エピソード85
一行はグレイス城に戻ると、早速「世界樹」とやらについての聞き込みを開始した。
「せかいじゅ?なんだそりゃ!聞いたこともねぇ」
「樹なのか?地名か?」
「そんな珍しいものがあるなら調査隊が派遣されているよ!」
どうもめぼしい情報には出会えない・・・
な「うーん。あのおじいさんみたいな、仙人みたいな人しか知らないのかな?」
ア「それか、猛者の冒険者だな。
この辺の兵士はこの辺のことしか知らないのかもしれないよ」
な「そもそも世界樹って??」
ゆ「世界樹って、聖書に出てくるユグドラシルのことだと思うのよね。
世界のどこかに、大きな樹があるんだわ」
キ「それを探すと、何があるっていうの?」
な「うーん。雨が降っても雨宿り?」
ゆ「樹の下で、誰かと待ち合わせ?」
ア「ていうか、キキも知らないのか?」
キ「わたしも知らないわ。
言ったでしょう?知らないことだってたくさんあるのよ。だから旅してるんだもの!
または、知ってはいたけど記憶を消されたか・・・」
何かちょっと神秘的な目的地が生まれた。ななやゆなはワクワクするのだった。アミンやキキも。
聞き込みをしたが世界樹に関する有力情報はない。
仕方ないので、とりあえず近くの町でも目指してみることにした。それなら情報は得られる。
南に下ると町があるという。何か出会いもあるだろう。
一行は馬車を走らせた。
日課の夜のダンス筋トレには、ゆなも加わるようになった。
グレイス城の一件を経て、日常からの健康管理が大切だなと、改めて思い出したのである。
照れからダンスを敬遠していたゆなだが、いざやってみると結構センスがあるのだった。
アミンのことも誘ったが、アミンは「ダンスは苦手だ」と嫌がった。
しかし彼も、ダンスのような運動をすることは大切だなと思った。
そのため彼女たちの音楽に合わせながら、鍛冶や家事などしながらコッソリ足踏みしたり、サイドステップ程度は踏んでみたりするのだった。
しかしそれを見たななに「おしっこ我慢してるならしてきたほうがいいよー」と笑われるのだった。
笑われると、ダンスはやりたくないものである。
しかしドワーフであるアミンは、人から罵られることに慣れていた。笑われても気にせず、マイペースにサイドステップを続けるのだった。
キキはこのダンスの日課を、「楽しい」「可愛い」「健康管理だ」と言ったが、実はそれぞれに脚力や全身の筋肉が鍛えられていた。
一行は旅をしながら、色んな事を楽しんでいた。
―ミントスの町―
やがて、新しい町に辿り着くのだった。
良くも悪くも、平凡な町に見えた。
グレイス城の猛々しさが嘘みたいに、戦いなど興味が無さそうな穏やかな町である。