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エピソード136『世界樹 -妖精さんを仲間にするには?-』

  • 執筆者の写真: ・
  • 11月18日
  • 読了時間: 10分

※2025/11/18 戦いシーン加筆!


エピソード136


4人「やったぁ!!」

母「通常、世界樹へは高い山を越えて渡ります。

 しかし実は、ルートはそれだけではありません」

ア「やっぱりあるんだ!」

母「この海から、山を潜って抜ける洞窟があります」

ゆ「そんな隠し通路があったなんて!

 あ、でもすぐ近くを漁船とかが走ってますよ?どうして見つからないの?」

母「洞窟への入口は、干潮のときにしか姿を現しません」

キ「なるほど!!」

母「満潮のときには、入口は海に沈んでしまいます。

 ごくわずかなタイミングでしか口を開けないため、人に見つかることはほとんどありません」

ゆ「月の満ち欠けが云々って、そういうことだったのね!」

母「次の干潮の際、あなた方を入口へご案内いたしましょう」

な「なんだぁ~、人魚さんの背中に乗って泳いで連れてってくれるのかと思った!」

母「場合によってはそういうやり方もあります。

 しかしあなた方は馬車をお持ちのご様子。

 馬車を同行させるには、水位が低い干潮時に入るほうがよろしいかと」


普通の人間では有り得ないルートでの世界樹への上陸。

一行は胸が震える思いだった!!



世界樹へと続く大洞窟は、馬車が通れるほど大きなものであることが不幸中の幸いだった。ここでいきなり馬車とお別れというのは何とも心もとない。

しかしそれ以外はとても難儀な、冒険のクライマックスを感じさせる難所であった。

一行は洞窟の侵入には免疫があるが、海と繋がるこの洞は湿気がすごく、足場が悪く、歩くだけでも煩わしい。

出発時は気づかなかったが、潮が上がれば入口が封鎖されるというのも恐ろしいことである!

洞窟というか、どうも山登りのごとく傾斜のある道程であった。


そして当然のことながら、多くの魔物が行く手を遮るのだった。

魔物の数が多く、戦闘回数が多いと、策を講じてどうにかするような戦いでは無理がある。

ボス戦は雑魚戦より辛い、と思っていたが、状況によっては雑魚戦のほうが辛いことを思い知る。


まともに前衛を担えるのがアミンしかおらず、魔力への依存が大きいパーティーだ。

魔力が底を尽きたら全滅が確定である。こんなときを見越して座禅瞑想の習慣を作ってきたわけだが、そうは言っても限度がある。

その状況を察して、アミンは皆がなるべく魔力を使わなくて済むように懸命にオノを振るった。

そしてパーティーの先頭で盾となり続けた。

こんなに勇敢な10歳の戦士が、これまでの歴史上で存在したのだろうか?


「女の子には酷だけれど、汚れることを恐れないで!」とキキは皆にアドバイスをした。

ななは時に、襲いかかってくる汚い魔物を掴んで投げ飛ばした。背負い投げだ。洞窟は床も壁も鍾乳洞のツララでトゲトゲとしている。そこに投げ飛ばされれば魔物とてひとたまりもない!そして魔物は、柔道など知らない。少女の間合いに入っていって返り討ちに遭うなどと、想像もしていないのだった。そしてななの筋力は、昔柔道をやっていた頃よりもずっと強い。

このパーティには、実は武闘家がいたのだった!

ゆ「あ、あなたいつの間にかかなり強くなってない?」

な「え、そう??」

キ「魔物が強くなってきたからだわ」

ゆ「意味わかんないよ(汗)」

キ「うふふ。ごめん!

 魔物って、強いやつほど人型のが多くなってくるのよね」

ア「そうだよ。魔族とか怪人とか!だから知恵もあって手強くなるだろ?」

キ「そうだけど、ななは柔道家なのよ♪

 この子にとって、人のような形をして人のように襲い掛かってくる敵のほうが、反射的に投げ飛ばしやすいのよね!」

ア「そういうことか!」

キ「柔道の技を上手く使えば、他の魔物だって投げ飛ばせるはずなんだけどね。

 ななは好戦的じゃないし、間合いを自分でコントロールするのは苦手みたい。襲い掛かられて窮地に追い込まれたほうが、反射的に投げ飛ばせるのよね」

な「よわいの?つよいの?」

ゆ「変な子(笑)」

ア「あはははは!」

キ「防衛のためだけに戦うんだわ。この子は」



ゆなは、魔力が枯渇してもなお《りりょくのつえ》を振るい続けた。杖とは名ばかりで、ヤリのような武器である。魔力を消耗することで、打撃ダメージが増幅される魔法使い用の武器だ。

普通は、マジックパワーが枯渇したらもうこの武器での攻撃はあきらめる。しかしゆなは普通ではなかった。あきらめなかった!あきらめて攻撃をやめるわけにはいかなかったし、冒険の中で少々は腕力を鍛えてきた自負があった。とにかくヤリなのだからそれなりの殺傷能力がある。そしてゆなはその頭脳をフル回転させて、魔物の弱点とおぼしき部位を徹底的に突き続けた。そうして腕力以上のダメージや足止めを与え続けるのだった。


人は、切羽詰まるとなお強くなる!



