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エピソード101『世界樹 -妖精さんを仲間にするには?-』

  • 執筆者の写真: ・
  • 2024年5月2日
  • 読了時間: 5分

エピソード101


数日を経て、一行は次なる街に到着した。

またも大きな城下町だ。


―コナンベリー―

街は賑わっていた。民が興奮している、と言ったほうが良いだろうか。

その理由を、一行もすぐに理解する。

街の入口の広場には大きなテレビモニターがしつらえてあり、遠い国の出来事を鮮明に伝えている。町民の多くは足を止めてそれに見入っている。

町「この国はテレビジョンが普及している、数少ない工業先進国さ!」と町民は自慢気に言った。

ななやゆなにとって、テレビなどというのは別に珍しいものではなかった。住んでいたエンドールの国には、一家に一台どころかもはや一人一台に迫るほど普及している。しかし、考えてみると、エンドールを出てからの旅路ではテレビなど一度も見たことがなかった。テレビが普及している国は、そう多くないようだった。


さて、何をしようか。

情報収集と目的探しのために、一行は町をぶらつく。

せっかくなので大きなテレビを構える食堂に入って食べてみる。

客たちは食事の手もろくに動かさずに、テレビに見入っていたりもする。

ゆ「おぉおぉ、まるで子供みたいだ(汗)」とゆなが苦笑いしようとしたそのとき、ゆなもテレビに見入ってしまった!

なんと、そこには先日のダンスコンテストで仲良くなったまりんが、華々しく映し出されたからだ!

まりんは祖国のイベントか何かでもダンスを披露し、聴衆を沸かせていた。

な「まりんちゃんだぁ♪」4人は驚いた。


ア「テレビジョンってのはスゴイね!」料理を運んできた店主に、アミンは声を掛けた。

店「いやぁ良いことばかりでもないですよ!」

ア「えぇ?」

店「こんなふうにみんなテレビに見入ったら、いつまで経っても食事が終わらない。お客さんが回転しないと、商売あがったりですからねぇ」

たしかにそういう大人の事情もある。

店「いやいや、私が不機嫌になるばかりでもないんですから」

ゆ「と言うと?」

店「最近の、この国の重大事ですよ。

 テレビジョンはこの数年で一気に普及したんですがね、電気代をとても食うんです。電気ってエネルギーで動いていましてね」

な「知ってるー!」

店「電気を作るのは、簡単なことじゃない。

 でっかい設備を作って、大勢の人がその世話をしなければなりません。

 国は今、それを社会問題として頭を悩ませています。

 こんなギュウギュウな城下町には火力発電所なんて造れないんですよ。すると、国の田舎のほうに建てることになる」

な「遠くて大変ですね!」

店「そうじゃないんです。

 火力発電所っていうのは、事故と隣り合わせだ。

 その危険を、テレビジョンなど見ない田舎の人たちが被ることになる・・・」

ゆ「私たちの国でもよくある議論だわ・・・!」

店「田舎の人々を犠牲にしてテレビジョンに夢中になるって、人としてどうなんでしょう?

 『それは愚かだ!テレビを廃止すべきだ!』って声を荒げる人もいます。

 田舎から出てきて、家族をそっちに残してる人だって多いですしねぇ。

 だから国では近々、国民投票を行うんですよ。どっちにすべきかってね」

ア「政治家たちはどう言ってるの?」

店「最初は、『テレビジョンを廃止したら国力が衰退する!』って言ってましたけどね。

 最近は、『国民投票の結果に委ねればいい』って論調みたいですよ」

ゆ「まともな政治家みたいね」

キ「そうともかぎらないわ・・・」

ゆ「え?」



キキが「しばらくこの国の様子を見よう」と提案したので、一行はコナンベリーに滞在することにした。

幸い、酒場に行けば《WANTED》の貼り紙は多く、暇つぶしに事欠くこともない。

そして人助けがてらにこの件について意見を求めると、やはり賛否両論入り乱れているのだった。

・・・いや、「テレビを手放すことは出来ない」という論調が多いか。


世界樹に関する情報も魔王に関する情報も、かなり希少であることをもう実感した。それが得られないにしても次の目的のアイデアが要る。この街でやることが終わってから集め始めても遅いであろうことは、もう読めてきた。

人助けをしながら平行して、情報収集にも勤しむのだった。

するとある商人が面白い話をしてくれた。

商「魔王?そんなのは会ったことはないがね、昔の魔王・・・なんつったっけか、ハーゲン?そいつがのさばるよりもっと昔からこの地上にあった、という噂の建造物がありますよ!

ア「500年以上も前からある建物だって?」

商「500年どころか、5000年や6000年も前からあるんじゃないかって言う考古学者もいてね」

な「そんなに昔のお家、残ってるわけないよー!」

商「お家じゃないんだよ。ピラミッドって言うんだ。

 なんか大きな三角形でさ」

ゆ「大きな三角形?5000年前??まったくイメージが湧かない・・・」

商「そりゃそうさ!どこの町にもあるんならわざわざこんな話はしないよ。

 まぁ別に楽しい代物でもないんだけどさ。

 でっかい三角形の建造物だよ。ずーっと地球を見てきてんだ。

 それなら魔王のことだって知ってるかもしれんよ?ははは!」

キ「ピラミッドかぁ、懐かしいわぁ♪」

3人「え!?」

商「何言ってんだね!10歳のおじょうちゃんが知るわけもあるまい」

キ「あ、え?そ、そうね(汗)あはははは!」

ア「でも次の目的として楽しそうだね」

商「なんだって?ヤメといたほうがいいよ!

 ピラミッドは物騒な土地だと聞くし、砂漠の真ん中だから過酷なとこさ」

ア「でもおじさんだって行ったことあるんでしょ?」

商「私じゃないよ。私の友人の物好きなヤツがね。

 私はベルガラックばかり行商してるさ。親に連れられたからこうして行商できる。

 知らない街に旅行に行くのは100人に一人。

 冒険的な旅をするのは、さらにその100人のうちの1人。

 ピラミッドなんぞ行くのは、そう簡単なことじゃないのさ」

でも、今の自分なら行ける。4人は思うのだった。


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