エピソード17 『「おとぎの国」の歩き方』
翌朝。朝日ととも出発だ。
…と、そうしようと思ってたんだけど、体が動かなかった!
昨日はバックパックを背負って、一日中山道を歩いたんだ。無理もないさ。
体が動かないことに気づくと、
僕はあっさり、二度寝にかまけることにした。
一人旅って、こういうとき気楽だよ。
別に誰に怒られるわけでもないし、誰を待たせてるわけでもない。
…待ってないよね?婆ちゃん。
とにかく、急ぐ必要性はナイんだろうと思ってさ。
体が満足するまで、ゆっくり眠ることにした。
筋肉痛だと、よく眠れるんだよ。深く眠るし、長く眠る。
おかげで、あっという間に真っ昼間さ。16時間くらい寝たんじゃない?
そして、たっぷり寝ると、思いのほか体力も回復するんだよ。
眠るって素晴らしい。
案外シンプルなんだよ。人生ってのはさ。
この日は5時間くらい歩いて、
今日は小さなほこらを間借りして、婆ちゃんのこととか考えて空腹をしのいで、
たっぷりどっぷり眠って終えた。
3日目。
歩き始めて3日目。ブータンに入って4日目だ。
何だっけ?何してんだっけ?
ふと我にかえって、僕はへらへらとひきつり笑った。
何か目新しいモノを求めて、ブータンに潜入してきたワケなんだけど、
当初イメージしてた旅とは、なんか違う気がするぞ?
まぁいいよ。
とにかく、月並みな旅じゃツマラナイ。僕はそう思ってるからさ。
だから、こんなヘンなのでも、別に悪くはない。
帰国したら、旅仲間にどんなふうに話して聞かす?
僕より歩くの速い婆ちゃんがいるなんて、みんな信じるかな?
僕、「龍だ」とか言われたんだけど、みんな信じるかな?
…そうだ。龍がどうとか言ってたな。
「おぬしは龍じゃな」
「ブータンは龍の国じゃ」
何なんだ?龍ってのは。
知ってるよ。架空の生き物だ。ドラゴンボールに出てくるんだ。
カッコイイな、龍って。デザインのモチーフとして、カッコイイ。
「おぬしは龍じゃな」
僕、龍なのか?意味わかんねぇ。辰年ではないけどな。
…そんなこと考えながら歩いてたら、
もう昼だ。太陽は真上に来てる。
ヒマを潰すコツを覚えたよ。空腹を忘れるコツも覚えた。
とにかく何か、考えてりゃいいんだ。
何でもいい。何だっていい。悲しくなけりゃ、何だっていいんだ。
するとネタはいくらだってある。あと1000年くらいは歩けるぜ。
うん。やっぱり婆ちゃん、マカオから歩いてきたんだよ。
僕もけっこう歩いたぜ?婆ちゃんほどじゃないけど。
重たいバックパック背負って、我ながらよく歩いたよ。
ひょっとして、ブータンからも出ちゃったんじゃねぇの?
…え?マジ?
それもありうるな。距離感がぜんぜんわかんない。
ブータンとチベットの国境なんて、山の中だろ?
知らずに越えてても、おかしくはないよ。
3日目もかれこれ、3時間は歩いた。
ようやく、ようやく、村らしき場所にたどりついた!
『「おとぎの国」の歩き方』


