episode69 『王と悟り』
episode69
誰の反応も確認しないまま、グレイグはその場を立ち去った。物事の解決は期待していない。やれるだけのことはやったので、後は皆に託すしかない、そう考えた。

ソロはグレイグを追いかけた。そして横に並んで歩く。グレイグの顔を見る。
グレイグもソロの顔を見る。
グ「そなたは・・・」
ソ「はい?」
グ「そなたは・・・勇者なのか?」
ソ「え!?」
グ「世界が待ちわびた勇者ではないのか?」
ソ「いえ、違いますよ!作戦司令官とかいうのも嘘なんです」
グ「そうか。
・・・・・・。
ではそなた・・・」
ソ「はい?」
グ「私と旅をしないか?」
ソ「え!?」
グ「いいや、私がそなたの後に着いていく。駄目か?」
ソ「えー!っと・・・。あのう」
グ「私は国を捨て、やることがなくなってしまった。
そなたの旅の目的が何であってもいい。どこであってもいい。
着いていっては駄目か?」
ソ「えぇ、まぁ、いいですけど・・・」
ソロは苦笑いしながら頭を掻いた。この男はちょっと面白そうである。
なんと、グレイグが仲間に加わった!

年齢:30歳 誕生日:5月5日 身長:210cm
ソ「これからどこ行きましょう?
さっきの芝居のあとじゃ、街の中でぬくぬくするのも気まずいなぁ。でも休息も欲しい気がします」
グ「私の隠れ小屋が森にある。
少々の休息や旅の準備は出来るだろう」
ソ「良かった!ありがとうございます」
グ「敬語は要らん。私はそなたに着いていく」
ソ「いやそういうわけにも・・・。
なんていうか、威厳が違いすぎますよ」
グ「そなた、話し方が王の前とは随分違うが?」
ソ「あははは。ぜーんぶ演技だったんです。
でも冗談ではないですよ。本当にこの国を変えようと思ってました。この国のためってほど思い入れはないですが、他国にも影響すると思ったので」
グ「グレイグがあの場に来ることを、読んでいたのか?」
ソ「え?」
グ「もし私があの場に居合わせなかったら、そなたはそのまま将軍を担っていたのか?」
ソ「ある意味、そのつもりでした」
グ「まことか!?この国に骨をうずめるつもりだったのか!?」
ソ「あははは。違うんです。
国の敵は隣国だけじゃないでしょう?魔王みたいのがいると聞きます。
もし将軍になったら、徴兵制だけは取りやめさせるつもりでした。
そして僕は、魔王討伐の第一陣という口実で旅を続けるつもりでした」
グ「そこまで考えていたのか!」
ソ「あまり深い考えじゃありませんよ!
ホリディさんが将軍になるのを食い止めようと思いました。それと徴兵制を。
あとのことは、どうにかなるというか、どうにかしてくれというか・・・そのまま魔王討伐に出陣すると言って、姿をくらますようなつもりでしたよ。あはは」
グ「ふむ」
ソ「国民に考える時間を与えたら、何か変化を起こすかもしれないです。あまり期待できないでしょうけど」
グ「変化とは?」
ソ「自国の王が愚かな場合、他国の属国になるのも手かもしれませんよ。
徴兵制なんて言って強制したって、一般人に戦争は出来ないでしょう。すぐ死ぬだけです。
でも、国民には投票が出来ます。政治や弾劾が。罷免っていうのかな?
『王を下ろす』とか『他国の王を支持する』とか、そういう選択を国民が見せたら?国は何か変わるかもしれないです。
ていうか、国民がそれくらいの選択や行動をしなきゃ、国ってのは大きくは変わらないんじゃないかって思ってます。首を挿げ替えたって、あまり変わりはしないですよね」
グ「そなた、やはり作戦司令官なのだな?」
ソ「ははは、違いますよ!」
グ「では政治家であろう。無礼をすまない。カレンという国のことを知らないものでな」
ソ「政治家でもありませんよ!ただの旅行者ですし、その前は郵便屋さんですから」
グ「なぜそんなに政治に深いのだ?」
ソ「深いこともないと思いますよ。多くのことは知らないです。
雑感を言っているだけです」
グ「ふうむ」
ソ「僕のカレンという国も、昔は属国だったらしいです。
カレンはゴールドじゃなくて円という通貨を使うのですが、それは昔カレンを統治していたヒボンという国の通貨です。
カレンの民族はヒボンに統治されてきましたが、カレンの国民はあまりヒボンを嫌ってはいません。頼りないところもあるけど、平和主義でユーモラスで穏やかな国です。
ガンディーノの王様は戦争好きみたいです。それなら他の平和主義に支配されたほうが、幸せなのかもしれませんよ。わからないけど」
グ「一理あるな」
城壁の外に出てきた。
するとグレイグは《ホイポイ》の魔法で武器を出す。彼もまた大きなハンマーを手にするのだった。
がいこつけんしが現れる。グレイグは焦りもせず、会話を止めようともしない。
しかし自分はタタタと勇み出ていって、静かに、でも豪快にグシャ!と敵をやっつける。
ソ「強っ!グレイグさんめちゃくちゃ強くないですか!?」
グ「グレイグと呼べばいい」
ソ「グレイグ・・・さん。慣れるように精進します。あはは」
とても大きな体に精悍な顔立ち、落ち着いた動作、シリアスな表情。彼は、威圧感というか敬意を表さずにはいられない独特の雰囲気があった。
ソ「あぁ・・・!」
グ「どうした?」
ソ「これなら魔王を倒せる可能性がある!!」
グ「なに!?何を見つけたのだ!?」
ソ「いやあなたですよグレイグ・・・さん!
こんな強い味方がいたら、魔王だって倒せるんじゃないかって!」
グ「そなたはやはり勇者なのか?魔王を討伐する旅をしているのだな?」
ソ「いやー違うんです。なんていうか・・・
旅をしていると、魔王に関する噂をちらほら耳にするんです。そしたら関心が芽生えはするんですけどね。まぁ無理ですよ僕には。
でも魔王を倒さんとする強い人、グレイグ・・・さんの力添えとかはちょっとは出来るかも?」
グ「それでは困る」
ソ「え?」
グ「私は、魔王を倒さんとする勇者に力添えすることを目標に、体と心を鍛えてきた。
私は体を張る役目であって、主役ではない」
主役を譲り合うコントをしているかのような、2人だった。



