エピソード24 『イエスの子らよ』
それから5年が経って、
私は成人棟に移ることになったわ。エルサともお別れ。
エルサも翌年、成人棟にやってくると思ってたら、
あの子、そこで退院してしまったの。
エルサ、高学院に進んで勉強に励むんですって。
親友を失うのは寂しかったけど、でも大丈夫。
エルサに助けてもらって過ごす間に、友達も知り合いも、増えていったわ。
いつしか私も、イスの座面を張り替えられるようにもなったし、
イスだって作れるようになった。お料理も音楽も、できるようになったわ。
おしゃべりばっかりしてたけど、できるようになるのよ。それなりに。
テーブルマナーも、もううっとおしくは感じないの。
キレイな姿勢でお上品にやるほうが、ステキって感じるわ。
自分から、そうしたいって思うようになるの。
こうして人は、大人になっていくのね。レディになっていくんだわ。
17才のある日、
お母様から手紙が届いたの。
ビックリしたわ!私、お母様に捨てられたんだと思ってたから。
私お行儀悪いから、愛想尽かされて捨てられたんだと思ってた。
お母様からの手紙には、
一度修道院を出てきなさいと、書いてあったわ。
贈り物があるっていうの。
その贈り物が、とってもヘンなのよ!
「あなたが修道院を出発するとき、
城門から1マイル(約1.6km)離れたら、そこで真っすぐ後ろを振り向きなさい。
それが、母からの贈り物です。」
ですって。
何のことやらサッパリよ。
やっぱりお母様、私には何も贈りたくないんだわ。嫌いなんですものね。
でも私、お母様の言いつけは守ることにしたの。
もう怒られたくないし、私ももう、グズる子供じゃないわ。
でも、1マイルっていうのはよくわからなかったから、
馬車の御者(ぎょしゃ)さんに、合図してもらうことにしたの。
出発の日、空はよく晴れていたわ。
2つか3つは雲が浮かんでて、羊の親子が仲良くお散歩しているみたいだったわ。
悪くない旅立ちよ。
馬車はちゃんと城門で待ち構えていて、私を乗せてくれたわ。
私は、7年前よりもずっとおとなしく座って、馬車に揺られていた。
馬車は相変わらず、パッカラパッカラ言っていたけどね。
5分くらい経ったかしら。
馬車の御者さんが、私に振り向いたの。
「お嬢さん、そろそろ1マイルほどかと思われますが。」
私は、それを合図に振り返ったの。
うわー!!!
驚いたわ!
7年前の私みたいに、はしたない声出しちゃったけど、
でも、しょうがないじゃない!驚いたのよ!
振り向いた先に見えたのは、
なんと、あのポストカードと同じ景色だったの!!
海に浮かぶ、美しいお城よ!幸せそうな羊の親子のオマケ付きで!
7年前に見たときより、もっともっと大きく見えたわ!大迫力よ!
「まぁー!なんて美しいの!!
これって夢なの?そうじゃないわよね!?
ちょっと、御者さん?
少しでいいから、あの城に寄ってくださらない?ほんの少しでいいの!」
そしたら御者さん、何て言ったとおもう!?
「わははは!何をおっしゃるんです!お嬢さん?
あなたは今、あの修道院から出てこられたばかりではありませんか!」
2016/01/28 完筆
『イエスの子らよ』