洞窟はグチャグチャとしていて、もはや人間が歩くような場所ではない。

仮に魔物がいなかったとしても、だ。

「体を鍛えときなさい」と繰り返し言い続け、ダンスをしたり重いコテを装着し続けたりさせたキキは、正しかった。そうして徐々に体を鍛えてこなかったら、少なくともか弱い人間女性のななとゆなでは踏破不能な道だったろう。



50時間あまりの寝ずの行軍の末・・・

ついに、地上から漏れる明かりが見えた!

な「出口だぁー!!」ななは興奮の叫び声を上げる。


ゆ「でも・・・」ゆなは力なくささやく。

ア「どうやって登ればいいんだ・・・!?」


そう。なんとこの洞窟の出口は、お月様のように洞の闇の上空にぽっかりと浮かんでいるのだった。こちら側の出入口もやはり、簡単には入れも出られもしない仕組みになっているようだ。

キ「跳んでいけばいいんじゃない?」とキキは相変わらず気丈なまま、そのお月様のような光を目指して跳び上がる。

そしてワクワクしながら外を眺める。

キ「うわーぁ!」

ア「何が見えたの?」アミンはキキに叫ぶ。

キ「広ーい世界がまた広がってるわ!ワクワク♡」

ゆ「ワクワクとかじゃないから(汗)私たちが出る方法は!?」

キ「あぁ、なんか足元に縄バシゴみたいのあるわ」カラン。

キ「ちょっと見てくる!」

キキは縄バシゴの端を杭にくくり付けると残りの縄を下方の3人へ投げ、そして自分はさらに地上の偵察へと駆けだしてしまった。

しかし・・・

ア「え・・・!」

な「おぃー(汗)」

ゆ「なんてことなの」

なんと、縄バシゴは全然床に届かないのだった・・・。短すぎるのだ。

ア「キキ―!」

しかしキキはもう入り口にいない。

ゆ「でも縄バシゴがあるってことは、誰か出口の番人みたいな人がいるんじゃない?」

たしかにこの洞窟の出口付近は、雑に玉座のように整備されてもある。

な「おーーーーーい!番人さーーーーん!!!」

ななは大きな声で助けを呼んだ。

ア「おーーーーーーい!」


?「ふはははははは!」

ゆ「誰かいるわ!」喜ぼうとしたのも束の間・・・。

?「お呼びかな?侵入者諸君」

黒い大きな陰が闇から歩み寄ってくる。

ア「侵入者って・・・、歓迎されてる呼び方じゃないぞ・・・」

?「あぁ、こんなところまでご苦労なもんだが歓迎しないさ。

 我が名はデュラン。この扉の番人を任される者だ。

 引き返すか?死んで口を閉ざすか?」

なんと闇の中から筋肉隆々の人型の悪魔が姿を現した!

デュラン
デュラン

な「キキちゃーーーーん!!!」ななは悲壮に助けを呼ぶが、しかしキキの耳には届かない!

ゆ「もう戦う体力もないわ!」

ア「ぼ、僕らでやるしかない・・・!」

デュランがあらわれた!!!


デ「ふぅむ。大して骨も無さそうだが?まぁよい」

ジャキーーン!デュランは巨大なブーメランのような剣を構えた!

ア「うぅ!」敵の武器が、つまり間合いがあまりに大きすぎて、アミンは斬りかかっていけない!

な「これ絶対《スクルト》ぉ!」ななは皆の守備力を上げた!

ゆ「私の出番だわ!《バギマ》!!」ゆなは必殺の《バギマ》を唱えた!

しかし、何も起こらなかった!

ゆ「魔力がもうない!」ゆなはもう《バギマ》が撃てない!

な「あわわわわわわ!

 キキちゃーーーーーん!!!」ななは再びキキを呼ぶが、しかし返事はない!

デ「ははははは。では相手をしよう」

デュランは余裕の仁王立ちから、その大きな剣を真横に一閃した!

ぶぁっ!!!

ア「うが!」

な「うわぁ!」

ゆ「きゃぁ!」

真空刃のような見えない刃が3人に襲いかかる!

