エピソード2 『イエスの子らよ』
「マリアンヌ!起きなさい!
起きなさい!マリアンヌ!起きなさいったら!」
お母様のどなり声で、私は目を覚ましたわ。
「もう!眠ってはダメとあれほど言ったのに!
約束違反をするのは、これが最後ですからね!
これからはもう、てっていてきに素直な良い子で過ごすんですよ!
修道院に入るんですから。」
「着いたのね。」私は目をこすってつぶやいた。
修道院って知ってる?
私も知らなかったわ。実際に行ってみるまでは。
教会みたいなところよ。
教会は、日曜日にだけ行くでしょう?
でも、修道院は毎日行くところなの。
毎日行くっていうか、毎日、そこで暮らすのよ。
せまぜまとした町の中にいたわ。目の前に城門がある。
「馬車はここまでしか入れません。あとは歩いていきますからね。」
なんだ、まだ着いてないんじゃない。
ダメよ、ふてくされたら。良い子にならなくちゃいけないんだってば。
私は馬車の御者(ぎょしゃ)さんにていねいにおじぎをして、
その間にお母様は、城門の門番に、何か書類を見せていたわ。
「さぁ行きましょう」お母様は、私の目も見ないで言った。
どれくらい歩くのかしら?それすらも教えてくれない。
小言ばっかり言うけど、かんじんなことは何も教えてくれないの。
ゆるやかな坂道と階段が、交互に続いていたわ。
オムレツのいい匂いがしたけど、寄っていってくれたりしないの。
着いたら食べれるって言ったのに!まだ着いてないからかしら。
まぁ、案外あっけなかったわ。10分も歩けば到着。
大きな教会。
入り口に見張りがいたけど、今度は兵士じゃなくて、神父さまみたいな人よ。
きっとここが修道院。修道院は修道者しか入れない場所なのよ。
お母様は、また書類を見せて手続きをすると、
「良い子にするのよ。マリアンヌ。
神の祝福がありますように。」
十字を切ってそう言って、私のおでこに軽くキスをした。
振り返りもしないで、行ってしまったわ。あっけなく。
私のこと、きらいなんでしょうね、きっと。
しょうがないわ。私、ぜんぜん言うこと聞かない子だったから。
『イエスの子らよ』


