top of page

エピソード72『世界樹 -妖精さんを仲間にするには?-』

  • 執筆者の写真: ・
  • 2024年5月2日
  • 読了時間: 3分

更新日:2024年6月30日

エピソード72


北に行けば城があると、老婆が教えてくれた。一行は馬車をそのとおりに走らせた。

な「レプラコーンだっけ?妖精っていっぱいいるんだねぇ♪」

ゆ「ヨーロッパの神話とかに、色んな種類が描かれてるわよね。

 そのすべてが実在するってわけでもないんでしょうけど」

ア「でも世界を見渡せば、結構いろいろ居るようだよ」

ゆ「『ようだよ』って、アミンは会ったことないの?」

ア「土地や文化が近くなければ、会うこともなければ話も聞かないさ!僕はあんな山の中に暮らしてたんだぜ?

 妖精の種族っていうのは、わりと地域で分けられるよ」

な「わたしたちの国の近くにいるのが、エルフさんとドワーフさん??」

ア「そういうことだな。

 人間だってそうだろ?黄色人種と黒色人種と、どっちも同じ人間。でもあんまり仲良くしてないだろ?」

ゆ「そうだわ!敢えてケンカしようとも思わないけど、仲良くしたりしない」

ア「妖精も同じ感じだな。いや人間よりも平和だと思うけどね」

な「でもドーガはアミンを攻撃してきたの?」

ア「『人間が好きじゃないから』だ。

 レプラコーンにせよ他の種族にせよ、妖精たちって基本的に、人間が好きじゃないんだよ。

 僕が人間に肩入れしてるから、敵対心を抱いたんだろうね」

な「えー、悲しい。どうして??」

ア「そりゃ人間のせいさ!

 自然を破壊したり、妖精をいじめたりするから!

 妖精って、要は自然の守護者だから。

 自然破壊やら繰り返されて、だんだん人間に愛想尽かしただけさ。

 その心証が代々語り継がれるから、子供のうちから人間が怖いよ」

な「そっかぁ(汗)

 じゃぁアミンやキキが仲間になってくれたのって、奇跡じゃん!!」


キ「うふふ。そうね♪

 でもそうでもないかも??」

な「えぇ??」

キ「エルフたちはちょっとツンデレよ(笑)」

な・ゆ「えぇ??」

キ「エルフもね、人間が狂暴で怖いって思ってるわ。

 でもその反面、人間に憧れてるところもあるの」

な・ゆ「ホント!?」

キ「特に人間が持つ美意識にね。芸術や音楽のセンスに憧れてるのよ。

 それに長ける人間はごく一部なんでしょうけど。

 そして・・・

 人間たちが持つ『愛』という感情や行動に、憧れてたりもするわ♡」

ゆ「えー!恋愛の『愛』のこと??」

キ「そうよ♡そっちの愛。

 恋愛についても、ごく一部の人以外は上手くいってないようだけど・・・

 でもそれが上手くいったときの、なんていうか、ロマンチックというか甘美というか?」

な「へぇー!ななも愛に憧れるぅ♡」

キ「あなた恋愛に憧れてるの?」

な「え?ちょっとはねぇ(照)」

キ「イチャイチャしたいの?」

な「イチャイチャしたいよぉ♡でもイイ人いないよ。みんなこわいの」

キ「そう!そういう感覚なんだと思うわ!

 エルフが人間に抱く、ツンデレ的親愛も(笑)」


ア「ドワーフも、似たとこあるよ」

な・ゆ「えぇ??」

ア「ドワーフも人間が嫌いだけど、人間にちょっと憧れてる。

 愛想が良いだろう?人間は」

ゆ「たしかに、ドワーフはなんていうか、朴訥というか・・・」

ア「ちょっと不器用なのかなと思うよ。性格的にはね。

 人間に出会いそうなところにいるドワーフってのは、いわゆるツンデレなのさ。

 『欲深いやつにモノは売らん!』とか言っちゃうけど、話しかけてほしいんだ、内心は」

な「えぇかわいい~♪」

ゆ「人間にも、そういう人いるかも?」

ア「そうだよ。結局は個人差にすぎないんだと思う。

 人間かドワーフか、ある程度の傾向があるだけでさ。ドワーフにも陽気なヤツもいるよ」

キ「エルフにも愛情深い子もいるのよぉ♡」

な「えぇー!?キキちゃん今晩女子トークしようね♡」

キ「え!(照)今日はダンス夜練5時間コースの日でしょ!はぁ~忙しい!」

な「そんなのないよぉ!」


馬車は黄金色の麦畑の中の、ポツンと佇む水車小屋を通り過ぎた。

大衆(ひと)を避けて佇んでいても、大衆(ひと)のために生きるものもある。

ゆなはシャワシャワと回る小さな水車を、ぼーっと眺めていた。


bottom of page