣で魔物を斬りつけるのよ!」

セ「しかし、私には戒律が!」

れ「戦うことを選んだなら、刃物であろうとなかろうと、どの武器を持ったって同じことなんじゃない!?」

セ「は・・・!」

れ「宗教の戒律がどうであるかは知らない!

 でもあなたがムチを握った時点で神はあなたを裁くのかもしれないし、剣を握っても裁かないのかもしれないわ!」

セ「どのみち私はもう、戒律に従順な神父ではないのだった!

 うぉーーーー!!」

セレンは意を決し、《破邪の剣》を思いきり振り切った!

ウインドマージAをやっつけた!

2人は魔物の群れをやっつけた!


れ「はぁ、はぁ、はぁ、よかった・・・」

セ「はぁ、はぁ、はぁ、

 私はもう、戒律を守る教会の神父ではないんだった。それが境地ではないと思ったから、ここに出てきた」

れ「そう。それでもあなたは、正義を生きる誠実な人」

セ「戒律とは、誠実に生きるための教科書の1つに過ぎないのか・・・」

れいはふと思いつき、言い添えた。

れ「その・・・余計なお節介かもしれませんが・・・

 あなたには、恋をする自由もあるのではないかと思います」


荒野を抜けると、平原が広がる。そして木々も増えてきた。

ダイナミックな真っ赤な荒野も旅情があるが、やはりれいにとっては緑の茂る土地が落ち着く。と改めて実感するのだった。

生息する魔物も変わり、少し弱くなったような気がする。

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