エピソード71『世界樹 -妖精さんを仲間にするには?-』
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- 2024年5月2日
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エピソード71
鉱「すげぇなお前ら!
あのガス臭い怪物をやっつけちまいやがった!」
物音を聞きつけて、表の炭鉱夫たちは様子を見に来たのだった。
怪物退治の立会人が居てくれたことは、一行にとってありがたかった。
リーザスの町に戻っても、別に町民たちから英雄扱いされたいとは思わなかった。
休息と物資補給を済ませ、ひっそりと旅立つつもりでいた。
しかし、レプラコーンのドーガがななたちを見つけて話しかけてきた。
ド「炭坑の魔物を退治してくれたそうだな。
レプラコーンにとっても、お前たちは恩人なのだろう。
先日の失礼を詫びるのと合わせて、礼がしたいのだが・・・」
ア「いやぁいいよ礼なんて。別に欲しいものもないしさ」
ド「いいや、役に立てると思う。
この町の南東の隅に、ひと際古い民家がある。
看板も何もないが、レプラコーンの老婆が魔法屋をやっている。
武器はどこでも手に入るだろうが、魔法の入手手段は限られるはずだ」
ア「ホントか!それは役に立つな♪」
ド「良かった。
民家のドアを叩いたら、『ドーガの紹介だ』と言えばいい。開けてくれるはずだ。
じゃぁな」
4人「ありがとう!」
な「魔法屋さんだってぇ!ワクワク♪」
ゆ「レプラコーンって、無愛想な顔して案外情があるのね」
ア「妖精たちは愛想ってのがあまり上手じゃないんだ。
表情だけじゃ相手の気持ちは汲み取れないから、会話がいるし、付き合いがいるよ。
そのぶん、仲良くなれば同胞に対して情に篤い」
町の南東をうろつくと、たしかに古ぼけた民家があった。
トントン!
ア「お婆さん!ドーガの紹介でやってきましたぁ!」
しばらくの沈黙の後、ギィィと音を立てて古い木戸が開いた。
ひどいホコリやカビの匂いがする。
な「ぶへっ!」ななはむせた。ゆなは慌ててななの口を塞いだ。
婆「旅のもんかな」それだけ言うと、木戸を開いて一行を迎え入れた。
家の中は古い書物やガラクタ、植物やら試験管などがごちゃごちゃと転がっていた。
ゆ「童話の中でも魔法使いって散らかし屋なイメージあるけど・・・本当にそうなのね(汗)」
婆「ヒッヒッヒ!魔法使いなんざ尊敬するもんじゃないよ!」
4人「自分で言うかー(汗)」
ア「魔法が買えるって聞いたんだ」
な「ワクワク!」
婆「ふむ・・・」老婆は一行をじろりと見渡した。何かをサーチしているようだ。
婆「中級魔法なら幾つか、だな」老婆は鼻をほじりながら言った。
な「中級魔法って?」
キ「《メラ》や《ヒャド》より一回り強い魔法よ♪
《メラミ》、《ヒャダルコ》、《バギマ》、《ベギラマ》、その辺ね」
な「えぇ、それスゴくない!?」
キ「結構すごいわ♪」
婆「こちらにおまかせで良いのかえ?」
ア「いいんじゃないかな?勝手がよくわからないし」
婆「長髪のお嬢さん。
《バギマ》と《バギ》を伝授しよう。風の刃で敵を切り裂く魔法じゃ」
ゆ「え、私でいいの!?」
な「なんか新しいヤツだぁ!!
いいなぁわたしも何か覚えたいなぁ」ななはチラチラと老婆の顔を見た。
婆「そなたはまだムリじゃな。もう少し修行がいる」
な「しょぼーん(涙)」
婆「代金はとるぞ?カネ持っとるのか?」
ア「多少は(汗)」
婆「5万ゴールド」老婆は無機質に短く言った。
ア「結構とるなぁ!」
婆「意地悪言っとるわけではない。誰でも同じ。
これは覚悟賃じゃよ。魔法を得ることに対して、何か覚悟を示すべし」
キ「まぁ良いと思うわ。妥当なところ」
ホぺ族の里ではシャーマンに騙されそうになったから、一行はハラハラもしていた。魔法を買うなんてよくわからないし、非常に高い買い物である・・・。しかしキキが大丈夫と言うなら大丈夫だろう。
ゆなと、そして4人全員が同意すると、老婆はチョークで床に魔法陣を描きはじめた。
シャーシャーシャー・・・・・・。
魔法陣は、まるで3歳児のラクガキのようにぐじゃぐじゃだった!
ゆ「お、お婆ちゃん?めちゃくちゃヨレヨレだけど大丈夫なのコレ(汗)」
婆「だぁいじょうぶじゃぁ!」
そして何やらぶつぶつと唱える。
婆「むーん。はっ!!」
なんと、ゆなを青白い光の柱が包み込んだ!
婆「よし。成功じゃな」
ゆ「ホントに、出来るようになったの!?」
婆「ほっほっほ!
そこの大根を《バギ》で切り刻んでみぃ」
な「ゆなやってみてぇ♪」
ゆ「よぉし・・・。《バギ》!!」
なんと、風の刃が発生し、大根を木っ端みじんに切り刻んだ!
婆「かぁー、粉々にしすぎじゃよ!
おでんの具にしようと思ったのに、まったくもう・・・」
ゆ「ご、ごめんなさい(汗)」
ア「せ、責めてるわけじゃないんだと思うよ(汗)」
妖精との付き合いは、相変わらず難しいようだ。