エピソード140『世界樹 -妖精さんを仲間にするには?-』
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- 2024年5月2日
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エピソード140
長「ほっほっほ。
では質問しよう。
この樹は、世界樹は、何をしておる?」
ア「人々を、癒している?」
長「そうじゃ。長きに渡り、体を張って人間を癒してきた。
癒しだけでもないのじゃがね。体を張って人間を守ってきた」
な「どうして髪の毛をむしられるように葉っぱをむしられて、人間を助け続けたの?」
長「お嬢さん。君はなぜ《ホイミ》を使う?」
な「人を癒したいからです」
長「そうじゃ。でも、誰かが君の《ホイミ》をせがみまくったらどうじゃ?」
な「困っちゃう。クタクタになっちゃうよ」
長「じゃぁ、人に《ホイミ》を求められるのは嫌か?」
な「ううん。適度には、求めてほしいな」
長「そう。それと同じことなんじゃ。
木は何のために葉っぱを茂らせると思う?人間に使ってもらいたいんじゃ。食べてもらいたいんじゃ。
でも、葉っぱを乱獲しすぎたら?
木は枯れて絶滅してしまう。
木や葉や花や実を使うことが、悪いわけじゃない。大切なのは、『バランス』なんじゃよ。
木の再生能力を考慮しながら木を使い、自然と共生していくことが、大切なんじゃ。
人と自然が共生するというのは、そういうこと。
そんなの本当はとても簡単なことじゃったはずなのに、科学が発展しすぎると、欲望が暴走しすぎると、人間はそのバランスが保てなくなる。
人間は何百万年もの間、科学の発展が極まるたびに環境破壊や戦争を起こし、自滅してきた・・・。
人間は、同じような過ちを幾度となく繰り返しているんじゃ。6000年ほどの周期でな。
ゆ「愚かだわ・・・」ゆなはまた胸が痛くなった。
長「愚かじゃ。
しかし、幼子はみんな愚かじゃ。その時期を経て、成熟していく。
人も妖精も、成長するために生まれてくる。
その成長のために、誰かが体を差し出してやらねばならない。
母親が我が子に乳房を与えるように、な。
人や妖精が成熟するために、そこに何百万年の歳月がかかろうと、髪の毛をむしられても悲鳴をあげず体を貸す者が必要じゃ。
それが、世界樹。
もの言わず、世界の営みを見守っている」
ア「そういうことか・・・!」
アミンは、畏怖と感動の涙を目に浮かべて、わなわなと震えた。
長「ほっほっほ。
つまり、『世界樹を目指せ』という言葉の意味は?」
ア「人々のために体を差し出せってことだ!
弱音もはかずに、自己犠牲を担えってことだ!」
長「ご名答!賢い少年じゃ♪
おぬしはもう、この旅の中で、愛しい仲間たちのために崇高に体を張ってきた。
感涙するほど、素晴らしい自己犠牲をやっておった。
ア「でも・・・」
長「そうじゃ。
そうじゃよ。
おぬしは本当に賢い!
おぬしは本当に、目線が高い!」
ア「ななやゆなやキキのためだけじゃなく、見知らぬ奴らや憎たらしい奴らのためにも、体を張れるかどうか?
『世界樹を目指す』とは、そういう意味だ!!!!!」
長「素晴らしい!!!
じゃから、必ずしもこの樹まで訪れる必要もない。
そして、この樹に訪れたとて、その旅路は終わらない」
ア「なんて壮大な冒険に出てしまったんだ・・・!!!」
長「おぬしに、そのポテンシャルがあったからじゃな♪
アミンよ。
おぬしはロゴスに至るポテンシャルを持つ」