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episode70 『王と悟り』
episode70 グレイグの小屋 挿絵 by 生成AI 森の中、グレイグの隠れ小屋に辿り着いた。 先日ソロがグレイグに助けてもらった地点の近くである。 グレイグの小屋には、思いのほか物がたくさんあった。 戦いのための道具がたくさんある。だけでなく、壁には乾燥した草が吊り下げられていたり、水場には得体の知れない瓶詰が並んでいたりする。 ソ「グレイグさんは料理が趣味なんですか?」 グ「いいや、薬の調合などを研究している。たしなむ程度だ。《薬草》、《毒消し草》、《まんげつ草》程度なら自作できる」 グレイグは、冒険の旅に役立ちそうなものを見繕って、カバンの中に詰めた。 そして、とても立派な特注品のような鎧を身に付けた。凄まじく強そうだ! ソ「ちょ、ちょっと待って!」 グ「なんだ?」 ソ「その鎧、ヤメにしません?《ホイポイ》で収納して隠し持っておいてくださいよ。 いつもその格好していると、魔物にも人にも目立ちすぎちゃいそうで・・・」 グ「・・・そうだな」グレイグは他に装備できそうなものをキョロキョロと見渡す。 ソ「いつもの普段着でいいかも?木こりと思わ


episode69 『王と悟り』
episode69 誰の反応も確認しないまま、グレイグはその場を立ち去った。物事の解決は期待していない。やれるだけのことはやったので、後は皆に託すしかない、そう考えた。 ソロはグレイグを追いかけた。そして横に並んで歩く。グレイグの顔を見る。 グレイグもソロの顔を見る。 グ「そなたは・・・」 ソ「はい?」 グ「そなたは・・・勇者なのか?」 ソ「え!?」 グ「世界が待ちわびた勇者ではないのか?」 ソ「いえ、違いますよ!作戦司令官とかいうのも嘘なんです」 グ「そうか。 ・・・・・・。 ではそなた・・・」 ソ「はい?」 グ「私と旅をしないか?」 ソ「え!?」 グ「いいや、私がそなたの後に着いていく。駄目か?」 ソ「えー!っと・・・。あのう」 グ「私は国を捨て、やることがなくなってしまった。 そなたの旅の目的が何であってもいい。どこであってもいい。 着いていっては駄目か?」 ソ「えぇ、まぁ、いいですけど・・・」 ソロは苦笑いしながら頭を掻いた。この男はちょっと面白そうである。 なんと、グレイグが仲間に加わった! グレイグ キャラデザ by 絵夢さん


episode68 『王と悟り』
episode68 「そこまでだ!!!」 会場をとても大きな声がつんざいた! ソ「はっ!!」ソロもそれに気圧されて攻撃をやめる。 「もう勝負はついている。もう攻撃は止めたまえ! この国はホリディという兵士を失ってはいけない」 グレイグ 木こり服 ソ「あ、あのときの木こりさん・・・!」 ホ「グ、グレイグ・・・!!!」 なんと、城の手前でがいこつけんしに圧倒されていたソロを救った、あの木こりのような大男だ。 ●グレイグ グレイグ キャラデザ by 絵夢さん 年齢:30歳 誕生日:5月5日 身長:210cm グ「・・・・・・」グレイグは力強い表情でホリディを見る。 ソ「あ、あなたがグレイグさん!?」 衆「グレイグだ!グレイグが帰ってきた!」 衆「鎧着てなくたってわかるぞー」 グレイグはホリディを抱き起す。 ホ「ぐっ・・・」 グ「よいな?ホリディ。お前に勝ち目はないよ」なんと、グレイグはソロを援護している。 ソ「私はまだ幾つも、武器や策を隠し持っています」乗じてさらに威勢を張り、ダメ押しをした。そして王の顔を見る。 ホ「・・・・・・。 わかった・・・


