第19章 エルフのかくれざと
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- 2023年3月1日
- 読了時間: 5分
更新日:2024年1月7日
第19章 エルフのかくれざと
モンスターを倒しながら冒険を進める。霧の立ち込める妖艶な森は時間帯の感覚もよくわからないが、夕暮れ時になって二人は何かに手が届いた。
マ「見てリオ!なんかちょっと森が開けてるよ!」
森の中に小さな村がある、という雰囲気であった。
娘「きゃぁ、人間よ!」マナの声に一人のエルフが気づき、悲鳴をあげた。
母「こっちへきなさい!人間と話してはだめ」
もともと半透明な姿をしていたエルフの母娘は、すっと姿が消えてしまった。
マ「ホントにエルフだぁ!」
リ「姿を消したりできるのね。そりゃ色んな噂が飛び交うわ」
マ「人間を、嫌ってるみたい?」
リ「エルフって、気難しい生き物らしいわ。大抵の童話の中でもね」
二人は静かに村の徘徊を続ける。二人の訪れに気づくと、ハッと青ざめて姿を消すエルフが多い。
村の奥まったところに、質素な玉座がある。誰もいないように見えたが、二人が恐る恐る近づくと、逆に大柄の女性の姿がくっきりと浮かび上がってきた。恐れることなくこちらを見ている。
リ「あ、あの…」リオは話しかけてみる。
長「人間がこの村に何の用ですか?今すぐ立ち去りなさい」里の長であるようだった。
リ「あ、あの、エルフに敵意は持っていません」
長「それはわかっています。しかしあなたたちが歩くだけで、気分を害する者もいるのです」
マ「ごめんなさい!」
リ「話だけでも、聞かせてもらえませんか?」
長「………。
いいでしょう。ただし5分だけ」
リ「率直に言います。人間が憎くて、王様のかんむりを盗んだのですか?」
長「何のことですか?」
マ「ロマリアの王様のかんむりです!」
リ「ロマリアの城の、《金のかんむり》が盗まれたそうです。
あなたのせいでないとしても、他のエルフのしわざではありませんか?」
長「知りません。同族が何かをやらかせば、それは私につつぬけです。私たちはテレパシーを用いて暮らしていますから」
マ「エルフは、人間に悪さをするんですか?」
リ「そういう噂が、人間界にはあるのです」
長「人間に悪さをすることが、ないとは言い切れません。しかしそれは、正当防衛というもの。
エルフの側から人間に手を出すことはありません。メリットがありませんから。
人間がエルフや森に危害を加えようとするとき、それを食い止めようとすることはあるでしょう。エルフにかぎらず、妖精はそういうことがあります」
リ「アタシは、どちらの言うことを信じればいいんでしょう?」
長「知りません」
リ「エルフのしわざでないとすれば、人間や盗賊のしわざですか?」
長「悪意ある人間のしわざかもしれない。
あるいは、何も盗まれていないかもしれない」
マ・リ「え!?」
長「可能性を言ったまでです。
………。
いつもイライラしている王の言葉と私の言葉と、どちらが信用に値するものか、私は知りません。私はその件について、何も知らないのです」
リ「エルフは、人間が憎いのですよね?」
長「人間が憎いのではなく、私たちの生活をおびやかす人間が怖いのです。私たちは姿を隠すだけ。
こちらから人間の世界に攻め入ることはありません。戦いを仕掛けても、何の利もありませんから」
リ「森に侵入する冒険者を惑わせているのではないのですか?」
長「エルフが何もしなくても、森の魔物たちに勝手に惑わされています」
リ「…もしかして…」
マ「…?」
長「さぁ、もう行きなさい。これは私の感情論で言っているのではないのです」
リ「ご、ごめんなさい!もう行きます!」
二人は、行きよりも静かに歩いて里の出口へ向かった。
途中、小さな木のテーブルに座るドワーフの姿を見た。行きは見なかったような気がするが…。
二人は話しかけず、しかし物珍しそうにそのドワーフを目で追いながら歩き続けた。
ド「お前たちには物を売っていいと、女王様が言った」ドワーフは、こちらを見ずに淡々と言った。
マ・リ「え!?」
テーブルにはキレイな色で光る小さな小瓶が並んでいる。
ド「《魔法の聖水》だ。あげるわけじゃない、売ることは出来る」
リ「MPが回復するレアアイテムだわ!手に入るならありがたい!」
マ「おいくらですか♪」マナは精いっぱい優しい笑顔で尋ねた。
ド「10ゴールドだ」
マ・リ「やすっ!!」
ド「ただし、1つしか売らない。二人いたって1つだ」
リ「ありがとう。いただくわ♪」
リオは10ゴールドを払い、大事そうに小瓶を抱えた。
リ「マナ、ロマリアのお城へ帰ろう」
マ「うん」
ロマリアの城へ戻ると、城下の広場には大きな掲示板が出ていた。
『定例イベント開催!
チーム戦バトルロワイヤル!!!
詳細は開催までヒミツ!開始と同時に明かされるぞ!
日程:今週の土曜日20時
皆皆、腕を磨いて待つべし!』
イベントの告知を見て、冒険者たちはざわついていた。二人もおふれを見ては、色々と頭を巡らせていた。
リ「あ、今はもっと大事なことがあるんだっけ!
王様に会いにいかないと」
二人は城の中に入り、玉座の間への階段を上ろうとしたが、番兵に止められた。
兵「王様は今、バトルロワイヤルの準備でお忙しくされている!
バトルロワイヤルに参加すれば王様には会える。出直してくるがよい」
リ「王様が、バトルロワイヤルの定例イベントに関与している…???」奇妙な状況だな、とリオは思った。
マ「バトルロワイヤルかぁ。ヤだなぁそういうの」
リ「同感!プレイヤーキルとかやりたくないのよね」
マ「戦うのはヤだし、みんなとは仲良くしたいよぉ」
り「それにしても、2回目のイベントでもうバトルロワイヤルってのは、ちょっと意外だったわ」
プレイヤーたちはそれぞれ、イベントに備えて戦力強化に勤しんだ。戦士は戦士らしく、僧侶は僧侶らしく、魔法使いは魔法使いらしく活躍できるよう、個性を伸ばし、道具の補給を入念に行う。
マナたちも、わずかな期間を戦力強化に費やした。
『僧侶だけで魔王を倒すには?』