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エピソード68『世界樹 -妖精さんを仲間にするには?-』

  • 執筆者の写真: ・
  • 2024年5月2日
  • 読了時間: 3分

更新日:2024年6月30日

エピソード68


一行は町に戻り、今日はもう暮れも近いので休むことにした。

翌朝起きると、町は新たな展開を示していた。


店「さぁー寄ってらっしゃい見てらっしゃい!

 100体限りの新商品!《薄紅の天使像》だよ!

 聖都ギュイオンヌの彫刻家が監修した、見目麗しい大天使の像だよ!」

目抜き通りの中でも最も大きな店が、大きな声を張り上げている。朝からもう、人だかりだ。

何でも、この町ご自慢のローズクォーツを使った天使像を販売しているらしい。

店「さーぁ100体限りの天使像!

 家に祀れば家内安全交通安全!合格祈願に商売繁盛だ!

 幸運を約束する天使の像が、今なら1万ゴールド!

 人生の安泰が1万ゴールドで買えるなんて!!」

「うさん臭い商売だ(汗)」と一行はげんなりするが、それに飛びつく聴衆は少なくないのだった。

衆「100体限りだって?」

衆「聖都ギュイオンヌだって?」

衆「1万ゴールドで人生の幸せが買えるなんて!」

そして赤子ほどの大きさの像が、飛ぶように売れていく・・・


一行はそれを横目に見ながら、出かける準備を始めていた。

アミンは町を見渡し、ガタイの良い男を選んで声を掛けた。

ア「この町の近くに炭坑があるって聞いたけど、どっちかな?」

男「炭坑だって?北に行きゃあるけどよ。

 あんちゃん立派なオノなんか持ってっけどよ、今さらローズクォーツを掘りに行ったって、もう遅いぜ」

な「どうして??」

男「最近じゃもう採れなくなってんだ。すっからかんさ。

 これ以上掘ると、地盤がマズいんじゃねぇかな」

ア「採れなくなったって?」

ゆ「そんな節操が、この町の商人にあるの?」

男「いやぁあんまり気にせず掘り続けてきたけどよぉ。

なんか聖都から来たっつうチチツ学者?」

ゆ「ちしつ学者ね」

男「そう、それがよ、『これ以上掘ると町も地震に飲まれるぞ!』ってよ。

 こわーい顔でおどしやがんだよ!」

ア「地盤に影響が出始めているのか・・・?」



ガタイの良い男とは別れ、腕組みしながら歩く。

ゆ「ローズクォーツを使った商売を、止めなくちゃいけないんじゃないの?」

キ「そんな気がするわねぇ」

一行は、さっきの天使像を売る大きな店に戻った。

店の奥で、悠長に新聞を読んでいる店長を捕まえる。

ア「ねぇ、あんなでっかい商売してる場合じゃないよ?

 これ以上ローズクォーツを掘ったら、鉱山が空っぽになっちゃうんだろう?」

店「なんだね君たちは。

 そうだよ。空っぽになっちまうらしい。

 だからこそ、天使像を彫ったのさ!

 ご利益のある代物なら、べらぼうに高い値段が付くからね!同じ量の石でも大儲けだ!見てみろ、店先の賑わいを!」

ゆ「そういう卑しい商売をやめたほうがいいのでは、って言いに来たんです」

店「うるさいなぁ。私だって家族や従業員を守らねばならんのだよ!」

ゆ「代用の手段が、あるのではないですか?

 お金儲けするにしても、家族や従業員を守るにしても、他の手段があるのではないですか!?」

店「なんなんだね君は?

 私が破産したら責任を取ってくれるのかね?

 第一、天使像を彫れと勧めてくれたのは、大天使様だよ」

一行「えぇ!?」

店「信じられないって?君たちドワーフにエルフだろ?

 妖精が天使を信じられないってこともあるまい。

 まぁいいんだよ信じてもらえなくたって。

 とにかく私は、大きな翼を持った大天使様にお告げを頂戴したんだ。

 『ご利益があるように』って、私どもの像になんかご祈祷を注入してくれたよ。

 大天使様が言うんだから、正しい商売なんだよ!」

ア「大天使だって・・・?」

ゆ「まさか、あのときの・・・?」

ア「やっぱり、炭坑まで行ってみよう!」


一行は北へ向かった。炭坑までは道が整備されている。こんなに目的地の明確な出発はこの旅始まって以来ではないか。しかしそんなことを喜んでいる場合でもなかった。


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