エピソード118『世界樹 -妖精さんを仲間にするには?-』
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- 2024年5月2日
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エピソード118
夜、眠る前にミカエルは再び一行をテーブルに呼んだ。
ミ「皆さん、次はどちらへ?」
ゆ「世界樹というところか、または魔王の存在を追っています」
ミ「そうですね。世界樹を目指すのでしょう。
そして、世界の真実を暴きたいのでしょう。
さらに東に進んでください。海沿いまで進みます。
北の山の先に、世界樹は潜んでいます」
ゆ「本当!?」
ア「初めて、世界樹の具体的な場所に関する情報だ!」
ミ「あなたがたは、世界樹の背中が見えてきました。
しかし・・・そこからが簡単にはいきません。普通なら。
海沿いまで出てください。そして人魚を探してください」
な「人魚!?」
ゆ「人魚って、マーメイドのこと!?」
ミ「はい。
今ご提供できる情報はその程度でしょう」
翌日の昼前、一行は里を出ることにした。
民の多くが入口まで見送った。
そしてミカエルも出てきて、母親のような表情で言った。
ミ「ななさん。もしあなたが・・・
いつか、『居場所がない』と悩む日が来るようなら・・・いつでもここにお越しください」
な「ありがとう!」
一行はまず、修道女を修道院に送り届けた。
そして、ようやく見えてきた世界樹を目指して、さらに東へと向かった。
ゆなは、奇妙なことを痛感していた。
「自分は何も知らなかったんだ!」と。
ゆなはそれなりに頭の良い人間であった。勉強をしてきたし、ニュースを見ていたし、社会常識もある。しかしそんな自分でも知らない土地が無数にある。
そして、地図にすら載っていない村や建物が存在するのだ。ガイドブックに載っているはずもなく、地元の人の噂話にも登場しない。
そこに訪れることの出来る人間は非常に特例で、しかし運だけが解決するものではない。信心深く神に祈れば連れてきてくれるのか?違う。
一体この体験にはどれほどの価値があるのだろう!?考えれば考えるほど、途方もない。
たとえばRPGの勇者たちは、伝説の剣なるものを宝箱の中から見つけて興奮するという。しかし私が見つけたこの里は、私が見つけたこの純粋な瞳たちは、ひょっとしてその伝説の剣以上の宝物なのではないのか!?
RPGをプレイする者はほとんどがその伝説の剣を入手する。しかし旅人はどうだ?冒険者はどうだ?
一体、100万人の冒険者のうち、天使の里に招待された人間は何人いたというのか!?せいぜい2組か3組なのではなかろうか!?
ゆなはRPGにあまり興味がなかったが、彼女はたしかに今、冒険をしている。
そして今、誰よりも冒険を楽しんでいる。
ななも大体同じようなことを思っているのだった。それを理路整然と言語化することは出来ないが、心の中はこのようなことで恍惚していた。今や、自宅で夢中で見ていたアニメやテレビゲームはどれも、陳腐に色あせてしまっているのだった。
アミンの場合、これは大体自分が思い描いていたとおりの冒険だった。
彼はこの世界に魔物がいることや、自分とは違う妖精がいることを知っていた。個性豊かな人間の街を渡り継ぐ中で異なる種族の者たちにも出会い、笑顔や思い出話を交換することは想定の内だった。
思い描いていたとおりに、思い描いていた以上の冒険だった。
3人はそれぞれに感慨に耽りながら、遠い目をしていた。
その心を見透かすかのように、キキはささやいた。
キ「冒険ってね、どこにでもあるのよ。
魔物なんていない惑星にも、冒険はあるの。
なぜって、言語や文化の違う生き物がいて、住み慣れない地形や気候があるから。すると悪意ある者が行く手を遮ったりしなかろうと、旅人それぞれに試練があるし、アクシデントに出会うわ。それに苦悩し乗り越えていくことが、誰にとっても冒険。ドラマ。魔物のいない惑星にだって、『冒険』はあるの♪」