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episode30 『王と悟り』

  • 4 分前
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episode30

カルベローナの里
カルベローナの里

目立たぬ道を歩いたほうがいい、とターニアにも老婆にも言われたが、この不思議な里をもう少し眺めていたい気持ちは否めない。

どうも、朝でもやはりカラフルな蛍の光が飛び交っている。深い森、曲線的なおとぎの家にカラフルな蛍の光。これだけでもう気分がいい。10年飽きない自信がある。

なるべく音を立てないように歩くと、里の中心らしき場所に出る。井戸がある。きっと毎日ここで水を汲み汲み、世間話をするのだろう。良い社交場だな、と羨ましく思う。

そして井戸の前には立札が立っていた。


 悪魔とは、人の心の煩悩だ

 従うものがいなければ、勝手に滅びていく

 その悪が人類を滅ぼそうとしたら?八十億人で束になれば、勝てる


家訓ならぬ里訓のようなものか。

カロベローナの魔女たちは代々ずっと、幼い頃からずっと、この言葉を焼き付けて生きてきたのだろう。



不思議な町に少々後ろ髪を引かれながら、でも騒ぎを起こさないうちにソロは里を離れた。

道は緩やかに下っている。森の匂いが薄くなってきた。《たいまつ》など渡されて力んだが、もう少し歩けば山を抜けるのだろう。

山の中の里。

人の街からは離れていて、人害からは安全だ。

しかしすぐそばに魔物が徘徊している。ひとくいそうを倒せないと、魔女の子たちはここから遠くに行けないのか。魔法を使うということは、多少なりとも戦うことを宿命づけられている。

《ベギラマ》を使えて、でも戦わない、ということは許されない。

魔女という生き様は、少々強気でないと務まらないのだろうな。


山を下り抜ける直前から、大きな建物が見えてきた。無残な姿をしているが。

魔法使いが大勢いるなら、こんな残骸の片付けや修復も造作ないのでは?という気もするが、何か意味があってそのままなのかもしれない。

ソロは、眼前の状況から様々なことを分析・推測することを好むが、決して結論付けはしない。自分の知らない世界の人々が何を考えているかなんて、わかったものではないのだから。



学校らしきものは、焼け落ちていた。

もう煙もくすぶっていたりはしないが、灰のような匂いはする。たとえば「燃えた匂い」というものから、人は何かを思い出したり考えたり、想像したりする。匂いに形や質量はないが、それは人の思考や言動に影響を及ぼす。

ソロの場合はノーラの身になって考えてしまうので、この匂いはとてもナイーヴな感情を引き起こす。ヘラヘラ笑っていたい気分にはならないし、壁にドラキーの落書きなどしたい気持ちには到底ならない。

ソ「墓があるって言ってたな」

ソロはそれを探してぐるっと周った。

集団墓地、それらしきものを見つける。

ソロは手を合わせて祈った。

ソ「すみません。何を祈ればいいのか、弔いの感情が正しいのか、どうすればいいのかわかりません」と素直な感情を心の中で呟いた。墓の前で何をすればいいかわからないなんて、ソロは頭が良いのだ。


1分もずっと黙祷をしていた。他にすることもないのだから黙祷も長くなる。


すると、思いがけないことが起きた。



「心優しき冒険者よ。焼け跡しかないカルベローナに寄るなんて、あなたはなんて愚かなのでしょう」


ソ「誰!?」ソロは振り返り、周囲を見渡した。声がする!たぶん頭の中で。

しかし声は名乗りはしない。


「あなたに力を授けます」


ソ「え!?」


するとソロの体は青白い光に包まれ、体が熱くなった!

シュウゥゥゥゥゥゥ・・・!


ソ「なんだこれは・・・!?」

魔法の素質が備わった、というような気がした。


声は続ける。

「前を向きなさい。前を」


ポジティブに生きなさい、建設的に生きなさい、という意味かと思ったが、自分は別に肉親の死で落ち込んでいたりする立場ではないと思い出す。そしてどうやらこの声の主は、ソロの心を読めている。落ち込んでいないことはわかっているはずだ。

誰にでも同じ挨拶をするのかもしれないが・・・。


なのでソロは、文字通り前を見た。

すると、集団墓地の向こうの壁に、小さな勝手口が見えた。学校には正門だけでなく、裏門だの勝手口だの、幾つか通用門があるものだ。

ソロはその勝手口に向かって歩いていった。誰もその小さな門に向かえとは言っていない。それはソロの好奇心や分析力のようなものが総合的に、導き出したのだ。

人生とは、こうした知性とも言えぬ奇妙な判断力によって、結果が大きく変わっていく。焼けた魔法学校に来た者が皆同じような行動をするわけではない。

9才の可愛い少女に出会った者が、皆同じような行動をするわけではない。


勝手口には表札のようなものが掛かっている。灰でくすんでよく見えない。「カルベローナ学校です」とでも書かれているのかなと思ったが、敷地の内側から外側に向けて案内する者はいない。ソロは表札の灰を手で拭ってみた。

すると、

「この先は試練の洞窟

 挑む者は先生の許可を得ること!」

と書いてある。

ソ「試練の洞窟!?」

魔法学生たちにとっての、試練の場ということだろうか!?

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