エピソード122 『天空の城』
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- 2024年7月22日
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エピソード122
美しい街は去るのも名残惜しいが、また次も美しい、または楽しい街であることを願いながら旅立つ。
東の果てにあるらしい港町に鼻先を向けながら、寛大な心で寄り道しながらさすらう。
魔物の生息域が変わり、少々野蛮な、物理的に殴りつけてくるような魔物が増えてきた。次の街ではそれに適した防具を新調したいな、と思った。そのためには大きめな街に出くわしたいところだ。
やがて城が見えた。
城壁街を持たない大きな城下町である。
街の雰囲気はサマリントとは異なるが、深い歴史を感じさせる点では共通している。
街「ここはラダトームだ。遠い昔、魔王を倒した勇者はこの城から旅立ったんだよ!」
街の人は、誇らしげに言った。
れ「えぇ?勇者様はサントハイム国のサランの出身であるはずです」
街「それは5、60年前の勇者の話だろ?
もっともっと昔の勇者のことさ。勇者ロトの末裔と言えばラダトームのものだよ」
魔王を倒した真の勇者も色々な時代の者がいる、という噂を聞いたことがあるが、この城もそのうちの1つを輩出したようだ。
この街から感じる独特の重厚さは、勇者を排出したそんなプライドからきているのかもしれない。
いいや、戦士風情の男を多く見かける。そして大きな武器屋がある。
サランと同じ仕組みだろうか。勇者を排出した街の若者は、自分も勇者になろうと剣を振るう者が多いのかもしれない。そして勇者の伝承を聞いてやってくる者も多いのだろう。勇者たちの聖地、そのような側面がありそうだ。
れいは武器屋を覗いてみた。
立派な武器が多数ある。れいは珍しげに色々なものを眺めている。

武「はっはっは。良い武器が揃ってるだろう?
昔はこの近辺はスライムやドラキーしかいない平和な土地だったらしいがね。いつぞやから手強い魔物が増えちまった。
近くに勇者の洞窟ってのがあるんだが、その奥から凶悪な魔物が這い出てくるんだよ。
どうなってんだろうな。勇者様の加護で守られてるってならわかるが、勇者様の洞窟から魔物が湧いてくるってのは・・・」
勇者の歴史とは興味深い。そういえば、サランの勇者のことももっと色々聞いておけば良かったなと思った。れいはその彼のことをよく知らない。
教会を訪ねてみよう、と思い歩きだす。
すると、冒険者らしき戦士に話しかけられる。
戦「おう。あんた魔法使いじゃないのか?オレの仲間になってくれないか!」
れ「え、一人旅にこだわっていますので、ごめんなさい」
ナンパ・・・ではないのだろうが、何のキッカケもなしに「仲間になろう」というのはさすがに唐突すぎるのではななかろうか。れいは困惑した。すぐ引き下がってくれたのでまぁいい。