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episode92 『王と悟り』

11 分前
読了時間: 5分

episode92

ヴィヴィアンの女王の玉座
ヴィヴィアンの女王の玉座
ヴィヴィアンの女王
ヴィヴィアンの女王

ヴィヴィアンの女王は語り始める。

女「ヴィヴィアンとはどんな生き物なのか?と不思議に思っているでしょう。

 あなた方が本で読んだとおりです」

ソ「えぇと、つまり・・・

 人間に対して気まぐれだということですか?」

グ「相手によって態度を変えるぞ、ということであろう」

女「そのとおりです。気まぐれはしません。ご安心を。少々いたずらっぽい種族ではあるかもしれませんが。お客様には気を付けますわ。

 その人が自然や妖精にとって脅威なら、私たちは牙を剥きます。自然を愛する温厚な人なら、お友達です。悪い者を倒そうとするなら、協力をします」

グ「とてもわかりやすい説明です。本の内容と合点がいく」


女「いえ、お友達というほどお友達にはなれないかもしれません。

 ヴィヴィアンたちは人間の扱いがよくわからない。それは人間が複雑だという意味でもあり、ヴィヴィアンたちの心が単純すぎる、ということでもあります。それは大人と話をする子供に近いです」

グ「人間のほうが精神の優れた種族ということであるか?」

女「そうとも言えません。人間との比較は避けます。

 私たちヴィヴィアンは、エルフと天使の中間にあたる存在です」

ソ「エルフ!ヴィヴィアンはエルフの親戚ですか!?」

女「親戚。そう、親戚とも言えるのでしょう。

 エルフは美意識が高く、しかし人間を怖がります。

 天使は美意識が高く、そして男好きです」

ソ「男好き!?天使が、ですか?」

女「えぇ、大まかに言えばそうです。女の天使は人間の男性に興味津々です。だから天使は、人間の体に、人間のふりをして俗世に生まれていきます。自分が天使であることすら忘れてしまいますが・・・」

ソ「ちょっと色々と話が濃すぎるなぁ・・・」

グ「人間とは思えない繊細な人間が、時々いる。彼女は天使なのだろうか」


女「そしてヴィヴィアンは、エルフと天使の真ん中あたりの感性です。

 エルフよりは度胸があり、好奇心があります。しかし天使ほど人を愛してもいません。今、人と関わる練習をしているところです。

 なぜそんな練習をしているか?

 ヴィヴィアンもエルフも天使も、人間を手助けするために造られた存在です。その使命を生きないことには、どうにもなりません。人間の学校ほどせかせかと尻を叩かれはしませんが、ヴィヴィアンも各々のペースで成長していきます。

 関われる人を探し、関わる能力を磨きます」

ソ「でも人間が自然を壊すなら、人間を攻撃するのですね?」

女「そうです。人間との遊びよりも自然を守る仕事のほうが大切、とも言えますが。

 人間を自然好きにしてあげなくてはいけません。

 人間は、自然を愛するようにならないと何度でも自滅を繰り返します。自然が宝石よりも大切と思うようになったなら、核兵器など使わないはずなのです」

グ「そうか!核は人を滅ぼすだけでなく、自然を滅ぼしてしまう!」

女「空気の汚れ、川の汚れ、海の汚れ、山の汚れ・・・それらを見ていれば、人間がどれだけ自然が好きか、嫌いか、わかります。

 妖精たちは、汚れた水に触れたら体も心も弱っていきます。水や山を汚されると、人間が憎く感じます。それでも人を愛さなければいけませんが、しかし憎く感じるのは仕方ないことです」

ソ「友達に家を汚されて、ムカムカしない人間はいない、そういうことだ!」


ヴィヴィアンの女王は雄弁に語る。

女「なぜ女王の家は、屋根も壁もないのでしょうか?

 里に雨が降ったら、女王は一番最初に濡れます。女王は一番最初にその雨の水質を、体で感じ取ります。雨が汚れているなら、何か対策を講じなければいけません。

 花や土が異臭を放ちはじめたとき、女王は一番先にそれを察知しなければいけません。だから壁のない家に暮らします。女王は、民のために体を張りたい人がなります」

グ「に、人間の王とは真逆だ!!

 人間の王は民を肉壁にし、奴隷にすることばかり考えている・・・!!」

女「そうですね。人間の王とお友達になれるのは、1,000年か・・・もっと先のことかしれません」

気が付くと、周囲にはヴィヴィアンの数が増えている。野次馬というか、人間の来客を皆、興味深く見守っている。

エリュシオンのヴィヴィアンたち
エリュシオンのヴィヴィアンたち

女「それなりに自己紹介が出来たでしょうか?

 あなた方は『嫌われないように』と気を張ってくださっていますが、私たちもまた、悪意のない存在であることをあなた方にアピールしなくてはなりません。

 私は、どれだけ立派な人間なのかは定かではありません。しかし悪意がまるでないことだけは、この胸に誓えます。

 あぁ、ほっぺに花びらが付いてしまったのですが、鏡を見せてくださる?うふふふ」

ソ「あっはっは!僕の子供の頃のオネショまで筒抜けかもしれませんね」

グ「つまり、雲隠れにあった人間は元の街に返してもらえるということですな?」

女「本人が望むならば」

グ「望むならば?」

女「えぇ。中にはもう街で暮らしたくないと願っている人もいるものです。

 それゆえにエリュシオンに導かれる人もいます。それならここから家に帰らないこともあります」

ソ「なるほど!行き場のない人をかくまうこともあるのですね!」

グ「雲隠れのすべてが、不幸とはかぎらない・・・」

女「そう。そうした視点をお持ちいただいたほうが良いです。人は時に、親元から離れたいものです」

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