エピソード14 『沈黙のレジスタンス』
2週間後、やはり地下3階は発見された。
しかし、地下3階もまた、寝泊りの部屋とは思えなかった。
食料庫や食堂であるらしかった。
デニーは、さらに階層があると確信したが、
かといって、発掘作業はそれで打ち切ると言った。
「あとは大人に任せたほうが良いだろう。」それが、デニーの見解だった。
探索隊たちも、そろそろ穴掘りに飽きていたしね。
僕は、「僕が引き継ぐ番だ!」と思った。
デニーはもう、引退でいい。あとはデニーは就活に専念すればいい。
僕は考えた。僕にできるやり方が、あるはずだ。
そう考えたら、簡単だった。
僕は何のために、セルチュクに武者修行に行ったんだっけ?
何のために、何を学んできたんだっけ?
僕は、西洋人のような礼儀正しさを学んできた。
学を身に着け、考古学を学んできた。現場監督のやり方を学んできた。
僕は、文書の作成に取り掛かった。
国を動かし、大人を動かし、お金を動かすためには、
説得力のある証拠を、理詰めで突きつけなければいけないのだ。
僕はそれを、ヒロト監督のもとで学んできた。
僕はまず、セルチュクで読んだ文献の一節を写し、
そして、ラーマ法王一派が掘り当てた新聞記事を、貼る。
地下2階、3階は僕らが掘り当てたから、
詳細の状況をつづることはできる。
しかし、4階以降が存在するなどと、証明することは出来るか?それが難しい。
文献には「2万人が暮らしていた」とあるが、それだけでは証拠にならない。
そのような広大な地下都市を、古代人が掘れるなど、現実味が乏しい。
ヒロト監督が言っていたように。専門家であればあるほど、そう感じるだろう。
僕は考えた。デニーみたいに考えた。
僕は、僕らの村の「城」がいかに壮大であるかを、引き合いに出すことにした。
長い年月をかけて代々引き継いでいくなら、子供でもこれほどの城が造れる。
同じ土壌、同じ習慣、同じ世代間協力を持って根気よく続ければ、
2万人をも収容する巨大地下都市を掘りあげることは、不可能とは言えない。
ガットキアの民ならば。
迫害を受けてから掘りはじめたとは、限らないのだ。
そう思い込むなら、話は行きづまる。
しかし、迫害のあった時期に、すでに広大な地下都市が掘られていたとしたら?
それも馬鹿げているが、ここガットキアなら、あり得る。
この村の無数の穴ぼこが、無数の秘密基地が、それを証明している。
僕はその文書を、直接国にではなく、ヒロト監督に提出した。
彼ならきっと、希望的観測に寄りながら、この文書を読んでくれる。
そしてその権威と知識によって、
より説得力のあるプレゼンテーションを行えるだろう。
僕の読みは当たった。僕の施策はうまくいった。
『沈黙のレジスタンス』



