エピソード6 『真理の森へ』
- ・
- 2023年3月19日
- 読了時間: 3分
エピソード6
翌日も、午前中から街歩きに繰り出しました。
どこに行きたいわけでもなく。とにかく、昨日と同じように、美しい街を歩きたかった。
おや?
昨日にもまして、街には人が少ない…
人が少ないだけではなく、シャッターの閉まった店も多い。
どうしたことだろう?今日は日曜日だというのに。
そうなのです。
日曜日だからこそ、人が少なく、店も開いていないのです。
キリスト教の盛んなフィンランドにおいて、
日曜日というのは、休息日であるらしい。
国民は皆、ショッピングなどしないで、お家でのんびり過ごすのです。
加えて、海外旅行者や旅行者向けの店も多くないので、
首都ヘルシンキであっても、日曜は静まり返るようです。
そこで私は、今日はトラムに乗ってみることにしました。路面電車です。
トラムとは、
役割的には、日本の地下鉄と同じようなものでしょう。
細かい駅を、何本もの路線が結んでいます。
しかし、路上にあるぶん乗り降りがたやすく、また、風情があります。
トラムの停留所には改札口というものがなく、
かといって、トラムそのものにも運転手以外のスタッフがいません。
扉はいくつかあり、後ろの扉から乗って降りれば、
運転手と接触しないまま、去っていくことができてしまう…
キセル乗車は多発しないのでしょうか?
どうやら、しないそうです。
フィンランドの人々は、別に誰かに監視されていなくても、犯罪を犯したりしないのです。
日本も治安の良い国として有名だけど、キセル乗車のような軽犯罪は多い。
するとフィンランドという国は、日本よりもさらに、安全で誠実な国なんだ。
そしてその安全を支えているのは、
警察でも車掌さんでもなく、国民一人ひとりの誠実な振る舞い。
私はどんどん、フィンランドが好きになります。
何も考えずにトラムを乗り継いでいると、
いつの間にか、フェリー乗り場に行きついていました。
大きな豪華客船。ロシアやエストニアに向かうのかもしれない。
船体に描かれたムーミンが、私に優しく微笑んでいました。
そうか。フィンランドはムーミンの生まれ故郷です。
トラムは勝手にUターンをし、私を中心駅のほうまで送り返してくれました。
そのまま宿まで乗りこんでしまっても良かったけど、
私は敢えて、中央駅のそばでトラムを降りました。
そしてまた、閑散としたルネサンス街を歩き、マクドナルドで休憩を取りました。
…マクドナルドなんて私は好きではありません。日本ではほとんど行かない。
けれど、手ごろな飲食店があまり無く、地の利に疎い今の私には、
都合の良い避難場所と言えました。
私は温かいカフェオレを注文し、これまた小洒落たテーブルに腰掛けて、
若者たちの様子をぼーっと眺めていました。
マックのカフェオレの使い捨てカップすら、洒落たデザインをしています。
若者たちの身なりも、おおむね、品が良く感じられます。
ファーストフード店といえども、大声でバカ騒ぎするような人たちはおらず、
iPhoneで音楽でも聴きながら、1人で黙々とコーヒーを飲んでいます。
ただ、パンキッシュな格好をした女の子が、ちらほら目立ちました。
聖歌よりもパンクを好む反抗的な若者も、居ないわけではないらしい。
『真理の森へ』



