episode70 『王と悟り』
episode70

森の中、グレイグの隠れ小屋に辿り着いた。
先日ソロがグレイグに助けてもらった地点の近くである。
グレイグの小屋には、思いのほか物がたくさんあった。
戦いのための道具がたくさんある。だけでなく、壁には乾燥した草が吊り下げられていたり、水場には得体の知れない瓶詰が並んでいたりする。
ソ「グレイグさんは料理が趣味なんですか?」
グ「いいや、薬の調合などを研究している。たしなむ程度だ。《薬草》、《毒消し草》、《まんげつ草》程度なら自作できる」
グレイグは、冒険の旅に役立ちそうなものを見繕って、カバンの中に詰めた。
そして、とても立派な特注品のような鎧を身に付けた。凄まじく強そうだ!
ソ「ちょ、ちょっと待って!」
グ「なんだ?」
ソ「その鎧、ヤメにしません?《ホイポイ》で収納して隠し持っておいてくださいよ。
いつもその格好していると、魔物にも人にも目立ちすぎちゃいそうで・・・」
グ「・・・そうだな」グレイグは他に装備できそうなものをキョロキョロと見渡す。
ソ「いつもの普段着でいいかも?木こりと思われてるくらいで丁度いい気がしますよ。
木こりと盗賊の気まま旅!あははは」
グ「なるほど。それくらい気の抜けた旅も憧れていた!」
ソ「あははは、良かった!」

ソ「この小屋もグレイグ・・・さんが建てたんですか?」
グ「いいや拾いものだ。ちょっと手入れして使わせてもらうことにした。
昔は魔女のような者が住んでいたのだろう。魔女はよく、森の中に小屋を建てる」
ソ「へぇ」
茶を飲み、食事を摂り、ゆっくり過ごした。
グレイグの家には本棚もあった。ソロは品定めをする。
『魔法と科学』
魔法と科学は似ている。魔法の仕組みが解明されればそれは科学と呼ばれる。
科学現象の数々も、最初は皆から「魔法みたいだ」と言われた。
『ツンデレなドクダミ』
ドクダミは臭くてかなわない。しかし、摘んで束ねて干してハーブティーにすると・・・?あーらフシギ!全然臭くなーい♪
『推理小説が大好き』
推理が好きなのであって、殺人現場は嫌いだろう?復讐心も嫌いだろう?
殺人事件の少ない推理小説を見つける、そんな旅に出たらいい。
『古の勇者ローシュの旅日記~森の小屋編~』
掛ける言葉を失くしたなら、「大丈夫だよ」と言ってやればいいんだ。
「大丈夫だよ」と言ったなら、全力で頑張れ。言った言葉には責任を持つんだ。
夜半にも、ソロとグレイグは話しこむ。
ソ「なんで軍事国家になろうとするんでしょうかね?」
グ「魔王や敵国から身を守りたい、という意図のはずだが・・・」
ソ「魔王なんて居ないかもしれませんよ。
なんだかんだ言って全然襲ってこないじゃないですか」
グ「そなた魔王について知っているのではなかったのか?」
ソ「魔王みたいな悪魔の話はちらほら聞きます。でも伝説とか噂ばっかりですね。
向こうの国の王様が実は魔王の手下じゃないか、とか言ってるけど、実際に魔王が姿を現してどこかの国を侵略した話も聞かないですよね」
グ「まぁ王や国は、魔王抗戦を口実に武装したがる意図は見える。
武器や兵器の開発は、とても儲かるからな。魔王が一向に攻めてこないと気付いても、それでも兵器の開発や売買は止(や)めない。
そうこうしているうちに強い兵器を開発できてしまうと、今度は他国を支配しはじめる・・・。多くの配下が欲しい、多くのカネが欲しいのだろう。
小さな島にまで攻め込んでいって、何もわからぬ者たちを植民地化してしまう。愚かなことに思える。が、王はそれを『国力強化だ』『文明化だ』と正当化する。
植民地化して農業や土木をそれらにやらせれば、自国民は肉体労働をしなくて済む。すると国民も他国侵略や植民地支配に賛成するようになる・・・。国民もまた、奴隷を欲しがっている。口にはしないし、自覚もないようだがね。
だから私は、国民を守ることにも愛想を尽かしはじめていた。
国民というよりは、罪なき者を守りたい。今となっては」
ソ「逆に、どうして兵士になったの?」
グ「私は兵士の息子だ。物心つく前から、城の衛兵になるように洗脳・・・いや教育を受けて育った。国を守るのは誇らしい、と子供の頃は思っていたがね。段々そうは思えなくなった」




