エピソード2『世界樹 -妖精さんを仲間にするには?-』
- ・
- 2024年5月1日
- 読了時間: 5分
更新日:2024年6月30日
エピソード2

ゆな
5月24日生まれ 23歳 元看護士
160cmくらい 45kgくらい Cカップくらい
ある日、母親に小言を言われたななは、またふらふらと家を出て、例の喫茶店に向かった。
今日も『水平線』の店主は静かににこやかに微笑み、バグパイプは軽妙に歌い、店内は世界各国のガラクタが世間話をしていた。この間よりは客が賑わっている。
なながカフェオレを飲みながら窓の外を眺めていると、不意にドアから声をかけられるのだった。
ゆ「ちょっとアンタ!こんなところで・・・
あれ?あ、ごめんなさい!!」
バタン!喫茶店のドアを気まずそうに閉じて、その女性は消えてしまった。
な「はぁぁぁぁ・・・??」
ななはポカンとした。
窓の外を今の女性が通り過ぎていく。こっちをじっと見ている。・・・?彼女は踵(きびす)を返す。
喫茶店のドアが再び開いた。
ゆ「それにしてもよく似てるわね!!」
な「はぁぁぁぁ・・・???」
ななは再び、呆気にとられた。
ゆ「ちょっといい?」彼女はななのテーブルに腰をおろした。
ゆ「ごめんね。あなた、私の妹にソックリなんだもの!」
な「あぁ、そういうことですかぁ(汗)」ななは人が善さそうに苦笑いを向けた。
ゆ「私はゆな。あなたは?」
女性を眺める。ななよりも数歳上か。社会人?長い黒髪は丁寧に手入れされ、学生ではないように見える。頭の良さそうな、素行の良さそうな美人だ。ななとは正反対の人種に見える。
ゆ「あんまりにも似てるんだから!
これはきっとシンクロだわ!そう思って引き返してきたの」
な「シンクロ・・・?」
ゆ「何か意味があるのよ。
で、どこが痛いの?痛み止めとのど飴なら今持ってるけど」
な「はぁ?」
ゆ「あはは、私看護師でね!元、だけど。さっきヤメてきたの。
何か病気で困ってるのかなと思って」
な「・・・。
お薬じゃ治せません。心が、痛いので・・・」
ななは自分の憂鬱の要因を、ゆなに打ち明けた。
ゆ「・・・なるほどね。
まぁお母さんの気持ちもわかるけどね。私の妹も『アイドルになりたい!』ってそればっかり言って、勉強もしないから、姉とて不安になるし。
でも、ななの気持ちもわかる。
私は看護の学校に行ったけど、ギリギリまで迷ったわ。クラリネットが好きだったから、音大に進みたかった。でも音楽なんて、食べていけやしないのよ。だから看護の道に進んだけど、でもななの気持ちはわかる」
な「はぁぁ。おうちに帰りたくないなぁ」
ゆ「ウチに連れ帰ってあげたいけど、ウサギ小屋だもんでねぇ」
な「え?」
ゆ「あはは、一人暮らしなのよ。安月給だから、小さいアパートに住んでるの」
な「その若さでもう一人暮らししてるんですかぁ!すごいなぁ」
ゆ「すごいも何もないのよ。家にいたくないんだもん。私も」
な「妹さんは、そんなにお姉ちゃんのお菓子を食べちゃうんですか?」
ゆ「あなたはそうってことね(汗)
妹じゃなくて、母親が嫌なのよ。私も。
うちは一人親なんだけど、その母が熱心な宗教信者でね。
150万円のツボとか買ってきちゃうのよ。家計が苦しいっていうのにさ」
な「うちは、ママが150万円の英会話教材とか買ってきちゃうんですぅ(泣)」
ゆ「聖書を読んでいれば幸せになれると信じているの!」
な「参考書を読めば幸せになれると信じているの!」
ゆ「聖書を読んで、でもぜんぜんその通りにしないのよ?神頼みするだけ」
な「参考書を積まれても、全然勉強しないのよ?神頼みするだけ」
ゆ「ちょっとは勉強しなさいよ!」
な「だってぇ・・・。脚本だったら、字だけの本でも読めるんだけどなぁ」
ハ「学歴信仰。というヤツだな」
不意に、隣のテーブルから少年が声を挟んだ。
な・ゆ「は??」二人は声のほうを向いた。
ハ「学歴信仰というヤツさ。
良い学校に入れば幸せになれると信じ切っている。そして入学金や学費にバカげた金額を注ぎ込み、お題目を唱えるかのように子供に歴史年表を暗記させる・・・。
それは本当に宗教に似てるよ。いや、宗教みたいなもんだよ、何でもかんでも」
少年はキザに腕を組み、脚を組み、キザに俯きながらアニメキャラのごとく持論を語るのだった。
な「で、ウサギ小屋に連れていってはもらえないの?」ななはゆなを見つめて言った。
ハ「ムシするなよ!!」
な・ゆ「えぇ?男の人にナンパされても着いていくなって言われてるしぃ」
ハ「ナンパじゃねぇよ!」
ゆ「じゃぁ何なのよ?」
ハ「同志だな、と思って」少年はまた、キザに髪をかき上げた。
ゆ「やっぱりナンパじゃない」
ハ「ナンパじゃねぇ!オレは女は妹にしか興味がねぇんだ!」
な「う、シスコン(汗)」
ゆ「弁明になってないわ」
ハ「オレはハヤト。
この世の闇を晴らしたいと願っている」
ゆ「キモ!同志って言わないで(汗)」
ハ「いちいちツッコむなよ!」
ゆ「で、あなたは何から抜け出したいの?」
ハ「どうせ言っても理解できないよ。キチガイ扱いされる」
ゆ「じゃぁ話しかけないでよ!もう!」
な「まぁまぁ」ななはゆなをなだめる。
ハ「オレは、自分がデジタルなデータにすぎないのではないかと思うときがあるんだ。
ここはゲームの世界で、オレはそのキャラクターの1人。NPCというやつだ。
ゲームマスターか神か何か、圧倒的な権力者に言動のすべてを制御されている。それが嫌なんだ。
ゲームマスターみたいなヤツに統率されている、ような気がするこの現状が。
だからそこから抜け出したいと思ってる」
ゆ「あなた、テレビゲームのやりすぎなんじゃない(汗)」
ハ「そう。その通りだよ。オレはテレビゲームをめちゃくちゃやってきた。それはあまり良くないことだったと反省もしてる。
でも、だけど気づいたんだよ。今オレのいる世界が、なんかテレビゲームの中の世界と酷似してるなって」

ハヤト
7月3日生まれ 17歳 ニート
165cmくらい 50kgくらい