エピソード11 『星空のハンモック』
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- 2023年3月20日
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エピソード11
桟橋から上陸するとき、私のスニーカーは濡れてしまった。
「沖縄だもん。そろそろビーサン買わなきゃな。」私はしょんぼりしながら言った。
クツだけならまだマシだ。カツミくんなんか、大事なギターにも水がかかった。
そう。彼はチェックアウト後という身分だったので、
ギターやリュックサックを背負ったままの、観光になってしまったのです。
「帰りの便の最終は17時だからな!気ぃつけろよ!」
船頭のおじさんは私たちに忠告した。
まずはみんなと同じように、ビーチサイドに向かった。
無人島といえども、人がまばらにいた。
私たちと同じようにフェリーに乗って、ぽつぽつ南城市から上陸してくるらしい。
ビーチサイドの海はいっそうキレイ。
これが沖縄の青なんだなと、
私はうっとりしながら眺めていた。眺めているだけで気持ちいい。
売店も施設もぜんぜんなく、このナチュラル感が私にはたまらなくいい。
砂浜の砂もとてもきめ細かくて、バカンスのビーチという感じ。
浅瀬にまで、トロピカルな色をした小魚がたくさん泳いでいる。野生の熱帯魚って初めて見た。
静かさは百名ビーチのほうが上だけれど、楽園テイストはコマカの勝ち。
カツミくんの大荷物を木陰において、
しばらく私たちは、青い海と戯れていた。
けれど、1時間もすると異変が起こる。
新たに団体客がやってきて、日和見(ひよりみ)ムードをぶち壊してしまったのです。
「島の探検にでも切り替えようか」苦笑いしながらカツミくんは言い、
私はだまってうなづいた。
カツミくんは、リュックやギターを木陰に置いたまま、出かけようとする。
「ちょっとちょっと、それは危ないよ!」私は慌てて制止する。
「大丈夫じゃないかな。日本だから、盗るような人いないと思うよ。」
彼はあっけらかんとそう言うのだけれど、私は心配になって、
だまって荷物まで駆け戻り、自分で背負い込んで歩きはじめた。
それに気づくと彼は、
「いやいや、そういうわけにはいかないよ!」と慌て、
やはり自ら、リュックとギターを背負い込むのだった。
小さな島の割には地形は富んでいて、
ゴツゴツした岩場も、ちょっとした緑もある。
ほとんどの観光客は、ビーチとフェリー乗り場を行き来するだけらしく、
散策に出ると、もう人と出会うことはない。
私たちは海に面した岩場で適当に立ち止まり、そこに腰を下ろした。
しばらく岩がちな海の眺めを堪能すると、
カツミくんはおもむろにギターを取り出し、また、プライベートライブが始まる。
子守唄のようなその音色で、私はやがて、眠りに落ちてしまった。
そして、それはカツミくんも同じだったのです。
ギターを抱えたまま、うとうとと眠りに落ちてしまったのです。
『星空のハンモック』



