エピソード14 『全ての子供に教育を』
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- 2023年3月15日
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エピソード14
うなだれている俺を、利典さんが見つけ出し、
再び出発することになった。
「大丈夫?かなりくたびれてるみたいだね。
ここからはだいたい下り道だから、そんなにキツくないと思うよ。」
いくぶん、安心した。
回復したはずの体力は、30分と持たなかった。
すぐに腰が痛くなり、足が重くなった。
俺の場合、特に腰が痛い。背筋が弱いのだろう。
もはや、何も考えられなくなった。
「無心」と言えば聞こえは良いが、そんなに格好良いものではない。
周りの景色を楽しむ余裕もなく、
転ばないよう、1メートル先の地面ばかり、ぼーっと見ながら歩いた。
ただただ、機械的に足を動かした。
「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ…」
更に追い討ちがかかる。
前を歩く利典さんは、振り返って、容赦なく言う。
「もう少し、急げるかな?日が暮れるとまずいから。」
一理ある。そしてきっと、五里くらいあるんだろう。
…俺はいったい、何をやっているんだろう?
こんなに辛い思いをしたのは、いったいいつぶりだろうか。
大学受験の追い込み時以来か。
あのときは、
「この勉強が、将来の高給料になるんだから」というモチベーションで、
なんとか自分を奮い立たせた。そして、その通りの見返りがあった。
しかし今回はどうだ?
この苦行は、俺に何のメリットも生まない。
報酬が発生するわけでもなければ、女にモテるわけでもない。
そればかりか、
明日から俺は、財産を投げ打って奉仕をするのだ。
体力をカラッポにして、財産をカラッポにしに行くのか。
考えてみれば、おぞましいほど悲惨な状況だが、
幸か不幸か、意識が朦朧としてきており、余計なことは考えられなくなっていた。
「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ…」
歩くしかないのだ。
利典さんは、顔面蒼白な俺を心配して、
「休憩しようか?」と頻繁に尋ねてきたが、
俺は、全て断った。
いま座り込んでしまうと、もう、立てそうにない。
『全ての子供に教育を』



