エピソード7 『沈黙のレジスタンス』
そして2年ほどの月日が流れた。
僕は12歳になり、デニーは今ごろ、14歳になっているはずだった。
デニーに残された期間は、あと1年間。
珍しく監督が、僕に声をかけてきた。それも、神妙な面持ちで。
「おぉ、エニス。大変なことになった!
ワシがうっかり、仕事仲間に口をすべらせたからじゃ。
地下都市の発掘をしたがっている、地元少年が居るとな。」
「それが、どうかしたんですか?」
「ラーマ法王が、内密で発掘調査に乗り出そうとしている。
国に手続きせずに、内密でな。
観光地開発を名目にするつもりらしいが、それは違う。おそらく。」
「何なんですか?何かほかに、目的があるんですか?」
「隠ぺいじゃよ。」
「隠ぺい!?」
「文献の伝承によれば、
地下都市に隠れ住んだのは、
ラーマ帝国からの迫害を受けた、原初キリスト教徒の面々。
ラーマ帝国もキリスト教じゃが、『原初キリスト教』とラーマ教義は、似て非なるもの。
ラーマ法王によるキリスト教は、カネ集めじゃ。
それに反対する『原初キリスト教』は、弾圧され、迫害されてきた。
地下都市が発見されると、そのラーマ帝国による非道な迫害の歴史が、
世界中に明るみになる恐れがある。
じゃから、
ラーマ法王自らが発掘を指揮し、不都合な証拠をあらかた隠滅する気なのじゃろう。」
「どうすればいいんですか!?」
「ラーマ法王の手先ではない者たちが、先に掘り起こすしかあるまい。
そして先に、真実を報道する!」
「お願いします!監督!」
「そうもいかんのじゃよ。
ワシは遺跡発掘のエキスパートではあるが、
あくまで、国に雇われて発掘指揮をとっているにすぎん。
ワシの独断で新たな遺跡発掘は行えんし、その資金も出せんよ。
発掘労働者たちに、莫大な賃金を払わねばならんからな。
国もまた、どこにあるかもわからん遺跡の発掘に、カネを払うことはせんじゃろうて。」
僕は思った。
「僕が、デニーが、先に掘り起こすしかない!!」
『沈黙のレジスタンス』



