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エピソード2 『自由の空へ』

  • 執筆者の写真: ・
  • 2023年3月18日
  • 読了時間: 2分

エピソード2

これといって不自由でもなく、

これといって不幸でもないのに、

私の心は、どこか空虚でした。

何かがつまらなく、何かが足りないのです。


しかし、そんな満たされない気持ちをわかってくれる人は、

およそ一人も、いませんでした。

同年代の友人たちは、

そんな私の相談を、「考えすぎよ」の一言で切り捨てます。

そしてすぐに踵(きびす)を返し、

スカートの裾をひざ上丈まで折ると、駅前のカラオケ屋に消えていくのです。

私にとって、同年代の友人たちは、

かなり幼く感じられました。そのため、常に孤独を感じていました。



私の味方になってくれるのは、

ベランダにしょちゅう遊びにくる、ツバメたちだけでした。

何年か前、急に、私のベランダに巣を作りはじめたのです。

最初はピーチクやかましくて、不快でたまらなかったのですが、

向かいにマンションの建設がはじまってからは、

ツバメの巣作りなんて、かわいらしいものだと感じるようになりました。

マンション工事の騒音は、ノイローゼになるほどやかましいのです。

そして眼前の通学路は、幼稚な笑い声があとを絶えません。

そうした喧騒に振り回されていると、

ツバメの巣作りは、逆に私の癒しに変わってきたのです。


ツバメたちは、

次から次へと、何かを巣に運んできます。

それはたいてい、木の枝や干草のようなものですが、

時々は、違います。

キレイな貝殻やガラス玉などを、どこからともなく運んでくるのです。

そして、まるで私を慰めるかのように、

それらをベランダに落としていくのです。


「ツバメはいいなぁ。

 私もツバメみたいに、自由に空をはばたきたい。」

まるで月並みな唱歌の歌詞ですが、

私は心底、そう願って止みませんでした。


『自由の空へ』

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