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episode89 『王と悟り』

4 時間前
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episode89


オリンピアの王は魔物ではないようだ。

2人はガンディーノまで逆行することにした。

逆行というのはあまり面白いものではないが、魔王の情報も無ければ他に楽しそうな街の情報もない。それならひとまずは目的地となりそうなものを埋めていくか。

街の手前まで来たが、懸念事項に対する回答が見つからないままだった。

グレイグがガンディーノ王に謁見するのは気まずいものがある。そればかりか街に入るのも。およそすべての民がグレイグを知っていそうだ。

そしてソロもまた、ガンディーノ王に「ご用があります」と迫るのは気まずいものがある。

ガンディーノ近くの森の小屋
ガンディーノ近くの森の小屋

森の小屋で一呼吸を置きながら、「結局また芝居を打つしかない」という結論に至った。

グレイグは小屋に留守番だ。ソロが一人で街に行き、カツラを見つけて変装する。そして先ほどのように、「古代神殿ですごい宝を見つけたが買ってはくれないか?」と盗賊のフリをして王と対峙しようということだ。

駄目で元々、下らない策だと思ったが、王は謁見を許可するのだった。権力者というのは珍しいものに目がないようだ。

そして白々しく王の顔に《ラーの鏡》をかざすが、王は何者にも変化しないのだった。

ソロはその結果を小屋のグレイグに持ち帰る。


ソ「トントン!人嫌いの魔女さんのお宅ですかぁ?そうは言っても身だしなみは大切ですよ~!イイ鏡があるんですけど、ドアを開けてはくれませんかねぇ~」

グ「はっはっは。ご苦労なこったよ」グレイグは戸を開けてソロを迎え入れる。

ソ「ははは!意外と恥ずかしいんですよこれ!」

グ「楽しんでるようにしか見えんぞ?」

楽しいけど恥ずかしいのだ。だから舞台の上で演じようとは思わない。そして、コメディめいたものしかやるつもりはないのだった。


グ「さて、ガンディーノ王も魔物の化身ではなかったようだな」

ソ「普通の人間だったみたいです。

 ・・・つまり、魔王が関与しなくたって人の世は荒れてるし、人は人同士で戦おうとするんですね・・・」

グ「《ラーの鏡》は誰の正体も暴いていないが、人の愚かさを暴きはした・・・。なんて皮肉な物語だ」


ソロは用を終えた《ラーの鏡》をグレイグに返した。

グレイグは鏡を受け取ると、なんとなしに鏡を見ながら前髪を整えた。

グ「私も少しは男前だろうか」

ソ「男前ですよ、グレイグさんは!」

グ「うーむ。ソロは嘘が上手いからなぁ」

ソ「これは演技じゃないってば!あっはっは!」

旅は少し楽しくなってきた。

グレイグは冗談の得意な人間ではないが、冗談がわかる人間ではあった。


次はどこに行こうか。これといった情報はない。

とりあえず行ったことのない方角に行ってみよう、ということになった。グレイグは南東に大きな街があることを知っている。

行き先が決まったので、2人は安心して眠りに就いた。



翌日の朝を迎える。

出発をしようと思ったが、ちょっとしたアクシデントだ。

グレイグが、鎧に不備を見つけたからちょっとメンテナンスの時間をくれと言った。もちろんかまわない。急ぐ行程ではない。

しかし手持ち無沙汰になったので、ソロは本棚を覗いた。実用書というか小難しい本が多い。その中にあって、1つの本が目に留まった。


『みずうみのヴィヴィアン』


ソ「湖のヴィヴィアンだって。なんか異色な本がありますね」

グレイグは鎧をいじりながら答える。

グ「あぁ、それは子供の絵本だな。ガンディーノでもよく語られる童話だよ。

 誰かが湖に行ったら、そのほとりで斧を貰ったという。その女性はヴィヴィアンと名乗った。

 また誰かが湖に行ったら、いたずらをされたという。その女性はヴィヴィアンと名乗った。

 他の人が湖に行ったら求婚をされたという。その女性はヴィヴィアンと名乗った。

 それでなんだったか・・・魔法使いが湖に行ったら雲隠れにあった」

ソ「ヴィヴィアンって多重人格なの?」

グ「それらは妖精で、ヴィヴィアンというのは個人名ではなく種族名だった、というオチだな。まぁ子供じみた笑い話だよ」

ソ「ふうん。グレイグさんは本も色々読んでるんですね」

グ「まぁな」

ソロは今の解説を頭に刻みながらも、その絵本を自分で読んでみた。結末まで辿り着く。やはり「森の魔女は湖に行ったら雲隠れにあった」と書かれてある。

ソ「・・・うん?」ソロは何かを思いついた。

ソ「グレイグさん!この家が前に魔女の家だったって、どうしてわかったんですっけ?」

グ「うん?森には魔女が隠れ住むというのはよくある話なのだ。それと、私が来たときに家の中には、野草の干したものや調合瓶が並んでいた。魔女の習慣だろうな、と」

ソ「グレイグさん!この辺りにどこか湖ってありませんか!?」

グ「湖はたくさんあると思うがな」

ソ「じゃぁ大きなやつや有名なやつは?」

グ「大きな湖なら、東のほうにあるな。

 そなた、その本が実話だと言うのか?」

ソ「ひょっとしたら実話だったりして!そうじゃないとしても湖に観光に行くのは悪くないですよ」

グ「そうだな。いいだろう。

 何もなければ近くの街にでも行けばいい」

思いがけないヒントから、次の行き先が決まった。


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