エピソード136『世界樹 -妖精さんを仲間にするには?-』
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- 2024年5月2日
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更新日:4 日前
エピソード136
4人「やったぁ!!」
母「通常、世界樹へは高い山を越えて渡ります。
しかし実は、ルートはそれだけではありません」
ア「やっぱりあるんだ!」
母「この海から、山を潜って抜ける洞窟があります」
ゆ「そんな隠し通路があったなんて!
あ、でもすぐ近くを漁船とかが走ってますよ?どうして見つからないの?」
母「洞窟への入口は、干潮のときにしか姿を現しません」
キ「なるほど!!」
母「満潮のときには、入口は海に沈んでしまいます。
ごくわずかなタイミングでしか口を開けないため、人に見つかることはほとんどありません」
ゆ「月の満ち欠けが云々って、そういうことだったのね!」
母「次の干潮の際、あなた方を入口へご案内いたしましょう」
な「なんだぁ~、人魚さんの背中に乗って泳いで連れてってくれるのかと思った!」
母「場合によってはそういうやり方もあります。
しかしあなた方は馬車をお持ちのご様子。
馬車を同行させるには、水位が低い干潮時に入るほうがよろしいかと」
普通の人間では有り得ないルートでの世界樹への上陸。
一行は胸が震える思いだった!!
世界樹へと続く大洞窟は、馬車が通れるほど大きなものであることが不幸中の幸いだった。ここでいきなり馬車とお別れというのは何とも心もとない。
しかしそれ以外はとても難儀な、冒険のクライマックスを感じさせる難所であった。
一行は洞窟の侵入には免疫があるが、海と繋がるこの洞は湿気がすごく、足場が悪く、歩くだけでも煩わしい。
出発時は気づかなかったが、潮が上がれば入口が封鎖されるというのも恐ろしいことである!
洞窟というか、どうも山登りのごとく傾斜のある道程であった。
そして当然のことながら、多くの魔物が行く手を遮るのだった。
魔物の数が多く、戦闘回数が多いと、策を講じてどうにかするような戦いでは無理がある。
ボス戦は雑魚戦より辛い、と思っていたが、状況によっては雑魚戦のほうが辛いことを思い知る。
まともに前衛を担えるのがアミンしかおらず、魔力への依存が大きいパーティーだ。
魔力が底を尽きたら全滅が確定である。こんなときを見越して座禅瞑想の習慣を作ってきたわけだが、そうは言っても限度がある。
その状況を察して、アミンは皆がなるべく魔力を使わなくて済むように懸命にオノを振るった。
そしてパーティーの先頭で盾となり続けた。
こんなに勇敢な10歳の戦士が、これまでの歴史上で存在したのだろうか?
「女の子には酷だけれど、汚れることを恐れないで!」とキキは皆にアドバイスをした。
ななは時に、襲いかかってくる汚い魔物を掴んで投げ飛ばした。背負い投げだ。洞窟は床も壁も鍾乳洞のツララでトゲトゲとしている。そこに投げ飛ばされれば魔物とてひとたまりもない!そして魔物は、柔道など知らない。少女の間合いに入っていって返り討ちに遭うなどと、想像もしていないのだった。そしてななの筋力は、昔柔道をやっていた頃よりもずっと強い。
このパーティには、実は武闘家がいたのだった!
ゆ「あ、あなたいつの間にかかなり強くなってない?」
な「え、そう??」
キ「魔物が強くなってきたからだわ」
ゆ「意味わかんないよ(汗)」
キ「うふふ。ごめん!
魔物って、強いやつほど人型のが多くなってくるのよね」
ア「そうだよ。魔族とか怪人とか!だから知恵もあって手強くなるだろ?」
キ「そうだけど、ななは柔道家なのよ♪
この子にとって、人のような形をして人のように襲い掛かってくる敵のほうが、反射的に投げ飛ばしやすいのよね!」
ア「そういうことか!」
キ「柔道の技を上手く使えば、他の魔物だって投げ飛ばせるはずなんだけどね。
ななは好戦的じゃないし、間合いを自分でコントロールするのは苦手みたい。襲い掛かられて窮地に追い込まれたほうが、反射的に投げ飛ばせるのよね」
な「よわいの?つよいの?」
ゆ「変な子(笑)」
ア「あはははは!」
キ「防衛のためだけに戦うんだわ。この子は」
ゆなは、魔力が枯渇してもなお《りりょくのつえ》を振るい続けた。杖とは名ばかりで、ヤリのような武器である。魔力を消耗することで、打撃ダメージが増幅される魔法使い用の武器だ。
普通は、マジックパワーが枯渇したらもうこの武器での攻撃はあきらめる。しかしゆなは普通ではなかった。あきらめなかった!あきらめて攻撃をやめるわけにはいかなかったし、冒険の中で少々は腕力を鍛えてきた自負があった。とにかくヤリなのだからそれなりの殺傷能力がある。そしてゆなはその頭脳をフル回転させて、魔物の弱点とおぼしき部位を徹底的に突き続けた。そうして腕力以上のダメージや足止めを与え続けるのだった。
人は、切羽詰まるとなお強くなる!
洞窟はグチャグチャとしていて、もはや人間が歩くような場所ではない。
仮に魔物がいなかったとしても、だ。
「体を鍛えときなさい」と繰り返し言い続け、ダンスをしたり重いコテを装着し続けたりさせたキキは、正しかった。そうして徐々に体を鍛えてこなかったら、少なくともか弱い人間女性のななとゆなでは踏破不能な道だったろう。
50時間あまりの寝ずの行軍の末・・・
一行は見事、世紀の洞窟を抜けきった!