エピソード91『世界樹 -妖精さんを仲間にするには?-』
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- 2024年5月2日
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エピソード91
出場者には立派な寝床があてがわれるかと期待したが、そうでもないのだった。
一行は改めて仮眠所のほうの列に並び、粗末ながらも屋根のある寝床を確保した。
夜。女たちはドキドキそわそわして落ち着かない。
キ「きゃはは!優勝しちゃったりしてぇ~♪」一人を除いては。
ア「まぁ、コンテストのために練習してきたわけじゃないんだから、負けて元々だよ。気楽に楽しんだらいいさ」
アミンは3人を落ち着かせるために、手製のハーブティーを淹れてやった。
アミンとトーサカは出場しないのだ。
ト「うん?このお茶、ミントスのサチのお茶によく似た味だね!」
ゆ「サチって、あの町はずれの喫茶店にトーサカも行ったの?」
ト「うん。町をぶらぶら歩いて見つけたよ」
ア「あんな開いてるか閉まってるかもわからない店に!?」
ト「そうさ。旅人なんて、そういう店が好きだよ♪」
な「へんなのぉ~♪」
キ「彼女、足が不自由で動けなかったんじゃない?」
ト「そうだよ。店に入ったら『お茶は出せませんよ』って言われちゃったけどね。
常連さんらしきお客さんが、自分でキッチンに入ってお茶を淹れてたから、『僕も自分でやりますよ』って言ったのさ」
な「へんなのぉ~♪」
キ「類は友を呼ぶ、ってヤツかしらぁ~」
類は、友を呼ぶのである。同じミントスという町に訪れた冒険者でも、まったく異なる店に入りまったく異なる人と交わり、まったく異なる印象を得て町を後にする者たちも大勢いる。
翌日。ダンスコンテストの開催は午後2時だったが、出演者は12時に控え室に集められた。
3人もドキドキしながら控え室に向かう。バチバチ!ギスギス!ライバル同士のそんな不穏な空気にますます胃が痛くなる・・・かと思いきや、
女「キャー、その衣装かわいい~♡」
女「えぇ!青いお目めなんて初めて見たぁ!どこから来たんですかぁ♡」
女「私たちもそっちのグループに混ぜてぇ♡」
なんと、出演者たちはとっても仲良く意気投合していた!!
8割ほどが女性、2割ほどが男性であるようだった。男性もそうだが、特に女性たちは、ライバルのチームに対して敵対心などまるで持っていない様子だった。控え室でもう、互いにダンスを披露し合ってワイワイきゃいきゃい、拍手喝采で盛り上がっている。
ダンスを披露することが楽しく、ダンスを見ることが楽しいのだった。
3人はその様子を見て、緊張が一気に緩んだ。
そして、それだけではなかった。
まりんという名の異国の踊り子が、3人に楽しそうに話しかけてきた。
「ちょっと踊りを見せて」と言うので3人が『恋するおみくじクッキー』のさわりを披露すると、彼女は言った。
ま「うーん、その可愛い感じのユニゾンのダンスなら、3人で衣装の雰囲気を統一したほうが絶対にイイよぉ♪」
つまり彼女は、「敵に塩を送る」のだった!
そうかも!と思った3人は、慌てて町に出て、ななのドレスに似たものをもう2着買った!
それを着て控え室に戻ると、さらに他の国のグループたちが「かわいい~♡」と褒めてくれるのだった。
もはやコンテストなんだか何なのかよくわからないが、とにかく3人は、ろくに緊張せずにステージを迎えることが出来た。