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エピソード9 『天空の城』

  • 執筆者の写真: ・
  • 2024年7月21日
  • 読了時間: 2分

エピソード9


ラ「そうだとも!何で今まで何も教わらなかったのか・・・

 まぁいい。話しててもキリがないからな。

 とにかく、旅立つ君に1つだけ、魔法を伝授するよ。

 《ホイミ》という魔法だ。知ってるだろ?傷や体力を回復する魔法さ」

れ「私に《ホイミ》が使えるのですか!?」

ラ「やがてはもっと上位の回復魔法も使えるようになるよ!

 まずは《ホイミ》だ」

ライドンはそう言うと、れいの頭に手のひらを置いて、何やらぶつぶつと唱えだした。

ラ「むーん。はっ!」

れいの体が青白い光で包まれた!

ラ「完了だ!」

れ「わぁ・・・!」れいの両手にエネルギーが満ちている。不思議な感覚に、れいは酔いしれた。

ラ「でも《薬草》は持っておいたほうがいいよ。魔法が使えないときもあるからね」

れ「あ、はい」

ラ「薬草くらいは持ってるんだろうな?」

れ「いえ」

ラ「なんなんだ君は!無謀なのか?無知なのか?」

れ「どちらもでもない、と思っていたのですが・・・」

ラ「はっはっは!

 でもいいんだそれで。

 慎重派な人間が時々ムチャをやると、面白いことが起きる。

 持ってけよ。《薬草》も。《毒消し草》もだな」

れ「あ、ありがとう」

ラ「ここの《薬草》はよく効くぜ!

 このツリーハウスは、世界樹の名残なんだ」

れ「世界樹?」

ラ「知らないか。だよな。まぁいいよ。

 世界は広いぜ!歴史は長いぜ!君の知らないことが山とある」

れ「えぇ。本だけでは足りないのです」


吊り橋の試練は、本来ならば、このツリーハウスのベッドもない木の床で、一晩眠って過ごしていくことまでが課題だった。しかし人里離れたこの場所で男女が一晩を共にするわけにもいかない。

ライドンはれいを、昼間のうちに帰すのだった。



れいは来た道を戻った。

あぁ、あの壮絶な行程をもう一度繰り返すのか!と思うと軽く絶望を感じたが、どうも大ねずみに向かって剣を振るう右腕は、行きよりも軽やかだった。吊り橋を掴む手は行きよりも軽やかだった。体を酷使した後に回復し、少し強くなったのだ。

「体を使って、回復を挟むたびに少しずつ強くなる」とライドンは言っていた。なるほど。

《ホイミ》を使うことは、寝ずにして一晩の休息を挟むことに似ているようだ。

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