episode67 『王と悟り』
episode67 翌日。 城の裏の闘技場に、参加者たちは集められた。 大勢の観客も集まっている。この決闘は国民にとって、色々な意味で目が離せないようだ。 参加者は10人ほどいるようだった。やはり、その全てに勝ち抜いてからホリディと戦うのは無理がある。 王が何やら音頭を取り、戦いのルールなど説明する。皆緊張の面持ちで聞いている。 王「・・・というわけだ。 とにかく命を奪うまで戦う必要はない。降参をすれば負けである。 何か質問はあるだろうか」 すると、ソロはするすると前に出た。 そしてなんと、勇ましく演説を始めた! ソ「皆の者!少し時間をくれたまえ!」ソロらしくない口調である。 衆「ざわざわ。何者だ!?」 王「おい、そなたは」 しかしソロは、王にすらも毅然とした態度で手を掲げ、黙ってその言葉を制止する。王は思わず飲み込む。 ソ「私は何者か?遥か東、カレンの国から参った。 カレン国の自衛隊、その作戦司令官にして軍の最高責任者だ!」 衆「作戦司令官だって!?」 衆「他国の将軍ってことかよ!?」 ソ「この国を助けるために参上した。 ホリディ氏に勝


episode66 『王と悟り』
episode66 翌日。ホリディたちとの決闘にはまだ1日の猶予がある。 ソロは何か戦いの手がかりになるものはないかと街を散策していた。 すると女性の悲鳴が聞こえる。 「キャー!」 なんだ!?兵士の多いこの街に余所者の出番などないかもしれないが、ソロは反射的に声のする方へ駆けつけた。 女「あ、ありがとうございます!」 シャキン。男は剣を鞘に仕舞った。 ホリディ 女「あぁ、まさかホリディ様に助けていただけるなんて! あのう、お食事をもてなします!すぐそこです!私の家まで来てくださいませんか?」 ホ「ふん。礼には及ばん」しかし男は無愛想に立ち去っていった。 なんと、そこに居たのはあのホリディだった。魔物に襲われた女性をさらりと助けたようだ。 女「あぁ・・・!」 ホリディを引き留めようと手を伸ばしたが、するりとかわされ、女はその場に転んでしまった。 ソ「大丈夫ですか?」ソロは駆け寄り女を立ち上がらせる。 女「ホリディ様・・・!」女は未練がましくホリディの背中を見つめている。 ソ「足を怪我していますよ。《薬草》をどうぞ」 女「あ、どうもありがとうござい


episode65 『王と悟り』
episode65 ホリディ 近くにも城の兵士らしき男がいる。話を聞いてみよう。 ソ「あのう、ホリディさんは将軍に向いていないんですか?」 兵「えぇ?オレはホリディさんでいいと思うけどな。他に誰もいないだろ? 元将軍さんにはこの国は任せられないし、早く後釜決めたほうがいいよ」 ソ「将軍さんはなぜ居なくなったんですか?」 兵「えぇ?そんなことオレに聞くなよ。 衛兵の口からは言いづらいことがあるってもんだろ」 ソ「そうですか、すみません」 ソロは店を出た。もう少し事情聴取が必要だ。兵士じゃない者がいい。 噴水の前に座り込んで酒を飲む男たちがいる。 ソ「あのう、ホリディさんは次の将軍になりますかねぇ?」 男「あぁん?あんな奴将軍にしちゃいけねぇぜ!」 ソ「そうなんですか!どうして?」 男「あいつは徴兵令を敷きたがってるからな!国の男は全部兵士にしようとしてんだよ!たまったもんじゃねぇぜ!」 ソ「なるほど!」わかりやすい話だ。 ソ「つまり、前の将軍さんは徴兵令なんか言わなかったのですね?」 男「そうだよ。グレイグはむしろ、自分一人で魔王を倒すって言っ


