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エピソード55『世界樹 -妖精さんを仲間にするには?-』

エピソード55


ギュイオンヌ大聖堂がある聖都が、素晴らしい場所であるとは思えなかった。

しかしまずはそこを見てみるべきか、と一行は思った。他に大した目標もない旅だ。他に大都市も知らない。

聖都は、ミレーユの村から北東に行ったところだと教わった。とにかくその方向に向かうことにした。

そう。ミレーユの村は、名前がない。

な「名前がないなんて、不便じゃないの?」とななは不思議そうに尋ねた。

ミ「不便なこともあろうが、都合の良いこともある。

 名前がなければ誰もそこを呼ばないし、地図にも載らない。すなわち、誰もこの村に侵略してこようとはしない」

そういう考え方があるのか!とななは感心した。

名もなき村というのは、世界を見渡せば他にもちまちまあるのだと言う。

そう言えば、ライアンのいた集落も名前などなかったのかもしれない。


なだらかな平原を、馬車は黙々と進んだ。

キキは、感傷に耽るベロニカにさらにささやきかけた。

キ「あなた、他に生計を立てる手段を考えておいたほうがいいわ」

ベ「え?なんだって?」

キ「ミレーユの話で察したでしょう?

 権力者なんて、どこの国でも似たようなものなのよ。

 だけど画家というあなたの仕事は、王宮や教会や貴族や・・・お金の有り余る権力者が主な雇い主。そうじゃなくて?」

ベ「そうだ。もっぱら貴族との付きあいになる」

キ「でもあなたは、権力者の腹黒い価値観とは相いれない。彼らに合わせて偽りの美を描くことは、今後も出来ないでしょう?」

ベ「そうか・・・」

キ「だから、権力者じゃない人が買うような絵を描くか、絵ではない方法で生きていく術(すべ)を画策しておいたほうが良いでしょうね」

ベ「そうか・・・」

ベロニカは憂鬱になった。城を離れれば好きなように絵が描けると思っていのだ。城を離れてもなお、絵を描いて食べていくことが難しいとは・・・。どうしたものか。

それならいっそ、生からも逃げたい気もする。

キ「逃げないで」

キキはすべてを察したかのように、ベロニカの手を握りながら最後の一言を優しくささやいた。

そうだ。そうすべきじゃないはずだ。

ミレーユの深い慈悲に応えるためにも。



―聖都ギュイオンヌ―

一行はやがて、聖都へと辿り着いた。

これまで見てきた城壁街よりもさらに立派な造りの、壮麗な面持ちの防壁街だった。

ギュイオンヌ大聖堂とやらは、石ではなく大理石を用いて造られた、ツヤツヤと輝く荘厳な神殿だった。

仕える者たちは、絹か何かで織られたツヤツヤした衣を着ている。

大聖堂には幾つかの大きな絵も飾られていた。

「絵が上手ければ、大聖堂から仕事が貰える」それは容易に察せられる。

しかし、救世主の背後に光の柱が立つ現実離れした絵を、ベロニカは描きたいと思えなかった。


一行は大聖堂の中を覗いたが、ものの10秒で弾き出されてしまった!

「肌を露出する下品な格好で聖堂に入るな!」と怒られたのだった。

よくよく見れば、聖都の住人は誰しも、神官たちほどではないにせよ上品な服装をしていた。皆大きな布を織ったローブを身にまとい、足首まで体を隠している。

普通に手足を露出したななたちの服装は、大聖堂に入らずとも聖都の住人たちに煙たがられているようだった。汚いものを見るような目でにらまれ、疎まれている。



あまり長居したい街には思えなかったが、来て数時間で旅立つのも虚しい。

大聖堂に関わりたいとは思えないし、入れてももらえないので、《WANTED》で何か人助けすればいいかと考えた。

聖なる宗教の都に酒場などあるのだろうか?と思ったが、普通に何軒もバーの看板があった。

そのうちの最も大きそうなものに入ってみる。

まだ夕方の5時過ぎだが、まばらに客がいた。

聖もいれば俗もいるか、と思いきや、どうも夕方から酒を飲んでいるのは、大聖堂に従事する男たちばかりであった。彼らは自分の隣のイスに、脱いだ聖堂のローブを丸めて置いているのだ。

そして、ある者はすでにかなり酔っ払い、ある者は司教のグチを言っている。

神聖な者たちの姿など、演技にすぎないのだな、と一行は思った。まぁ色々な聖職者がいるのだろうが。


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