top of page

エピソード49

  • 執筆者の写真: ・
  • 2023年2月1日
  • 読了時間: 2分

…地獄の板ばさみだった…


体力的には休憩したいのに、立ち止まると余計に寒さが増すモンだから、

神経をマヒさせる意味でも、歩き続けるしか、なかった…。


ようやく空が白み始めて、

視界が確保され始めたコトだけが、 唯一の救いだった…!


僕は、生まれたての小鹿みたいなヨロヨロの足取りで、

シナイ山の山道というより、むしろ三途の川の河川敷辺りを、

更に1時間ほども歩き続けて、

ようやく!

よーーーうやく!

山小屋の立ち並ぶ場所に、辿り着いた…!!!


指定されていた番号の山小屋を見つけて、

なんとか、

なんとか、

そこに転がり込んだ…!!!


その山小屋のマスターは、

瀕死の小鹿など見慣れているらしく、

「コーヒーでも飲むかい?10ポンドだ。

 それとも、毛布をレンタルするかい?そいつは一枚30ポンドだ。」

と、斬鉄剣よりも容赦ない商売人の笑顔で、

淡々と、言った…


…僕は、

コーヒーを一杯だけ、注文した。あまりの寒さに耐え切れなくてさ。

小さなマグカップに注がれた、安っぽいインスタント・コーヒーは、

ほとんど、「焼け石に水」だった。「三途の川に、マッチ」だった。

…むしろ、

尿意を誘発しちゃって、

かえって僕をユウウツにさせた(笑)


1時間もして、

同じ車に乗っていたメンバーが揃うと、

僕らは、山小屋から出ていくよう、促された。



…???

まだ4時半で、

サンライズにはずいぶんと早過ぎた。

なぜ、こんなに早く小屋を追い出されるのか、

理由は、サッパリ、ワカラナイ…!!



周りを見渡してみると、

他の旅行者たちは、ちゃーんと防寒対策をしていた。

アタリマエだ(笑)

ハダシにサンダルで登ってきたのは、僕しか居ない(笑)

それ以外にはきっと、あのラクダ引きの少女だけだよ。

毛布の一枚でも欲しいところだったけど、

あの山小屋のマスターに30ポンドも払ってレンタルするのは、

とてもシャクに触るから、意地でもガマンしようと思った。

「ココまで耐えたんだから、もう大丈夫だろう♪」

と、思った。

そう信じて止まなかった…



『導かれし者たち』

bottom of page