エピソード3 『イエスの子らよ』
今度は、見張りの神父さまが私に言ったわ。若いわね、ここの神父さま。
「長旅ごくろうさま。
疲れているとは思うが、まずは礼拝堂でお祈りをしなさい。
それが済んだら、温かいオムレツを出してあげよう。」
「お母様よりは、優しい人ね。」私はクスっと笑って言った。
「君のお母様も、優しい人ですよ。」
「そんなわけないじゃない。
一度も振り返らずに、行っちゃったわ。」
「それが、優しさなのです。
お母様がなごり惜しむ姿を見せたら、君はもっとなごり惜しくなる。
お母様が涙を見せたら、君はもっと泣きたくなる。
そっけないほうが良いのです。別れというのは。」
神父さまの言うことは、
当時の私にはまだ、あまりよくわからなかったわ。
神父さまは、大きな木の扉を開けた。
うわぁ!
とても大きな教会だったわ。私の町の教会の、3倍くらいはある。
天井がとても高いの。窓から差し込む光は、まるで天国への階段みたい。
でも、装飾はそっけない。お金が足りなかったのかしら?
でも、「質素ね」とか言ってはダメなのよ。修道院では失礼のないように振る舞わなきゃ。
私は祭壇までいくと、ひざまづいて、イエス様に祈りをささげた。
「さぁてと。
神父さま、オムレツはどこ?」
「ここからは修道女に引き継いで、寄宿舎を案内させよう。
オムレツは、食堂で食べられるはずだよ。
…それと、
私は神父ではありませんよ。一介の修道士にすぎません。
男性の修道者のことを、修道士というのですよ。
ではこれで。ごきげんよう。」
教会には、前方にも出入り口があったわ。
そこに、修道女のおばさまが待ちかまえていた。
「あなたがマリアンヌね?ようこそおいでなさって。」
「どうもありがとう。」
「あなた、お年はいくつなの?」
「10才になりました。」
「そう。なら幼年棟ね。
…10才ですって!?ずいぶん幼く見えるけど、
あなた、栄養は足りているの!?」
「そうなんです。私、オムレツが足りていないんです。」
「まぁ!それは大変だわ!
すぐにお食事の支度をさせますけど、
まずはお部屋に荷物を置いて、着替えてらっしゃい。
修道院では、服装が決まっているのよ。」
『イエスの子らよ』


