第34節 『世界のはじまり ~花のワルツ~』
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- 2025年8月27日
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第34節
2人は肩を落としながら、来た道を歩いて戻った。
路地が開けたとき、東側からびゅーっと風が吹いた。かすかに潮の匂いがする。
ノ「あっちに海があるかも?」
ユ「そうか。海に寄ってみよう」
しばらく歩くと海に突き当たる。
ノ「わぁ!」例のクモのような舟が幾つか浮かんでいる。
2人はダメ元で、舟の手入れをする男たちに「舟は幾らですか?」と聞いてみる。
「他所者だろう?舟を売ったりはしないよ!」とやはり門前払いを喰らってしまうのだった。
ユ「じゃぁ、買うんじゃなくて乗せてもらうのは幾らですか?」
男「舟に乗りたいだって?小島の薬草でもとりにいくのか?」
ユ「あ、いえ。えっと、もっと遠くに行きたいのですが・・・」
男「今はもう、遠くの海なんてよっぽどのことでもない限り出たりはしないよ」
ノ「そういえば、漁はもうしなくなったとか聞いたわ」
2人は諦めて、男から離れた。海を見ながらぶらぶらと歩く。
すると、立て札を見つける。
『おたずね
航海の邪魔をする凶悪なトビウオを退治されたし!
夕刻に多くの姿を見かける。
絶滅に追いやった者には報奨金200ゴールド也』
ユ「これだ!」
ノ「まさか!」
ユ「凶悪なトビウオってあの魔物のことだろう!
僕らはあの魚を倒せる!この村の人たちは戦いが苦手なんだろうが、僕らは倒せる!」
ユキは先ほどの男の元に駆け戻った。
ユ「立て札を見ました。僕ら、あの凶暴なトビウオを倒せます!
舟さえ出していただければ、退治してみせます!」
男「えぇ?魔物が襲ってくるのに舟を出せっていうのか?」
ユ「ずっと伏せていてくれればいいです。伏せていれば突撃を喰らうことはほとんどないはずですから。
舟さえ、沖に出してもらえれば」
男「まぁトビウオを退治してくれるっていうんならありがたい話だがな」
話はついた。
男はマーカスと名乗った。
今日は武器を持っていない。翌日、出没が増える夕暮れに向けて、マーカスは2人を乗せて、沖にバンカーボートを出してくれた。
ユ「やっぱりこのどっしり感は頼もしいなぁ!」イカダとは大違いなのだった。
沖に出ると、男は何かの干し肉をタンタンと棒で叩きはじめた。
マ「肉の匂いがするとトビウオは寄ってきやすいのさ」
すると案の定、とつげきうおの飛来が始まった!この舟を狙って飛んでくる!
ユキはとつげきうおの戦闘の経験値が先日より格段に増えたわけでもないのだが、男が見ている手前、胸を張ってヤリを構え、迫りくるとつげきうおに突き立てた!
ザシュっ!
とつげきうおをやっつけた!
マ「おぉ、すげぇなあんちゃん!」
ザシュっ!
ザシュっ!
次々と飛来してくる魔物を、ユキは華麗にやっつける。
ピシっ!
ユ「あっ!」しかし正確に仕留められないものもある!
マ「ひぃぃぃ!」
しかし、半死で舟の上にのたうち回るとつげきうおを、ノアが短剣でえいやとトドメをさす!
森での戦いで培った勇気が効いている!
マ「おぉ、すげぇ!」
そして、イカダと違い椀状の舟には、魔物が変化したゴールドのその多くが、見事落ち収まるのだった。
日没。とつげきうおの飛来は収まった。
マ「あんた、トビウオを倒し切ったのか!?」
ユ「わからない。日が落ちるとあの魔物は出なくなるようなので、たんに今日のところは巣に帰っただけかもしれません」
マ「そうか。どのみち引き上げだな」
マーカスは舟を浜へと引き上げた。
ノ「魔物が落していったお金は、わたしたちが貰っていいですよね?」
マ「そうだな。オレが寄越せって言えるもんじゃないだろ」
任務は完遂できていないのかもしれないが、とにかく魔物を倒してまた100ゴールドばかしが手に入った。
浜へと帰りつく。
ユキは思いたって、男に言った。
ユ「あのう、この依頼を引き受けたことを、村長さんに伝えておいてはくれませんか?
『北の海から来た2人がやってくれた』と」
マ「おぉ。まぁ手柄はちゃんと報告しないとな」
ひょっとしたら村長が2人を見直してくれるかもしれない、とユキは期待した。あわよくば、村の恩人には舟を恵んでくれるのではないだろうか。



