エピソード10 『イエスの子らよ』
ランチは12時にはじまる。
毎日毎日、規則正しく12時にはじまるわ。
それはいいとして、
メニューまで、毎日毎日同じなわけ!?
私は、テーブルに並んだお皿を見て、げんなり。
「またオムレツなの?牛フィレのステーキは出てこないの?」
「あらあなた、知らないの?
修道院では、牛フィレなんて出てきやしないのよ。
何のために修道生活するか、知らないの?
『牛フィレよりもオムレツのほうが美味しい』って、
そういう味覚を身につけるために、来てんのよ。
ワインも出ないわ。同じ理由で、ね。」
「そうなの?どうして?」
「レディに牛フィレ肉やワインを差し出す男は、みんな悪魔だからよ。
牛フィレ肉大好きなまま大人になっちゃうと、
悪魔にホイホイついていっちゃうってわけ。
お金持ちの男についていくっていうことは、
『悪魔に魂を売る』っていうことよ。
それがイヤだから、あなたのお母様、あなたを修道院に預けたのよ。」
「それにしたって、
たまには牛フィレ食べたっていいんじゃない?」
「そういうわけにもいかないのよ。
修道院ではそもそも、お肉をまったく食べないの。お魚もね。」
「どうして!?」
「シー!静かにしゃべらなきゃ、また怒られるわよ!
『どうして?』っていうけど、
修道院の人たちからすれば、
『どうして肉なんか食べるの?』って話なのよ。
動物を殺して食べるなんて、そんなの残酷じゃない?
想像もしてみなさいよ?食用のために牛が殺されるところを。」
「………………。うっ!」私は、吐きそうになってしまった。
「でしょ?残酷なことしてんのよ、人間って。
アタシも修道院に来るまでは、そんなことぜんぜん考えなかったけどね。」
私は、目だけを泳がせてシスター・サラを探して、ちらっと眺めた。
何事もなかったように、朝と同じようにお上品に、オムレツを食べていた。
朝と同じように清楚な顔をしてて、隠れてあいびきするような人には見えなかった。
『イエスの子らよ』