episode64 『王と悟り』
第5章 命を賭して episode64 木こりのような見知らぬ男のお陰で命拾いし、ソロは無事、ガンディーノの城下町に到着した。 跳ね橋の手前、20メートルはあろうかという立派な城壁を見上げる。 門の上にはやはり立派な紋章が描かれている。ライオンのようなワシのような生き物だ。 ソ「うわぁー。強い軍事国家かな」 挿絵 by 生成AI 門「聖獣グリフォンに守られしガンディーノへようこそ!」門番は、感嘆するソロを見ながら得意気に挨拶を投げかけた。こんな仰々しい城下町は初めてだな。 ソ「グリフォン?」 門「グリフォンを知らないのか?この聖獣のことだよ。ライオンの体とワシの翼を持つ、天下無敵の生き物だ」 ソ「そんな生き物本当にいるのですか?」 門「だから聖獣だって言ってんだろう? 昔はいたらしい。幻の聖獣さ!そんな神に守られているのだから、ガンディーノは強いのだよ!」 ソ「へぇ・・・」それは大したものだ。 ソ「余所者が入ってもよろしいのでしょうか?」 門「もちろんだ。下手な真似したらすぐに首が飛ぶがな!」 ソロは武器を仕舞って大人しくかしこまり、城門をくぐ


episode63 『王と悟り』
episode63 エドム 神殿の静寂の中、考古学者エドムは語る。 エ「世界のどこか、広大な遺跡の下に、『地獄の帝王』が眠っている、という伝承がある」 ソ「地獄の帝王!魔王のことですか!?」 エ「わからない。伝承というのは曖昧な表現でボカすものが多いからね。 魔王のことに思えるが、そうでないかもしれないよ」 ソ「地獄の帝王・・・」 エ「それに、厳密に言えば『遺跡の下』ではないんだ。『古代の遺物の下』と書かれてある。それは大抵遺跡のことだろうが、遺跡ではない似たようなものかもしれない、と私は慎重に考えている」 ソ「今この下から、魔王がボコッと出てくるかもしれないんですか!?」 エ「その可能性が少しはある」 ソ「・・・!」ソロは恐れから身震いした。 エ「いや、候補の1つだよ。 広大な遺跡、広大な遺物は、世界には他にまだ幾つもあるだろう」 ソ「そうか。候補の1つ。 ここは聖なる集落だったのかなって、僕は想像しちゃうんですが」 エ「そうだな。 でも聖なる土地のすぐ下に悪が眠っている、ということだって無いとは言えない」 ソ「そうか!!」聖地と断言で


episode62 『王と悟り』
episode62 馬車でやってきた他の観光客たちも、同じように終着点のカーテンから赤い神殿を見上げ、言葉を失くしている。 そして数分もすると、皆もと来た場所に引き返していくのだった。 ソ「あれ?ペトラ遺跡ってこれで終わりじゃないですよね?」神殿の右側には道が見えているし、ペトラは広大な遺跡だと聞いたことがある。 馬「えぇ、この先にも集落遺跡がありますよ。とても広いです。 馬車があったほうが良いですよ。20ゴールド(約2,000円)です」 ソ「もういいよ!遺跡を歩き回るために体力を温存したんだから。もう頼まないよ」 ソロは今度こそ馬車を追い返した。 赤い神殿の先へと歩いていく。道が開けると日が射し、また汗ばむほど暑くなる。でもいいのだ。遺跡は汗をかきながら散策するものだ。少々苦しいからこそ楽しい。エアコンの下の遺跡など、遺跡ではないのだ。テレビやVRがどれだけ発達しても、旅人は旅をする。 観光客は途端に居なくなった。そして集落遺跡が開ける。 ソロはまるで、広大な原始的な赤い町の中にたった一人で居る! たった一人で居る! とても奇妙な、贅沢な感覚


