エピソード113『世界樹 -妖精さんを仲間にするには?-』
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- 2024年5月2日
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エピソード113
ゆ「少しお話が聞きたいのです」とゆなは言った。
修「何のお話でしょう?」
ゆ「何なのか、よくわからないのですが、修道院という場所の暮らしに興味があります。興味がある、というのは失礼でしょうか?」
修「うふふ。失礼ということもないわ」ゆなのような人間は、数年に一人は訪れるのであった。
修道女は、院の様子を見せながら先導した。
ア「ここは何の宗教なの?ギュイオンヌの建築美術に似ているようだけど」
修「私たちは特定の宗派を持ちません。神も、救世主も、聖母の像も祀りません。
ただ修道の暮らしがあるだけです」
な「修道の暮らしって何をするの?」
修「畑を耕し、極力自分たちで食材を自給します。
服を織ったり、棚を造ったりも自分たちで行います」
ア「自給自足は修道院の基本だ」
な「ケーキはないの?」
修「うふふ。ケーキもありますよ。少しは。
砂糖は自給していませんが、町から買ってきます」
廊下には油絵が飾られてある。建物の柱は、人の手で彫刻が施されているように見える。
ゆ「ここには、芸術を楽しむ自由もありますか?」
修「えぇ、もちろん。私たちは芸術が好きです」
な「ケーキがあって、お描きが出来て、でも悪者もケンカもないの?」
修「そうです。まぁそういう感じの、静かな暮らしです」
な「いいなぁ」
修「でも修道院には、恋愛がありませんよ。
若い女性たちが、それに耐えられるのでしょうか。
耐えられる人もいます。致命的に受け入れられない人もいます」
修道女は廊下の窓を幾つか開けて換気の日課をこなすと、そのまま勝手口から外に出た。
建物の横手には畑が広がっている。人の姿が見える。
修道服姿の女性が、苗に向かってしゃがみこんでいる。横には少女が1人いる。
キ「あの子、天使だわ」キキがぼそっと言った。
な・ゆ「えー!?」2人は驚いた。普通の人間の少女に見える。背中に翼が生えていたりはせず、頭上に光輝く輪っかも浮いてはいない。
修「よくおわかりになりましたね!」
キ「妖精は天使の親戚だもの♡」
ア「僕はわからなかったけど(汗)」
一行は二人に近寄っていく。
修「実は・・・
この修道院の近くには、天使たちの住む里があります。
4人「天使の里!?」
修「シー!他言なさらぬようにお願いしたいのですが。
そこの天使たちもまた、人間の俗世から離れてひっそりと暮らしています。
しかし彼女たちも、少しは人間に慣れなくてはいけません。
そのために時おり、この修道院にやってきます。危害を加えない人間と、彼女たちは安心して交流を楽しみます」
2人の横まで来た。
キ「こんにちは♡わたしは妖精よ♪」
天「わわっ!」天使であるらしき少女は、色々な意味で驚くのだった。
ゆ「お邪魔しています」とゆなは大人の修道女に挨拶した。
な「何をしているの?」ななはしゃがみこんで、親しみを込めた笑顔で少女に尋ねた。
天「えーっと・・・」
代わりに修道女が答えた。
女「天使たちは強い癒しのチカラを持っています。
彼女たちが植物に手をかざすと、植物が速く大きく成長するのです」
な「お手伝いしてるんだぁ♪」ななは少女の頭をなでた。
天「えへへ」少女は嬉しそうに照れた。
女「天使たちは普通に、畑を耕したりじゃがいもを掘り起こしたりもしますよ。
人としての生活をし、人としての苦労をします。
癒しのチカラが使えるからといって、ずっと手をかざしていればよいわけではありません」