第28節 『世界のはじまり ~花のワルツ~』
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- 2025年8月27日
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第28節
翌日。2人はまたモモに会いたいと思い、井戸まで歩いていった。
そこにモモの姿はなく、2人は落胆した。ノアは妙にモモのことが気になった。色々な要因があったが、その1つとして、モモの姿はコーミズを旅立った朝に夢に出てきた天女に、どことなく似ていた。「手をつなぐことを恐れないで」と告げた天女だ。しかしその姿とモモが似ていることを、ノアは思い出せてはいなかった。なんとなく、懐かしいような気がしただけだ。
井戸の道は目抜き通りとなっており、たくさんの店が並んでいた。コーミズでは見たことのない食べ物がたくさんある。食べ物ではない道具や、色々な服も、髪飾りもある。何なのかわからないものもたくさんだ。
楽しいな、と2人は感じた。様々なものに興味を引かれる。しかし、当然ながらどれにも値札が付いていた。「5」「10」「12」と書いてあるのはつまり、5ゴールド、10ゴールド、12ゴールドと引き換えだよ、という意味だ。
今日の宿代と飯代に12ゴールドほどを払うとして、少し何かを買うお金があると思える。
わたしたちもお金で珍しいものが買えるのか!ワクワクしてしまう。
キラキラ光る髪飾りに、ノアは妙に目を惹かれたが、装飾品を買っている場合ではないと自制する。何か買いたいな、と2人は思う。その口実を考えていると、旅を続けるためにはナイフやカバンがいるのではないか、と思った。
道を引き返し、ナイフやカバンの店を覗いてみる。すると、ナイフは10ゴールドもし、カバンは15ゴールドもするのだった。今すぐにそれに飛びつく余裕はないな、と冷静な2人は察した。
2人は通りの茶屋に入り、昼ご飯を食べながら話をした。
テーブルに全財産をパラパラと並べながら話をしていると、そんな無防備な仕草を見て、その店の小間使いは「おや?旅の人だね?」と2人に声をかけた。
小「おカネっていうのはね、そんな無防備に見せびらかすもんじゃないんだよ?持ってっちまう奴がいるんだから!気を付けて!」
ユ「あ、はい!」ユキはすぐにその話を察した。お金とは貴重品であり、メロンや何かを買うためには他人から奪いたい者だって少なくないはずだ。
この人は優しい人だろう、と2人は察した。
ユ「旅の道具として、ナイフやカバンを買いたいと思っているんですが・・・」
小「ふむふむ。そりゃそうだね!あっしは旅なんぞしたことないけど、それは必需品だってわかるよ」
ユ「持ってるお金はこれがすべてなんです。今日や明日の宿のお金もとっておかないといけないし、きっとナイフやカバン以外にも買っておいたほうがいいものがあるんじゃないかなと思って」
小「それで全財産だって?そりゃ心もとないね。ちゃんと働きなよ。それだけのことさ」
ノ「そうなのですが、わたしたちコメ作りも機織りもわからないのです」
小「それじゃどうやってこのカネを稼いだんだい?」
ユ「森で魔物を倒してきました。昨日1日で、50くらい貯まりました」
小「へぇ!頼もしいもんだね!
農業や機織りよりも、その金策のほうが稼げそうだよ」
ユ「そうか、魔物退治をしたほうが、コメとか機織りよりも稼げるのか」
小「でも、毎日毎日魔物とやり合うなんて、心臓が縮んでしまうんじゃないかい?
魔物倒したほうが稼げるんだろうが、あんたたち、コメ作りか機織りか、それか牛の乳搾りでも習ったらいいさ。下手でも15ゴールド貰えるんだからさ」
ノ「下手でも、貰えるのですか!?」
小「あぁそうだよ。社会主義の国だからね。みーんな同じお給金。料理作るおかみさんも、小間使いのあっしも、同じお給金だよ」
ノ・ユ「へぇ!」それはいい!と2人は思った。
ユ「それは素晴らしい仕組みですね!」
小「素晴らしいともかぎらないよ。
何やったって15ゴールドのお給金貰える。するとさ?怠けてばっかりの奴もいるんだ。それでも15ゴールド貰える。するとさ?働き者は損した気分になって、ガミガミ怒りだすよ。
それにさ、料理つくってるおかみさんも運んでるだけのあっしも同じお給金ってのは、なんか申し訳ない気持ちになるよ。料理つくる人のほうが大変なんじゃないかなって」
店「こらカヤ!おしゃべりばっかりしてるんじゃないよ!」店主は小間使いに雷を落した。
小「へぇぇ、すんません!」
ノ「ごめんなさい。わたしが質問したから・・・」
ノアはおかみさんの元へ謝りに行った。「彼女が悪いんじゃないんです。わたしたちが質問をしたからです」と。
店「いやいやわかってんだよ。いつまでもしゃべってるなって言いたかっただけさ。混んでる時間だからね」
怒っているが、怒っていない。人の感情とは複雑なものだ。



