エピソード22 『イエスの子らよ』
粉袋を運びにいくと、おばあ様とエルサがいたわ。
「どうしよう…。これ?」
私は、エルサとおばあ様に、もらったハンカチを見せた。
「あはははは!
おばあ様の言ったとおりになったわね!」エルサがいたずらっぽく笑う。
「どういうこと?」
「うふふ。アタシ、マリアンヌに粉当番、任せちゃったでしょ?
あれ、おばあ様からの入れ知恵だったのよ。」
「おばあ様!?」
「ひっひっひ!こういう展開になるじゃろうと思ってな。
恋の始まりなんて、いつの世も同じもんじゃて。」
「恋!?」
「恋じゃろて!」
「恋じゃないわ!
ありがとうって言われて、ハンカチ返してもらっただけよ。」
「そのハンカチが白かったなら、恋ではない。
だがそのように柄付きなら、恋なんじゃよ!ほっほほ。」
「どうして?血で汚れちゃったのよ。私のやつは。」
「ニブいわねぇ!それは言い訳なのよ。
あなたに贈り物をする、口実ってやつ!」エルサが言った。
「どういうこと?」
「いい?あなたのハンカチの汚れが、落ちないとしてもよ?
それなら、同じような白いハンカチを、買ってくればいいじゃない?
それなのにわざわざ、5倍も値段のする高級品を、買ってきたのよ?」
「高級品なの?これ。」
「あなたみたいなお嬢様にとっては、高級品じゃないんでしょうけど、
貧しい修道士からすれば、一世一代の買い物よ!」
「どうしよう…」
「どうしようってあなた、
あなたは彼のこと、好きじゃないの?」
「好き?好きかどうかなんて、わからないわ。」
「でも、肩に担いでて、イヤな気はしなかったんでしょ?」
「それはそうだけど、あのときは夢中だったし…」
「まぁ、戸惑うじゃろうな。それも乙女の常よ。」
頭の悪い私のために、エルサは力説してくれたわ。
「いい?じゃぁ整理して考えましょう。
まず聞くけど、あなた、恋がしたいの?私はしたくないけど。」
「恋…。してみたいわ。いつかは。
腕を組んで、パリの街を歩いてみたいの。」
「プププ。思いっきり月並みね!」
「もぉ!笑わないで!」
「ごめんごめん。
それじゃ、2つ目の質問よ。
その腕組む彼氏を、あなたはどうやって決めるつもりなの?
あなたが恋する男は、どういう男なの?」
「それは…わからないわ。
だって私、まだ恋ってしたことないもの。」
「そうよ、正解。あなたにはわかんないのよ。
だったら、よ?
最初の恋くらいは、相手の誘いに乗っかるしかないんじゃなくて?
そうじゃないとあなた、お婆ちゃんになったって恋がはじめられないわ。」
「…そうね、たしかに。」
「いいんじゃない?修道士。
前に言ったでしょアタシ。
恋をするなら、修道士か庭師がいいのよ。」
「かといって、
修道士と修道女の恋は、難儀じゃなぁ。障壁が高すぎる。
まぁ、だからこそ燃え上がるんじゃ!良いなぁ、青春!」
おばあ様、楽しそう…。
それにしても、
おばあ様と一緒にいると、おとがめされにくいみたい。しゃべっててもね。
みんな、目上の人には怒りづらいんでしょうし、
おばあ様、あんまり好かれていないから、みんな関わりたがらないのよ。
『イエスの子らよ』


