エピソード97
―ベルガラック―
ベルガラックは大きな街だった。城壁街ではない。
大勢の人が賑わい、馬車の往来も多い。あちこちで商人たちが交渉しているのがわかるし、道端に品物を広げて商売するものも大勢いる。たしかに皆いかがわしい顔をしているが、珍しいものを眺めながら歩くのは楽しかった。
2、3の露店商に「世界樹を知っているか?」と尋ねてみたが、特に何も知らないのだった。
ゆ「誰に聞いたら知ってるのかなぁ?」
キ「そうねぇ。世界樹に行ったことのある人が一番理想的だけど・・・」
な「それってどんな商売の人?」
キ「トーサカは世界樹について、何て言ってたっけ?」
ア「岩山の中の砂漠の中、とか言ってなかったか?行けそうにもない場所だったなぁ」
キ「それだわ!
つまり、えーっと・・・」
キキはより前のめりになって街を見渡した。
キ「ねぇ、飛行機に関する品物を売る店とか、なぁい?」
4人は協力してキョロキョロする。
キ「あったわ♪」
プロペラばかりを扱う露天商がいる。
キキは率先して駆けていった。
キ「ねぇおじさま、このプロペラいくら?」
商「しっしっし!子供のオモチャじゃないよ」
キ「私のパパ、大商人なのよ」
商「なに?本当か!」
キ「世界樹っていうところに行って大きな商売したいのだけど・・・」
商「あぁ、なるほど!あれは儲かるな!飛行機が買えるなら、手を出すべきビジネスだ」
ア「世界樹が、ビジネス!?」もっと神聖な場所だと思っていたのだが・・・
キ「立派なプロペラ欲しいなぁ。
ねぇ、世界樹ってどこにあるの?」
商「ずっと東北のほうだよ。あっちの商業都市のサマンオサの近くにある」
ア「飛行機がなくちゃ入れないのかな?」
商「そうだよ。岩山に囲まれてるからね!だからこそ、飛行機を持てるモンたちにとっては大きなビジネスになる!独占できるからなぁ!
ていうか、飛行機があったって本当は行けないよ。岩山の中は砂漠だからね。飛行機が離着陸できない」
キ「それじゃどうしてるの?」
商「不時着しても壊れないように、立派な部品を買いたまえ!
そっちの店も仲介してやるぞ?」
キ「あ、後でお願い♪
それで、えーっと、世界樹で何を買ったら、一番ビジネスになるかしら?」
商「そりゃ《せかいじゅのしずく》だろうな!
世界樹は、すんごい癒しのチカラを持った植物だろ。そのエキスが一番詰まった最高級品が《せかいじゅのしずく》さ」
キ「あぁそう、そうよね。パパと同じこと考えてるわ」
商「そりゃそうだろうよ。
さて、プロペラが欲しいんだろ?どれにする?」
キ「あぁ、じゃぁパパを探してまた来るわね!」
キキは3人を連れてそそくさとプロペラ商から離れた。
な「キキちゃん商売するつもりなの?」
キ「あはは違うわよ!情報を得るために話を合わせただけ」
な「そっかぁ何の話してるのかと思った!」
ア「飛行機がないと入れないって言ってたよ?」
ゆ「飛行機って幾らよ?買うのは絶対ムリな値段よね!」
な「あぁ、飛行機を買うための商売するのね?」
キ「だから商売なんかしないってば(汗)
『普通は』、飛行機がいるのよ。でもそれ以外の方法もあるはずだわ。
3人「本当に!?」
キ「卑弥呼ちゃん何て言ってた?
『月の満ち欠けがそなたらを導くだろう』だって。
何か方法があるのよ!」
ゆ「みんなと違う方向を向いて、普通じゃない方法を考える必要があるのね・・・!」
ゆなは「旅って面白いな」と改めて思った。
どんな学問よりも面白い。参考書の回答を見てすぐに答えを得ることも叶わない。
そもそも正解が何かもわからない探求である。先人は色々知っていて教えてくれるが、それが正しいとも限らない。それこそ飛行機を造り上げるように、知識やヒントを組み合わせ、今の自分たちに必要な新しい何かを組み上げる。うーむ、とても高度な学問だ!
または推理小説のようでもある。しかしやはり推理小説よりもハラハラドキドキする。推理小説は、読み始めたらこの事件には結末とトリックがあることはもう確定している。しかし旅はどうだ?画期的なトリックなど、幾ら考えても幾らさすらっても得ることは出来ず、暗礁に乗り上げてしまうかもしれない・・・。ハラハラする!しかもこの壮大な物語は、一晩二晩夜更かしして読み耽ったところで、まるで終わりはしないのだ・・・!ハラハラはずっと続く!
ハヤトやななは「旅はロープレみたいで楽しい」と言っていたが、なんとなくそのニュアンスに共感した。ゆなにとっては「学問みたい」「推理小説みたい」と感じるが、両者の言っていることは同じなのだろう。