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エピソード16 『天空の城』

  • 執筆者の写真: ・
  • 2024年7月21日
  • 読了時間: 3分

エピソード16


れいはまず、両替え屋を探した。魔物を倒して入手した宝石を、お金に換えなくては。

バラバラバラ。

れ「これをお金に換えてください」

店「はいよ。ひぃふぅみぃ・・・148ゴールドだね」

れ「このお金で、宿屋に泊まれますか?」れいはこの大都市の勝手を尋ねた。

店主はここでようやく、れいの顔を見た。

店「余所者かい。

 まぁよっぽどぜいたく言わんなら、泊れるさ。

 《銅の剣》を買って、《薬草》を買って、宿屋に泊まれるよ。食事も摂れる」

れ「そうですか、どうもありがとう!」

お金を確保して安心した。今日の生活が送れそうで、安心した。

街には色々な店がある。サランでは見たことのないものや、カラフルな服もたくさん並んでいる。しかしそれらを衝動買いする余裕はないことがわかった。「気を付けねば!」れいは自分の胸に言い聞かせた。



大通りを一周ぐるっと回ってきた。街の様子は少しわかった。

「やっておかなければらないことはなんだろう?」とれいは考えた。

そうだ。道具屋は《銅の剣》を買う予算があると言っていたが、その通り、武器を新調したほうが良い気もする。れいが持っているのは小さなナイフだ。でも、これは大切な祖母の形見だし・・・。そんなことを考えていると、武器屋に辿り着いた。


武「よう。ここは武器の店だ。どんな用だね?」

れ「武器が、欲しいなと思ったんです」れいは、自分の《聖なるナイフ》を見せながら言った。

武「そうだなぁ。もうちょっと立派な武器が欲しいところだぜ。

 ていうか、武器がナイフってことは、魔法使いなのか?

 職業によって勧める武器も変わってくるぜ」

れ「いつかは立派な魔法使いになりたいのだけど・・・今は《ホイミ》しか使えません。

 武器で戦うことが、しばらくは必要なんだと思います」

武「それならこれなんかどうだ?」

武器屋は《青銅の剣》をれいに見せた。ほのかに青味がかった、無骨な灰色の剣だ。

あまりカッコよくないが、そこに言及できる身分ではないことはわきまえている。

れ「うん。これくらいの長さの剣が欲しいと思ってたんです。

 《聖なるナイフ》だと魔物の目の前まで入らないと攻撃できなくて・・・」

《青銅の剣》は、短剣と剣の間くらいの刀身をしていた。まさしくれいのような立場の者を想定して作られているようだ。

武「うん。いいんじゃないか。

 300ゴールドだ」

れ「え!た、足りません・・・」

武「足りないのか?それくらい持ってるだろう?」

れ「いえ、100ゴールドと少ししか持っていないんです。

 なにぶん昨日旅立ってきたばかりなもので・・・。 

 でも100ゴールドくらいで剣が買えると聞いたのですが?」

武「《銅の剣》なら買えるよ。ぴったり100ゴールドだ」

武器屋は、後ろにたくさん並ぶ茶色い剣を指さした。

《銅の剣》、《青銅の剣》、似たような名前なのに3倍も値が違うのか。

れ「それなら買えるけど、でもかなり大きいんですね」

《銅の剣》は《青銅の剣》よりも一回り長く、刀幅が広い。つまり、重そうだ。

武「そうだなぁ。まぁ、安価だけが売りの量産品だからね」

うーん。どうしよう。どちらも帯に短したすきに長し、だ。武器を1つ選ぶだけでも頭がくたびれる。れいはしばらく思案した挙句「また来ます」と告げた。


どうしたものか、と歩いていると、客引きの大きな声が耳に飛び込んできた。

防「らっしゃいらっしゃい!サントハイム一の防具屋だよ!

 今日入ったばかりのピカピカの防具!見るだけでも寄ってらっしゃい!」

そうか。防具だって買う必要があるのではないか。

れいは防具屋の品ぞろえを覗いてみた。

革製の簡素なものを中心に、幾つかの冒険者防具が並んでいる。

100ゴールド、180ゴールド、240ゴールド・・・一番安くても65ゴールドだ。

「お金がぜんぜん足りないんだわ!」れいは重要な事実に気づいた。

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