エピソード37『世界樹 -妖精さんを仲間にするには?-』
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- 7月7日
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更新日:6 日前
エピソード37
お城の扉をくぐると、視界は急にクリアになった!これまで真っ白い霧の中に、幻想的な湖の庭園にいたのが嘘のようだ。くっきりと色を持った、まったく霧のない、重厚で美しい、お城の中にいた。
お城の中はふんだんに植物が茂り、花が咲いていた。花や草の香りがする。小鳥や蝶までもが飛んでいる。
建築美は人間たちの先進国のそれに近い。しかし植物との一体化の観念は明らかに人間とは異なり、妖精たちがいかに植物を愛しているかが伺われた。そして、こんなふうに植物と共生できるのだということを思い知らされた。
お城の中には、ポワンやリラ、エルサのような美しい妖精が大勢いた。部外者の急な来客に対して、ソワソワしている者が多いようだった。妖精は人間が好きではない、その噂は本当であるようだった。しかし皆上品であり理性的で、敵意や嫌悪をあからさまに見せるような者はいなかった。
霧の中ではない、が、幻想的ではある。しかしこのような暮らしは、人間とて実現が可能なものに思えた。そういう好みさえ抱けば。
ゆなは思った。「センスが圧倒的に違いすぎる!」と。

挿絵 by えみこ さん
可愛くて強そうな兵士に先導され、3人は女王の間へと通された。

な「わぁ、綺麗な王女さま!」
ゆ「こらっ!もっとかしこまって!」
女「うふふふ。良いのですよ♪」女王であるらしき麗しき妖精は、お茶目にウィンクをして見せた。
女「ようこそおいでくださいました。かわいい戦士たち。
お話は伺っておりますわ。
なんでも、美味しいスイーツを求めてやってきたのだとか?」
な「ちがうんですけどぉー(汗)」
ゆ「す、すみません。妖精の女王様との謁見を希望しているのですが・・・」
女「えぇ。私がその人です。
ごめんなさいねうふふ。冗談が過ぎまして?」
ゆ「だ、大丈夫なんだろうか(汗)」
な「わはは、王女様かわいい♡」
女「頭の疲れる長い話は無用でしょう。要件は伺っております。
焼け焦げた森を元通りにするために、《春風のフルート》を欲しているのでしょう?
それはこの城に何本もあります」
ゆ「貸していただけるのですか?」
女「えぇもちろん。ただし、
あと3回・・・
『かわいい』って言ってくださらない♡」
な「かわいいかわいいかわいい♡ホント―にかわいい(♡▽♡)」
女王はジョークを言っているのだが、ななは本気で女王にメロメロなのだった。
従者が口を挟んだ。
従「申し訳ありません。女王様はこのような人なのです。
なにとぞ、慣れてください(汗)」
ゆ「申し訳ないことはないけど、意外すぎるわ!」ゆなは生まれてこの方、このようなユーモラスな権力者を見たことがなかった。
従「実は、妖精の女王がこれほどまで浮世から姿を隠すのは、女王がこのような人柄ゆえもあります。
冗談ばかり言っていると、大衆から信頼されないものでして・・・。
あなた方は受け入れてくださいましたが、遥々謁見に訪れてもいさかいが起こってしまうこともあります・・・」
ゆ「なんだかフシギすぎるんですけど(汗)」
女「でも・・・どうしましょう?
《春風のフルート》をお貸しするだけでは、事は片付きませんの」
ア「そうなんです。フルートを持ったところで、どうやったら森は元に戻るの?」
女「焼け落ちた森の前に立ち、《春風のフルート》を奏でる必要があります。
このフルートは、調和と再生のエネルギーに満ちているのです。
どなたか、フルートを吹ける人はいらして?」
ゆ「横笛かぁ。縦笛なら、吹いてたことがあるんですけど・・・」
女「まぁ!どれくらい?」
ゆ「何年も吹いてました。とりあえず演奏会に出られるくらいは」
女「そう!なら良かったわ。ちょっと練習すればどうにかなるでしょう。
そちらの少女も、笛を吹いたことがおありで?」
な「わ、わたしは・・・」
ななの顔が急に曇った。小指が短いコンプレックスによって、母の圧力によって、音楽を諦めた幼い日の悲しみが彼女を襲った。
な「わたしは、吹けません・・・」
ア「僕も楽器はパスだよ?」
女「あら、そうなの。うーん」
ゆ「私が、頑張ってみますが?」
女「えぇ。あなたはもう決定なのだけど・・・
1本では足りないの」
3人「えぇー!?」
女「だって、調和の音楽ってどうやって作るもの?
誰かと誰かが共に奏でなくては」
ゆ「アミン、どうにかならない?あなた器用じゃない」
ア「無理だよー!僕はオンチなんだ」
3人は顔を見合わせて青ざめた。城の者たちもざわついている。
すると・・・
女「もーぉ、しょうがないわねぇ♡」
3人「え??」
女「うふふ。もう1人、誰か頼めそうな人、いるんじゃない?」
ゆ「え・・・!まさか・・・?」
女「しょうがないなぁー。私が着いていってあげようかしら♪」
一同「ええぇー!!??」
3人はもちろんのこと、お付きの妖精たちもおどろきとまどっている!
な「うれしいけど・・・」
ゆ「き、気まずい・・・(汗)」
従「女王様!!いけません!!
女王様が外界に出かけていくなんて!」
女「いけないことはないわ。
3人に聞きましょう。私が着いていっちゃ、ダメ?」
な「ダメじゃないー♡」
ゆ「このうえなく嬉しいのですが・・・
こんなに煌びやかな人が一緒にいると気まずいし、女王様と会話し続けるなんて、プレッシャーが・・・」
従「気まずいなどという問題では済みません!
命を狙われたらどうするのですか!」
女「問題があるなら、取り除けばいいのよ♪
そうね、じゃぁこういうのはどう?」
女王はイタズラっぽく笑うと・・・
ぽぽんっ☆
なんと、自分の姿を幼い少女に変えてしまった!!

