episode38 『王と悟り』
episode38
翌朝はなぜか、4時頃にはもう目が覚めた。
こんな時間ではサービスの朝食はまだ貰えないが、身支度をしてもう出ることにした。
例の川の様子が見たい。
大聖堂のある広場の前を通る。
おや?街はまだ眠り、とても閑散としているのに、広場の隅にポツンと変なものがある。
馬車か。荷台に屋根のついた幌馬車だ。やたら装飾が施されていて、まるで教会の中のように芸術的だ。

ソロは興味を惹かれて、馬車に近寄ってみる。あわよくばテムール川の方面に向かったりしないだろうか。たまには同乗させてもらうのも良いはずだ。
ソ「女性だ」
近寄ってみると、髪の長い、スカートの裾の長い18才くらいの女性が、馬車の走り支度などしている。
●マーニャ

年齢:17歳 誕生日:3月13日 身長:162cm
ソ「これ、馬車ですよね」
女「うん?あぁ、そうだよ」
ソ「幌馬車というやつでしょうか。こんなのあったら長旅もはかどりますね!」
女「幌馬車というか、家馬車だな」長い髪に反して、少々ぶっきらぼうな話し方をするらしい。
ソ「家馬車!」
女「はは。あたいにあんまり近寄らないほうがいいよ」
ソ「え?」
女「そのために朝っぱらから動いてんだから。
あたいはジプシー。世間の嫌われもんさ」
ソ「ジプシーさん。僕はソロといいます」
女「はっはっは!名前じゃないよ。ジプシーって知らないのか?
流浪の民って意味さ」
ソ「カッコいいじゃないですか!僕はそれに憧れて国を出てきたんです!」
女「カッコいいなんて思ってる人はこの国にはいないね。
なんていうか、『流れ者』みたいな意味だよ。しかも盗みや詐欺や色仕掛けでカネを得たりするジプシーが多いから、嫌われるんだよ」
ソ「盗賊みたいなもんですか?僕よく盗賊に間違われますよ。ははは」
女「アンタいいヤツだな!感心するよ。
盗賊みたいなもんかな。別に盗みを働くことを生きがいにしてるわけじゃないけどね。生きるのに必要なものを得るために、手段を選ばないっていうか、定住せずに生きてんだよ」
ソ「あんまり悪そうな人に見えないですよ?」
女「・・・・・・ふうん。あたいはマーニャ。
ひょっとして馬車を拾いたいんじゃないのかい?」
ソ「えぇ?いや、そうなんです!
派手な馬車がカッコいいなと思って目に付いたんですけど、馬車で遠出したいってのもあるんです」
マ「どこにいくんだ?盗賊さんは」
ソ「ははは、盗賊じゃないですってば。
とりあえずテムール川まで行きたいんです」
マ「あんたも工事を手伝うのか?」
ソ「いえ、手伝うかもしれないけど、とりあえずは見たいだけ。
そんでそのまま川を越えて向こう側に行こうと思ってますよ。
マーディラスに通じてるらしいけど、他の街もありますよね?マーディラスはもう行ったから他のところに行きたくて」
マ「あぁ、そこらへんまでは乗せてってやれそうだよ」
ソ「ありがとう!」
マ「入んな」マーニャは馬車の後ろの扉を開けた。ソ「うわぁ!ホントに家じゃないですか!」
「家馬車」と言っていたがそのとおりで、ベッドもあればレターデスクまである。生活品が所狭しと並んでいるし、それらはいちいち教会の彫刻のように美しい。

マ「へっへへー、立派なもんだろ。まぁママのおさがりだけどね」
「へぇー」ソロは馬車に乗り込んだ。バンバン、なでなで、あっちこっちを眺めたりいじったりしている。
ソ「あれ?でもこれじゃおしゃべりできないですね」ソロは荷台、マーニャは御者台に座らなければならない。
マ「中から小窓が開くよ。昔はあたいがそっから覗いて、ママとおしゃべりしてたもんさ」
なんという傑作なヒッチハイクだ!
マ「さぁもう行くよ。みんなが起きてきちまう」
ソ「あぁはい。教会の前では神父さんが掃除を始めてますね」
マ「どーう!」マーニャは馬車を走らせはじめた。
マ「まぁ教会の奴らはジプシーに寛大だけどね。だからここに馬車停めてたんだけどさ」
ソ「教会がジプシーに寛大?」
マ「ふっふっふ。聖職者はジプシーにこっそりお熱なのさ」
ソ「あぁ・・・!」裏の顔があるのか。幾重にも。
マ「人にセックスを禁じるなんて、無理があるんだよ。禁止なんて言わなきゃいいのに」
不意にロンガデセオのことまで思い出してしまった。
教会にも色々あり、神父にも色々いるんだろうが、サマンオサの教会に信頼はおけない。そして民に色々と影響が大きいことを考えると危険因子だなとすら思えた。「天罰が必要だなぁ」とぼそっと呟いたそのとき・・・
ピシャ―――――!
ドカ―――――ン!!!
「うわぁーーー!!!」
なんと、サマンオサ大聖堂に一筋の稲光が落ちた。そして誰かの悲鳴がする。
ソ「物騒だなぁ・・・!」
マ「おーおーおー、怖いなぁ。行き先の空は青いよ。よかった」



