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エピソード104『世界樹 -妖精さんを仲間にするには?-』

  • 執筆者の写真: ・
  • 2024年5月2日
  • 読了時間: 6分

エピソード104


永遠に変わり映えしないのではないかと不安になるような砂漠を歩き続けていると、やがて眼前に、本当に「大きな三角形」が見えてきた!一同は驚いた。正確に言えば三角錐である。

そしてその手前には、やや大きなオアシスがあった。町並みの賑わいがあるようである。


―アッサラーム―

ピラミッド最寄りのオアシスは、名をアッサラームと言った。

ちょっと大きな宿屋や、たくさんの商店もある。一行はようやく一安心!と思ったが、そういうわけにもいかなかった。

のどを潤そうと食堂に入ると・・・

ア「なんだって?ミントティーが1杯30ギル!?」

コナンベリーの10倍もの額だ!

ア「さすがにボッタクリすぎだろ!僕らが勝手を知らぬ余所者だと思って!」

しかし店主は動揺の色を微塵も見せない。

店「いやいや何をおっしゃる!これが商売の道理というもんだよ。

 砂漠という過酷な土地に食料を運んでくるのは一苦労さ。間に多くの手間や人を介するほど、値段が高くなるのは仕方ないってもんさ」

その道理を受け入れてか、隣の席の商人は文句の表情も見せずに冷たいお茶を飲んでいた。

しかしそれにしたって、アッサラームの男たちは首や腕に金のネックレスやらをギラギラと光らせる者ばかり。

そして女たちは、やたらとじゃらじゃらと装飾のついた民族衣装を身にまとっている。美意識が高く煌びやか、とも言えるが、どうも強欲な人々のように見えて仕方ない。

そして、「もっと値下げして!」と交渉したところで商人たちは首を縦には振らず、どこの食堂に入ろうと、どこの商店に入ろうと、ものが高いのは同じなのであった。

ちょっと立ち回りにくい国だなぁ、と一行は戸惑うのだった。

幸い、お金のない一行ではない。ベロニカから貰った報酬がまだずいぶんと残っているし、道中で増えた金もある。

アッサラームの目抜き通りには幾つもの露店が並び、珍しい形の剣や見目麗しい民族衣装、不思議な形の食器など売られており、興味をそそられる。ピラミッドの形を模した水晶の置物などもある。そうした物欲に惑わされなければ、寝食をしのぐことなら不安はなかった。



一行はお茶を飲み終えると、宿をとって仮眠をとることにした。

「砂漠の民は、暑い日中は無駄に動き回らないもんだよ」とどこぞの商人が教えてくれた。これについては「なるほど」と思った。

夕刻、涼しくなった町に一行が繰り出してみると、たしかに昼間よりも賑わっているのだった。

ミントティーではなく酒を飲んで陽気に騒ぐ者たち。それらからチップを貰わんとする踊り子のショーなども見受けられる。

テレビジョンが無ければ街は平穏になるのかと問えば、そうでもないのかもしれない。


夕飯を食べるならもっと手頃そうな店がいいな、と一行は少し静かな界隈まで足を延ばす。そうしてウロウロしていると、道で誰かが叫んでいる。木箱を舞台にして姿を目立たせ、大きく身振りしながら人波の注目を引こうとしている。

男「さぁ寄ってらっしゃい見てらっしゃい!アッシは情報屋だよ!

 向こうに見えるはピラミッド!あんなに大きな建造物、見たこともないだろう!?

 さぁー世界の謎に興味があるならチップを頂戴!わずか10ギルだよ!」

うさん臭い気もするが、ちょっと聞いてみるか。4人は顔を見合わせ、同意しあった。なにしろそのピラミッドを知りに、ここまで来たのだ。

アミンは男の足元に10ギルを放り投げてみた。

男「うーんお客さんロマンがあるねぇ!

 ピラミッドとは何なのか?

 昔この地は、ファラオと呼ばれる王様たちが、世界一の大都市を築いていたのさ!

 ピラミッドはその王様のお墓だったと言われているよ! 

 最も偉大な王は、権力を誇示するために世界で最も大きな墓を作らせた!自分の名が、世界中どころか未来永劫轟くようにねぇ!

 え?いつからあるのかって?

 1000年前という説もあれば、なんと5000年以上前という説もある!うーん、ロマンがあるねぇ!」

男はそれだけ言い終えると、また「寄ってらっしゃい見てらっしゃい!」の呼び込みに戻ってしまった。


ア「ふぅん。昔の王様の墓かぁ」アミンは手頃な食堂を探し歩きながらつぶやいた。

キ「うふふ♪その情報はダミーよ!」

3人「えぇ、なんだってぇ!?」

な「なんでキキちゃんがピラミッドのこと知ってるの?」

キ「だってわたし、ピラミッドが建設された頃、この土地にいたんだもの♪」

ゆ「そういえばコナンベリーでそんなようなこと言ってた!」

一行は気の良そうな食堂を見つけて腰を下ろした。そして話は続く。

キ「6000年くらい前かしらね。

 あの頃はわたし、ある神官の守護天使をやっていたの」

な「しゅごてんし??」

ゆ「その人の人生をずーっと見守っているという?」

キ「そう。守護天使ってそういう生き物。

 彼の目をとおして、わたしもこの砂漠の暮らしやピラミッドを見ていたわ。

 あの頃はこんなに、ガメツい商人ばかりじゃなかったんだけどねぇ(汗)」


ア「それで?

キ「わたしのご主人様の神官は、この地に神殿を造りたいと願ったの」

ア「神殿?ギュイオンヌみたいな?宗教をやりたかったのか?」

キ「ううん。宗教というよりは、瞑想の場を造りたかったのよ。

 人が瞑想すると、魔力が向上することはもう知ってるでしょ?それは体の周りにも充満するの。

 同じ場所の中で大勢の人が毎日瞑想をしたら・・・・

 すごい魔力を持つエネルギースポットが出来上がるわ。それを地球の発展に活かそうとしたの」

な「ピラミッドはお墓じゃなくて、神殿だったんだぁ」


キ「いいえ、お墓でもあったのよ♪」

な「えぇ???」

キ「お墓のようなものも、内部には造られたの。玄室と言うんだけどね。立派な棺も置いたわ」

ア「なんでそんなことするんだ?」

キ「いつか文明が滅びた未来に、ピラミッドを侵略する人々が来とき・・・『ここは王の墓だったんだな』と思い込ませるためよ」

ゆ「魔法の神殿であったことの、目くらまし・・・!」

キ「ピンポーン♪

 この神殿に込められた魔力は、悪い人々に誤用されてしまう懸念もあったからね・・・。

 それを防ぐために、神官はカムフラージュを考えたってワケ」

な「その魔力で何をしたの??」

キ「神官は、ここで魔法を発明したのよ!世界で最初の魔法。

 手から炎が出せるなら?火を熾す道具が要らないでしょ♪

 手から氷が出せるなら?砂漠でも冷たいお茶が飲める!」

3人「へぇーーーー!!!」

ア「魔法の礎が、このピラミッドにあったのかぁ!」

ゆ「魔法の礎に、キキちゃんは立ち会っていたんだぁ!」

キ「はい!10ゴールド頂戴しまぁーす♡」

な「30ゴールド払うぅー♡」


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