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エピソード1 『伝説の教師 -金八さんのその先に-』

  • 執筆者の写真: ・
  • 2023年3月21日
  • 読了時間: 3分

プロローグ

「金八先生」って知っていますか?

1980年代かそれ以前に生まれた日本人なら、

たぶん誰でも、知ってると思います。

国民的ドラマですし、教師の鑑(かがみ)ですからね。


あのドラマを見て教師を志した若者は、ものすごく多いと聞きます。

実際、僕の学科にも大勢いますし、僕自身もそうだったりします。

いや、

僕は、教師になりたいわけじゃありません。

「最高の教師」になりたいのです。

それこそ、金八先生みたいに。


だから、とにかく頑張って勉強してきました。

あまり頭のよくない子供でしたが、頑張って勉強してきました。

それで良いんです。

教師っていうのは、落ちこぼれな子の気持ちが解ったほうが良いんです。

聖職者なんて言われますが、未熟なままで良いんです。

子供に教えるんじゃなくて、子供から教わるくらいの謙虚さが、重要なんです。


…僕、教師のコツ、よくわかってるでしょ?

そりゃそうです。学校の勉強のみならず、

「最高の教師」がどんなものか、本やドラマや漫画も、いっぱい見て学んできましたから。

GTOみたいなのも面白いですけど、

やっぱり、金八さんが最も理想の教師像だと思います。

夜中でも休日でも、生徒がどこかで泣いていれば、飛んでいって助けてあげるんです。



エピソード1

僕は、大学の教育学部の職員室で、学部長に面談のアポを取りました。

僕の情熱を聞いてもらいたかったんです。

そして、それに相応しい進路を、あっせんしてほしかったんです。


「…やっぱり、金八さんが最も理想の教師像だと思います。

 夜中でも休日でも、生徒がどこかで泣いていれば、飛んでいって助けてあげるんです。」

僕は、さっきと同じような話を、

身振り手振りも交えて、情熱的に語りました。

でも、学部長の返答は、まったく予想外でした!

「うん。キミ、教師に向かないなぁ。

 世界で一番、教師に向いてないタイプだよ。ははは。」

「どういうことですか!?僕が教師に向かないなんて!!」

僕は、眉をつり上げて反論しました。

「ほらほら!ムキにならないならない!

 すぐ怒るようなヤツは、ますます教師に向かないよ?

 キミ、世界一じゃなくて宇宙一、教師に向かないかもね。ははは。」

「もう!冗談はやめてください!!」

「わかったわかった。でも、真面目だよ。私は。

 キミみたいな誠実な人間を、みすみす自殺に追いやりたくはないんだ。

 だから、出来れば教師の道には進ませたくないんだよなぁ。」

「…え?」

「意味、わかんない?まぁ、わかんなくて良いよ。

 ふぅ。」

学部長は、読んでいた資料の束をデスクに置き、

そして僕に向き直って、言いました。

「キミ、本当に教師になりたいの?最高の教師になりたいの?」

「はい!もちろんです!」

「じゃぁ、この人に会ってきな。私から連絡は入れておくよ。」

学部長はそう言うと、小さなメモ紙を僕に差し出すのです。

なにやら沖縄の住所が書かれている。そして名前。安倍祥悦。

「ショウエツくん、今月いっぱいはそこに居ると思うんだけど…」

「沖縄ですか!?ちょっとした旅行じゃないですか!

 僕いま、教員試験の追い込みですよ!旅行してる場合じゃないです!」

「ほらほら!そうカッカなさんな。

 キミ、普通の教師になりたいの?最高の教師になりたいの?」

「最高の教師です!」

「だろ?だったら、

 教員試験なんて来年に先延ばししてでも、ショウエツくんに会ってきなよ。

 絶対、有意義だから。100%、保障するよ。クックック!

 さぁ、オレもう授業だから、行くからね?」

「あ、ちょっと!」

僕はまだ話し足りないのに、学部長は職員室を出ていってしまった…


『伝説の教師 -金八さんのその先に-』

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