女「ほら♪これなら女王だってわからないわ♡」
な「かわいいー♡」
従「いけません!その姿では、チカラが半減してしまいますます命が危うい!」
女「えぇ?そうかしら。私なら大丈夫だと思うんだけど・・・
ちょっと試してみましょ。
ううーん・・・《ベホマズン》!!」
しかし、なにもおこらなかった!
女「やっぱりダメかしら」
ア「えぇぇぇ!!!
《ベホマズン》なんて使えるのかよ!」
女「えぇ、普段はね」
な「べほまずんて?」
ア「とんでもない回復魔法さ!
おまえたちがさっき覚えたのが《ホイミ》だろ?
その最・最・最・最・最上級魔法にして、伝説級の魔法だよ!」
な「うーん??」
ア「わからないのか!
《ホイミ》が1万発くらいだよ!!」
な・ゆ「すごぉーーーーー!!!」
女「そう。つまり私、強いのよ♪だから大丈夫よ♡
チカラを半減したって、それでもなんとかなるわ」
従「しかし、まだ問題があります!
女王様がここを離れたら、『霧の結界』はどうなさるおつもりですか!」
女「旅しながら張り続けるわ♪」
従「そんなに軽く言わないでください!」
女「魔力の問題ならどうにかなるわよ。私、どれだけ瞑想したと思ってるの?」
ア「ど、どれだけしたの・・・?」
女「うーん。トータルで300年くらい?
まぁ色んなタイプの瞑想も含むけど」
な・ゆ「すごぉーーーーー!!!」
ア「そんなに黙り続けたのか?このひょうきんなあなたが!?」
女「えぇ♪冗談に聞こえるかもしれないけど本当よ?
長く生きていれば、色々やってみたくなるものよ♪」
ア「なんだこの人は・・・!」
従「玉座はどうなさるのですか!」
女「あなたが代理を務めておいてくださる?」
女王は、逆隣に待機する女大臣にいきなり指を向けた。
大「えっ!」
従「そんな軽はずみな!」
女「いいえ、そのための大臣です。
そして大臣が大臣として一人前になるには、実際に女王不在の城を守り続ける実地が必要です」
大「もしや、もう帰ってこないおつもりでは!?」
女「うふふ。そんなに無責任ではないわ(笑)
・・・そうね。それなら、両者に約束しましょう。
まずはゆなたちへ。
私はこれから仲間に加わりますが、いつ抜けるか定かではありません。
そして城の者たちへ。
私はいずれ、必ず戻ってきます。
・・・死んでしまわないかぎりは(笑)」
一同「それが困るんですってばーーーー!!!(汗)」
ゆ「従者の皆さん、女王様はもう、止められないのでは?」ゆなは期待を込めて言った。
従者は、大臣の顔を見た。
大「わかりました。受け入れましょう。
女王のおっしゃることも一理あります。
私は、この城は、女王のいない時間を経験し、それを乗り越える必要が、たしかにある」
女「わぁーい♡」
ゆ「フランクな人だというのはわかったけど、どうやって接していいやら・・・」
女「そうね!
これから私のこと、『キキちゃん』って呼んでくださる♡」
な「キキちゃぁーん(♡▽♡)」
なんと、妖精の女王が仲間にくわわった!
従者は青ざめた顔で、大臣に耳うちした。
従「ていうか、『いずれ』ってどういうことでしょう?
《春風のフルート》を奏でるだけの外出なら、ものの2~3日で終わりそうなものですが・・・
あの物言いですと、森の件を解決しても、戻ってくるつもりがないのでは・・・」
大「覚悟を、しておきましょう(泣)」

キキ
2月11日生まれ いつまでも10歳?
120cmくらい