デ「死なないのか?見かけに寄らずだな」

ゆ「アミン、ムチを貸して!」ゆなは《バギマ》が撃てなくなってもまだ諦めない。アミンに駆け寄ると耳打ちし、アミンの《女神のムチ》を力強く握った。《理力の杖》よりはムチのほうが間合いが長い。

ゆ「ギリっ!」ゆなは力強い眼力で相手を見る。

な「無茶だよ!これは勝てないやつ!

 キキちゃーーーーーーん!!!」

ゆ「やぁーーー!!」ゆなは駆けだすと、相手の顔面を睨みつけながらも、なんと右手に持つ奇妙な武器に向けてムチを振るった。そしてすぐさまグイと引っ張る!相手の武器を鉄鞭で巻き取ろうと試みたのだ!

デ「むむ!?」デュランは予想外の攻撃に少し動揺したが、娘との力勝負に負けるほどやわではない。すぐに手に力を込めて、「無駄だ!」とばかりにゆなを睨み返した。

その隙をアミンは突いた!

アミンもやはり、デュランの胴体ではなく大きな武器に、それを持つ手元にだけ向かってオノを振りかぶる!

ア「とりゃぁーー!!」

ガ――――ン!アミンはデュランの手の甲を斬りつける!まるで鋼鉄のような音がする!

デュランの手は痺れ、表情が歪んだ!

ゆ「まだだわ!」ゆなはさらにもう一度ムチを引っ張る!

ガシャ――ン!デュランの手から自慢の武器がこぼれ落ちた!

な「やったぁ!」

デ「なに!?

 舐めて済まなかったがもう手加減はしない。一瞬だ」

デュランは大層な武器を失っても動揺はせず、今度は鍛え上げられた肉体で弾丸のようにゆなに襲い掛かってきた!

ゆ「うわぁ!」ゆなは吹っ飛ばされる!

そして間髪入れずに今度はななに襲い掛かってくる!

デ「強い魔物は相手が1度動く間に2度動く!」

な「わわぁ!!」ななは焦る!

な「メラ!メラメラメラ!メラメラ!」ななはいつかのキキを真似るように、なけなしの《メラ》を連発して足掻いた!

デ「《メラ》だと?正気なのか!?」デュランはこの一味が強いのか弱いのかよくわからない!この魔法も何か企みがあるのか!?

《メラ》ごとき、受けながら突進することも可能ではあったが、万が一を警戒して避けながら突進を続ける!そしてななの間合いに入ると、回し蹴りを放った!攻撃でありつつ、足払いで体勢を崩しに出たのだ!

な「うわぁ!!」強い魔物が慎重に出たら、弱き者は敵うはずもない!!

しかし!ななは弱くもないのだった!

筋肉隆々の回し蹴りを、ななは柔道家の反射神経で避けに入った!

ドフっ!しかし避け切れはしない!衝撃を緩和するので精一杯!

しかし致命傷にも至らない!

な「んぐぅ!!!」ななは痛がり転ばされながらも、相手の上体を掴みにかかった!柔道の反撃の要領だ!目の前に敵の体がある!ななは転びながらも敵の体を離さない!そして相手の腹に両の脚を押し付けると・・・なんと、背中を地面に付けながらも相手を投げ飛ばした!!

ゆ「巴投げ!?」ゆなはその鮮やかな反撃技に目を丸くする!


ドシーーーーン!!!デュランは腹を上に向けて無様に倒れ込んだ!


な「アミーーーン!!!」ななはこれがトドメになり得ないことを確信して助けを呼んだ!

ア「はっ!」アミンはすべてを察する!

ア「はぁぁぁぁぁーーー!!!」アミンはオノを構えて駆けだす!

ゆ「《ホイミ》!!」ゆなは最後の僅かな魔力でアミンの一撃に加勢する!

ア「はぁぁぁぁぁーーー!!!!!」


ドゴォォォ―――――ン!!!!!

相手の腹を目掛けて真上から強烈な一撃をお見舞いする!!!!!

デ「ごはぁぁぁぁ!!!!」


なんと、キキ無しで難敵デュランをやっつけた!!!!!



な・ゆ・ア「はぁ!はぁ!はぁ!はぁ!」

な「すごぉぉぉぉーーーーーー!!!」

ゆ「すごいのはアンタよ!」


キ「あれぇ?何やってるのみんな??」

キキは3人が一向に登ってこないので様子を見に戻ってきた。

な「もぉぉぉぉぉキキちゃんの役立たずぅぅぅぅ!!!!」

ななはこの旅一番の大声で叫んだ!


キキは一人ひとりを負ぶりながら入り口まで跳び上がり、無事に洞窟からの脱出は達成された。

一行は見事、世紀の洞窟を抜けきった!

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