エピソード45
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- 2023年2月1日
- 読了時間: 5分
僕は、次の宿を探しはじめた。
幸いにも、この辺りには宿がたくさんあったよ。
中庭の美しい宿に引き寄せられて、その敷地に入った。
東屋のようなモノの下で、のんびり涼んでいたスタッフに声を掛けて、
一泊の値段を訊いた。
ちょっと高かったけれど、
「まぁ、たまにはいっかぁ♪」と思って、ココに決めた。
緑多き中に、極彩色のマットやクッションを散らした中庭を、
幾つものコテージや母屋が、囲んでいた。
くつろぎやすそうな、のんびりした雰囲気の宿だった♪
オーナーがベドウィンなのかもしれないね。
ベドウィンってのは、中東の砂漠の民だけど、
日本人みたいに、地べたに直接座ったり寝転がったりするのが好きなんだよ。
僕は、部屋に荷物を置くと、
ビーチに朝食を摂りに行った。
この辺りは、
車道側には宿が立ち並んでいて、
ビーチの波打ち際にはレストランが並んでいて、
宿とレストランの間に、一本のメイン通りが出来上がっていた。
僕は、同じような雰囲気のレストランの中から、
値段が手頃そうな店を選んで、中に腰掛けた。
モーニング・セットの中から、好みに合いそうなのを一つオーダーすると、
潮風を浴び、波音を聴きながら、
料理が出てくるのを待った。
一匹の猫が、フラっと僕のひざの上にやってきて、
ヒマ潰しのお手伝いをしてくれた♪
そう、ヒマなんだよ。
海外のレストランってのはたいてい、
料理が出てくるまでにやたら時間がかかるね!
モーニングセット1つに、30分くらい待たされたりする。
イスの数は50くらいもあるけど、
たぶん、コックは1人しかいないんだろうさ。助手が1人か1匹はいるだろうけど。
閑散期(時)はすっごい閑散するんだろうから、
うかつにコックを何人も雇えないんだとおもうよ。
まぁ、ビーチリゾートに来る旅行者なんてのは、
日焼けと読書と水掛け遊びしかやることないからさ、
30分待たされても大して困りもしないんだろうさ。怒りもしないんだろうさ。
だからこんなルーズな商売が成り立っちゃう。
すぐに食べたいときなんかは、
旅行者向けの店じゃなくてジモティ向けの店に駆け込んだらイイよ。
ジモティ向けの店は、30分も待たせたりしないさ。
どこの国のジモティも、日本人よりはずっとのんびり生きてるけど、
かといってリゾート客よりは忙しいからね。
運ばれてきたモーニング・セットは、
なんとも豪勢だった!
メイン・プレートには、
クレープほどに薄く、可愛く盛り付けられた3枚の卵焼きに、
ポテトやトマトなどの野菜が、たくさん添えられていた。
…それだけでも、僕には豪勢に感じたのに、
更に、ナンのような薄いパンが載ったお皿と、
野菜スティックが盛られたお皿、
それを付ける、クリームチーズみたいなモノのお皿が並んだ。
そして、アイス・カフェオレ。
ビーチリゾートによく行くような旅行者には、
恐らく、見慣れたメニューなのだろうけどさ?
そんな、「ビーチリゾート・デラックス」が、
エジプトのダハブでは、
たったの200円で食べられてしまうのさ(笑)
この物価の安さは、確かに、
海の美しさにあまりこだわらないビーチ・リゾーターなら、
病み付きになってもおかしくはナイだろうなぁ。
…かといって、200円って価格は、
現地の物価から考えれば、ぜんぜん安くも良心的でもナイんだよ?
現地物価は日本の1/10くらいの国だからねぇ。日本で考えたら、2,000円ってコトだよ!
いくら卵焼きが3枚も載ってたって、
モーニングプレートに2,000円も取る店、許せるかい?
そんなヤクザな商売してんのさ、彼らは。
だから、モーニング客が僕1人しか来ないとしても、
店は潰れたりしないんだよ。
チャラいウェイターと無口なコックとふてぶてしい猫を養うくらい、
どってことないんだ。
だから、そんな同じようなだらだらした店が、10も20も軒を連ねるのさ。
ビーチリゾートってのは、そういう場所なんだよ。テキ屋の集まりさ。
まぁ、ビーチリゾート特有の雰囲気も、悪くはないよ。
たまにはノンビリ、
こういうところでカフェオレでもすすりながら、
何もしない時間を過ごすのも悪くない。
朝食を終えると、
僕は、いったん宿に戻った。
今夜のシナイ山ツアーの予約を、押さえておく必要があったからさ。
…エジプトはメンドクサイ国で、
1Dayツアーの料金さえも、
交渉によって上がったり下がったりする店が、多かった…
「60ポンドで参加した」というヒトの話を聞いていたから、
それを目標に交渉したけれど、70ポンドで限界だった。
他の宿やツアー会社を訪ね歩けば、
60ポンドまで下げることも可能だったろうけど、
僕はもう眠かったから、そこで妥協したよ。
…なにしろ、10ポンドって、200円だからさ(笑)
僕は、自分のコテージに入ると、しばらく爆睡した。
昼下がり…3時頃まで、眠っていた。
起きると、
また、やることが無かった(笑)
宿の中庭では、
数人の宿泊客たちが、
極彩色のマットやクッションに絡まりながら、
本を読んだり、音楽を聴いたり、昼寝したり、愛を囁きあったりしていた。
僕も、彼らと同じように、
音楽を聴きながらゴロゴロ過ごした。
一時間もすると、それにも飽きて、
近くの土産屋通りを散歩してみた。
…相変わらず、
壁画をモチーフとしたパピルス・アートや何かが、
腐るほど売られていた。ダハブには遺跡も壁画もナイのにね。
けれども、
エジプト土産とは関係のナイ絵を描いて売る、
「新進気鋭の絵描き」みたいのも、居たよ。
町を歩いていると、
驚いたことに、
アスワンの小高い山のてっぺんで2時間ばかしも語らいあった、あの女の子と、
再会した!!
一緒に夕飯を食べながら、
その後の様子やなんかを、のんびりと報告しあった♪
彼女は、明日の夜にシナイ山に登るらしく、
ヒマでヒマで困っているらしかった(笑)
ダハブのビーチは、海水浴場ではナイから、
ダイビング関連に手を出すヒト以外は、
海を眺めながらノンビリする他に、するコトがナイんだ(笑)
『導かれし者たち』



