エピソード7 『天空の城』
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- 2024年11月1日
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更新日:8月13日
エピソード7
呼吸を整えて周りを見渡すと、小さな立札があった。
「吊り橋を渡りし者へ、ごほうびあり→」
妙な言葉と共に、行くべき方角が記されている。
生まれたばかりの小鹿のようによろよろと立ち上がると、れいは矢印の方向へと歩き出してみた。
ドラキーや大ねずみをやっつけながら、丘を登っていく。一体こんなところに何があるというのだろう?
胸の高鳴りは息切れかドキドキか。どちらかわからぬまま先に進んでいくと、また新しい魔物に出くわす。
大ねずみと一緒に、ドロドロと形の崩れたスライムが現れた。

れ「スライムの変種かしら」気になるが、怪力である大ねずみを先に倒しておきたいと思った。
大ねずみを堅実に仕留めると、そのドロドロとしたスライムが反撃してきた!
れ「うっ!」れいは少々のダメージを受ける。
れ「何のこれしき!」れいはへこたれずに、次の攻撃でドロドロスライムを仕留めた。
れ「ふぅ」一安心して歩き出そうとした瞬間・・・
れ「うっ!」先ほど攻撃を受けた右足がズキズキと痛い。歩くたびに、波のように一定間隔で痛みが襲ってくる。
なんと、れいは毒に冒されてしまったのだ!魔物の正体はバブルスライムであった。スライムよりも一回り強い、毒を持つスライムである。
そうか!「毒に冒される」という現象を聞いた覚えがある。でも今さら遅い。《毒消し草》は持っておらず、解毒の魔法が使えるわけもない。れいは右足をかばいながらよちよちと歩いた。その間にも魔物は襲い掛かってくる。痛みを堪えながら魔物をやっつける。
冒険は、少しずつでも着実に、難易度を上げていくのだった。
「こんなにすぐに難易度が変わるものなの?」れいは戸惑った。
頭はクラクラ、足はよたよた、意識が朦朧としてきたそのとき・・・
なんと眼前に、素晴らしい光景が飛び込んできた!
れ「うわぁぁぁぁぁ!」
谷の向こうの丘の上、バブルスライムの襲撃のその向こうでれいを待っていたのは、なんと、見事なツリーハウスだった!
ツリーハウスとは、木の上に建てられた素朴な家のことである。れいはもちろん、ツリーハウスなどというものを初めて見た。それはとても美しくて、とても無邪気で、とてもファンタジックな代物だった。
れ「誰か住んでいるのかしら」
れいはすべての疲れを忘れ、痛みを忘れ、興奮に満ちたその体でツリーハウスに近寄った。
入口に入るためには、ちょっと木登りをしなくてはならない。木登りの出来ない子はツリーハウスに入れない仕組みだった。
木登りをしようと踏ん張ると、右足はまた痛んだ。しかしもう痛がっている場合ではない。
れ「えい!」最後のチカラを振り絞り、入口まで登る。
トントン。どなたかいらっしゃいますか・・・?
戸はすぐに開く。鍵など存在しない。
誰からも返答はない。中に入ってみると、何か音がする。
スー、スー、スー・・・
なんだ!?新手の魔物か!?れいは身構える。
ツリーハウスの中には階段があり、上階があるようだった。音は上からする。
れいは静かに階段をよじ登る。
すると上階では、ハンモックに揺られて男が居眠りしていた。
れ「男の・・・ひと」
れいがささやくと、男は反応をした。
男「う・・・ん」
寝ぼけ眼でれいを見ると、意外なほどビックリして、そしてハンモックから落っこちてしまった!ドタン!
男「あてててて!」
れ「あぁ、ごめんなさい!」
男「おぉ?夢か?夢じゃないよな?」
れ「夢では、ないと思います。
私はれい。サラン村の者です。
あなたは?人を見たことがないのですか?」
男「いや、そんなことはないけど、まさか女がここに来るなんて思ってもみなかったからさ!」
れ「そっか。吊り橋の試練は・・・」
男「そうだよ。あぁ、僕はライドン」男はれいに握手を差し出した。
二十歳過ぎ、といったところか。
