episode64 『王と悟り』
第5章 命を賭して
episode64
木こりのような見知らぬ男のお陰で命拾いし、ソロは無事、ガンディーノの城下町に到着した。

跳ね橋の手前、20メートルはあろうかという立派な城壁を見上げる。
門の上にはやはり立派な紋章が描かれている。ライオンのようなワシのような生き物だ。
ソ「うわぁー。強い軍事国家かな」

門「聖獣グリフォンに守られしガンディーノへようこそ!」門番は、感嘆するソロを見ながら得意気に挨拶を投げかけた。こんな仰々しい城下町は初めてだな。
ソ「グリフォン?」
門「グリフォンを知らないのか?この聖獣のことだよ。ライオンの体とワシの翼を持つ、天下無敵の生き物だ」
ソ「そんな生き物本当にいるのですか?」
門「だから聖獣だって言ってんだろう?
昔はいたらしい。幻の聖獣さ!そんな神に守られているのだから、ガンディーノは強いのだよ!」
ソ「へぇ・・・」それは大したものだ。
ソ「余所者が入ってもよろしいのでしょうか?」
門「もちろんだ。下手な真似したらすぐに首が飛ぶがな!」
ソロは武器を仕舞って大人しくかしこまり、城門をくぐった。
「グリフォンに守られし我が国へようこそ」の言葉は、愛想の良い挨拶というよりは余所者への威嚇の意味合いを持つのだろう。言葉の巧い者が居るものだ。
兵「南門付近で不審火の報告!衛兵は直ちに向かうように!」
大きな掛け声がしたかと思えば、重厚な鎧を着た兵士たちがガチャガチャと音を立てながら南へ駆けていく。
ガンディーノという国の特徴が一瞬で把握できるような光景だった。
衆「はぁあ~グレイグが居ないなら魔王どころか隣国にすら勝てねぇぜきっと」
衆「ウチの兵士は見掛け倒しだからな~」
町民がそれを見て何か愚痴をこぼしている。
兵「おいそこの男!今グレイグと言わなかったか?
その名を口にするんではない!ひっ捕えるぞ!」
衆「へぃへぃ」
城壁は高く頑丈で、ところどころ外向きに砲台まで備えている。城門のそばには見張り台がある。城下町は兵士の数が多く、ごつい体格の男が多い。
リンガイアとはまた違った趣で、物騒である。
しかしやはり、良い武器か防具か、戦闘能力の底上げが見込めそうな期待は抱ける。
長らく素朴な造りの家屋の土地が続いたが、久しぶりに都市国家というのか、マーディラスやサマンオサのような鋭角的で色彩ある街並みに戻ってきた。すると鎧や武器の形状なども両者は近い。
長旅と手強い戦闘で疲弊しているソロは、まずは宿を確保したい。
安い宿を探したいが、ガンディーノも物価が高いと見受けられる。
ひとまず相部屋を持つ宿の情報を聞きつけたので、行ってみる。
宿「1泊30ゴールド(約3,000円)だよ。宿泊税が3ゴールドで、計33ゴールドだ」
ソ「た、高いうえに複雑ですね。宿泊税?」
宿「とにかく33ゴールドだ。嫌なら他所行きな。他はもっと高いよ」
ソ「あ、はい。泊まります」とりあえず今日はここで妥協しよう。
ソロは相部屋のベッドに荷物を下ろすと、しばし仮眠をとった。さっき骸骨に苦戦したが、街の手前だから疲れていたというより、長旅の疲れが取り切れていないような気もする。やはり少しペースを落として進むべきか。
起きるともう薄暗かった。夕飯を食べに出よう。
その前に入口で宿主と話す。
ソ「この辺では上級の兵士は、幾らくらいの武器を使ってるんでしょうかね?」
宿「なに?そうだなぁ。
俺もその辺のことはそう詳しくないが・・・上級っていったら《バスタードソード》だな」
ソ「それ強いんですか?」
宿「強いんだろうよ。片手でも両手でも使える便利な剣って聞くぜ。兵士に向いてるんだろ。
10,000ゴールドはするはずだぜ」
ソ「やっぱりそれくらいはするんですね」
宿「あんた武器が欲しいのか?」
ソ「えぇ。なんか良い武器あるかななんて、思っているところです」
宿「強いのかあんた?盗賊みたいに見えるがよ。リンガイアの盗賊は時々すごい強いよな!」
ソ「え?そんなに強くはないと思いますよ。どっちかっていうと頭使うほうが得意かな」
宿「策略家かよ!はっはっは、それはそれで面白いぜ。
あんたガンディーノを救うか?」
ソ「え、何を言ってるんですか!?」
宿「良い武器貰えるかもしれねぇよ。なにせ将軍だからな。
将軍にエントリーしてみろよ?はっはっは」
ソ「将軍に?エントリー?」
宿「そこらへんの兵士に話聞いてみろよ。俺も詳しくは知らねぇ。
でも余所者でも受け付けてると思うぜ。強けりゃなんでもいいんだ、戦ってのは」
ソ「兵士に、話を聞いたらいいんですね?」
将軍を募集している、ということのようだが。
ソロは近場の食堂を探した。兵士の姿が多めな店を選んだ。
強そうな兵士がいる。強そうだからなのか、一人ぼっちだ。他の兵士も町民も寄り付かない、というふうに見える。ソロは隣のテーブルに座り、注文を済ませる。
ソ「あのう、この国では将軍を募集してるんですか?」
男「なに・・・?」男はソロのことをじろりと見て、じっくりと観察した。
●ホリディ

年齢:28歳 誕生日:7月29日 身長: 186cm
男「はっはっは。ウチの国をよく知っていそうで、まったく知らなそうな質問をするんだな」
ソ「えぇ、よく知りません。武器が貰えるかもって聞いたもんで」
男「浅はかな奴だ。
いやいいんだよ。男は腕っぷしさ。俺より強いというなら、将軍の座をくれてやるぜ」
ソ「えー!あなたが将軍さんなのですか!これは失礼しました」
ホ「いいや、まだ将軍代理だ。兵士長の身だよ。
お見知りおきを。ガンディーノ兵士長のホリディだ。
将軍は自分勝手なへっぴり腰で、とんずらこいたさ」
ソ「将軍が不在で、次の将軍を決めたい?」
ホ「そういうことだ。
俺がやればいいのに、不満の声が上がるからな。それなら実力で抑えつけてやる」
ソ「オーディションか何かをするということですね?」
ホ「そうだ。明後日だよ。城の裏の闘技場だ」
ソ「へぇ。武器が貰えるのですか?」
ホ「そんなお触れは出てないはずだがな。可能性はある。
将軍さんは武器を置いていったからな。それを譲り受けることはあり得るし、昇進に賞与は付き物だ」
ソ「へぇ」
ホ「もういいだろう?俺は酒を飲みたいんだよ。じゃぁな」
男は飯代をテーブルに置き、酒場かどこかに消えていった。
ソロは今聞いた話を整理する。
将軍が居たが、謀反か何かで姿をくらました。将軍の座が空いた。
兵士長のホリディが繰り上げすることには、物言いが付いている。
だからホリディは、自分に勝った奴が将軍をやればいいと進言した。勝つ自信がありそうだ。
さて、ホリディは自信満々で強そうだが、なぜ彼が将軍ではだめなのだろうか?
それは、この国の民がなんだか愚痴っぽくて不穏なことにも関連していそうだ。