えぴそーど14 『魔王が女の子ってマジなの!?(仮) -もの言わぬ革命者-』
えぴそーど14 一行は、城壁門の近くの交通便の良いところに宿をとった。 この街は人やモノでとてもにぎわっているが、そのわりに宿の数が多くはないようだった。よそ者でもわかりやすい中心地に宿をとると、値段がとても高く面食らった・・・ ヒ「あぁあ、ツノうさぎ倒して稼いだお金が、ほとんどパーだ;つД`) せっかく何か防具を買って強くなろうと思ったのに」 カ「どうせこの街で買える防具なんて、アニメのコスプレだけよ」 ヒ「それも悪くはない!( *´艸`)」 カ「あんたホント危なっかしい性格してるわねー(汗)」 ヒ「えぇ?コスプレかわいくない!?」 セ「かわいい♡」 ヒ「ほら幼い子はまだ純真で正直だよ!」 カ「いやぁわかるけどぉ。 そういうのはね、大好きな彼と二人だけのパーティーで着るのよ」 カ「え?なに?? 彼と二人だけのパーティーってなに!?」 カ「もぉぉぉ!私をイジらないでっ!」 順番に風呂に入り、そしてベッドの周りでくつろいでいる。 ヒ「ふんふんふ~ん♪」ヒナタは上機嫌に鼻歌を歌っている。 しかし風呂から上がってきたカンナが顔をしかめた。...


episode61 『王と悟り』
episode61 南へと下る。魔物と戦い、そして暑さとの戦いになった。 メトン川の流域も暑かったが、この辺はそれ以上だ。ソロは気温の数字など知る由もなかったが、連続40度を超えていた。そういう地域である。 陽炎揺らめく荒涼とした岩砂漠が続くが、あちこちに野営地があった。オアシスである。 水場があり、宿屋があり、よろず屋があり、食堂がある。どの野営地も商人や盗賊で賑わっている。 すぐに冷たいジュースが欲しくなるが、感情のままに飲んでいるとお腹を壊す。 食堂では数種類のジュースを売っているが、ソロは黄色いジュースを指名した。レモネードだ。これは、例のおかみさんの食堂で、ローラがソロにサービスで出してくれた飲み物だった。それがなんとなく暑さに心地よい気がしたのだ。これは良い判断だった。 ローラは、飲み物をサービスするだけでなく、この砂漠地域の生きる知恵を教えたい意図もあった。あの母娘はただおしゃべりなだけでなく、意外と色んなことに気が利くのだった。 そういう店をなんとなく見分ける嗅覚、そういう人になんとなく声を掛けられる佇まい、そういうセンスのような


episode60 『王と悟り』
episode60 3日間金策をして、所持金は7,000ゴールドになった。まだ7,000か!と思ったがこの近辺で戦闘を重ねるのはもう飽きてしまったので、先に行くことにする。 南に行く、と言ったら、おかみさんの娘はソロに薄いレモン色のショールをくれた。頭に巻く薄い布だ。暑い地域はまだ続く。せめて日差しを避けるものを頭にかぶったほうがいい、と母娘は言った。なんだか女の子らしい色なのでちょっと恥ずかしいが、まぁいいか。旅の恥はかき捨てだ。 旅行では、グルメも醍醐味の1つである。どうしてもいろんな店に入って色んなものを食べたくなるものだが、同じ店で何度も食べることも悪くはない。すると店主と仲良くなって、何かと情報をくれたりサービスをしてくれたりするものだ。 または逆に、健気に働くその店の店主を応援したりするのも楽しかったりする。ちょっとした知り合いになるのだ。数日で別れ、もう会うこともないのだが、一種の友情なのだ。 ・・・あの母娘は違った! リンガイアを出て歩いていると、後ろから荷馬車の音が聞こえる。それは日常的なことだが、さらに「ソロさーん!」と声がす


episode59 『王と悟り』
episode59 「はぁ」溜め息を付きながら来た道を帰る。 終始不快な思いしかしていないが、しかし決して悪くはない。この独特な雰囲気を持つ市場は、ほっつき歩いているだけでもある意味では面白い。それは旅行風情に溢れている。 市場の出口付近。短剣をたくさん並べる店を通った。エキゾチックな装飾の施されたこの街独特の短剣なのだ。 ソ「いくらですか?」 店「2ゴールドだよ」 ソ「2ゴールド!?」安い!という驚きだ。 短剣はこの街に腐るほどあり、生活品なので安く売っている。さらに余所者のソロにも吹っ掛けなかった、という道理だ。 ソロはその短剣を1つ買った。何かに使えるかもしれないし、使えないとしても土産物として風情がある。2ゴールドならアリだ。 市場は、城壁の一角に接していた。そして近くにも城門がある。 ソロはその城門から外を眺めてみた。 遠く遠くに肌色の山が見える。いいや山じゃない。よく見ると、その丘にはこの街のような肌色の家がびっしりと並んでいる。しかし家は四角形が崩れたものばかりだ。街が古びて廃墟になったのかな、とソロは思った。または戦争を吹っ掛けら


