エピソード10 『沈黙のレジスタンス』
翌日の昼下がり、
僕はまた、デニーのところに行った。今日はチャゴスは来ていない。
「ついてこいよ。」
デニーはニヤニヤしながらそう言うと、
村のはずれの大きな岩まで歩いた。
「僕らの城?」僕は、懐かしいものを見上げながら言った。
これは、僕らが「城」と呼んでいた大きな岩倉だ。
この村の子供たちが代々増築してきて、今や小部屋が20もある。
「ここなんか、真っ先に親たちにバレちゃうよ!」
「そうだよ。だからイイんだ。
まぁ、いいからついてこいよ。」
デニーは「城」に入っていった。ほかに子供たちはいなかった。
昔は常に、数人くらいは遊んでいたものだけど、
キノコ岩で遊ぶ子供自体が、減っているらしかった。
デニーは、「城」の広間を通り、その奥の、とある小部屋まで行った。
その小部屋の隅の隅、外光もほとんど届かないその端っこの地面に、
1mほどの大きな穴が、開けられていた!
「何これ!?昔は無かったよね!?」
「そうさ。オレが掘ったんだ。」
「どういうこと?」
「この『城』は、
この村の人間にとって、あまりにも有名すぎる。
だから、自分ちのガキが家出したとしても、
今どきの親たちは、この城に逃げたとは疑わない。
つまり、『盲点』ってヤツさ。ここは使える。
で、城に4階を掘ることも考えたんだが、
高いところに部屋を造ると、家具の運び込みができないんだよ。
小さな本棚くらいは運べるけど、ベッドやテーブルはムリだ。
でも、地下ならどうだ?
下に下ろすなら、上に持ち上げるよりはずっと楽さ。
だから、本格的なアジトを造るなら、地下のほうが良いと思った。
それでオレは、この死角の死角を選んで、掘りはじめた。」
やっぱりすごい!頭のキレは健在だ!
「ついてこいよ。降りよう。」
デニーは、更なる暗闇に備えて、ランプに火を灯した。
穴は階段状に掘り下げられていて、
地下には6畳ほどの小部屋が、設けられていた。
「すごい!ここなら誰にもバレないね!」
「へへ。驚くのはまだ早いぜ?」
デニーは、ランプを部屋の奥の地面にかざした。
なんと、そこには更に、
地中奥深くへと、穴が口を開けていた!
「まだあるの!?」僕は驚いた。
デニーが穴に向かって「わ!」っと叫ぶと、
そのこだまは、長い長い余韻を響かせた。
「どんだけ広いの!?全部デニーが掘ったの!?」
「はっはっは!違うよ。
オレが、この小部屋を掘り進めてたらさ?
いきなり、地盤沈下が起きたんだ。焦ったぜ?足場が崩れ落ちんだからさ。
そしたらコレが現れたってわけさ。
あはは。アジト掘る手間、はぶけちまった!
ついて来い。飛び降りる必要があるぞ。気をつけろ。」
僕はデニーについて、さらに下まで降りていった。
「うわーっ!!」
僕は、その目を疑った!
『沈黙のレジスタンス』