episode58 『王と悟り』
episode58 朝目が覚めると、屋上からは街が一望できた。 薄茶色の家が延々と並んでいる。美しい、とも言えないが美しい。風情がある、と言えばよいのだろうか。それはきっと、住民からすれば殺伐としていて能がない。でも余所者からすれば、風情がある。町並みや景色というのは、面白いものだ。 宿を出ようとすると、「治安が悪いから気を付けて!」と宿主に言われた。 ソ「なんとなくわかっているつもりですが、どう危険なのですかね?」 宿「盗賊ばかりだからね。唾掛けられたり騙されたり、色々あるよ」 ソ「えぇ、覚悟してるつもりですよ」 宿「そういうときさ、冒険者はケンカしちゃうこと多いんだよな」 ソ「あぁ」想像が付くな。 宿「それが危ないんだよ。この国の盗賊は、強い奴も強いからさ!セントベレスって山に行ってきた奴なんかは強いよ。ケンカしたら危ないんだ」 ソ「《毛皮のマント》被ってる人が強いんですかね。ははは」 宿「見た目じゃわからないんだよ。 盗賊ってのはさ、腕っぷしで勝負するんじゃなくて、こざかしい技をいっぱい使うんだ」 ソ「こざかしい技?」...


episode57 『王と悟り』
episode57 娘「もぉ~お母さんまた若い人口説いてんの!」 二十歳かその手前か、年頃の女の子が現れた。カルティエの娘だろう。エプロンを着けながらブツブツ言っている。 カ「いいじゃないか! イイ男ってのは自分からいかないと射止めらんないんだよ!」 娘「いい年して目キラキラさせないでよ」 ソ「旦那さんがいるんですよね?」 カ「まぁね。でもさ、旦那なんて『キープ』にすぎないだろ?」 ソ「キープ?」 カ「そうだよ。みんな孤独になるのが寂しいからとりあえず恋人作んのさ。大好きってわけでもないが不安が埋まるから付き合うんだよ。旦那はあたしの『キープ君』で、あたしは旦那の『キープちゃん』さ。もっとイイ男いたらヨロシクやんのさ」 ソ「ひどいこと言いますね!」悪気もなさそうに。 カ「みんな同んなじだよ。結婚なんて醒めたもんさ。旦那も同んなじだしね」 ソ「まぁそうかもしれないけど・・・」 娘「もう。そういうこと娘の前で言わないでくれる!」 カ「あんたは違うよ。女にでもババァにも誰にでも話しかけられんだからさ。そういう奴は寂しくならないんだろうさ」 娘「そうよ


episode56 『王と悟り』
episode56 7つ目の村を越えると山は下りに差し掛かる。 「ふう」という安堵の溜息とともに、少し寂しくもある。山脈という風景は、カレンの日常からは圧倒的に遠くて、密裡道の佇まいはどこか神秘的で、不思議な異空間に入り込んでしまったような陶酔があった。遠い昔にタイムスリップしたような感覚もあった。長い夢から、今覚めようとしている。 よいのだ。普通の旅路もそれなりに恍惚な夢の中だから。 人の往来が増え、馬車の往来も増え、そしてサザムが言っていたように盗賊っぽい姿の者が多くなってきた。 山の向こうにあったのは、城壁に囲まれた国だった。リンガイアという国だ。 なるほど盗賊風情の者が多い。というか、行き交う人の大半が腰に短剣を差している!こんなに民の武器の所持率が高い国は見たことがないぞ。 リンガイア 挿絵 by 生成AI そしてそれとは別に、町民の2割くらいは盗賊っぽいなりをしている。これは割合としては異常に多いと言える。 しかし幸か不幸か、その中においてソロは溶け込んでいるようだった。弱そうな平民だから絡んでやろう、といった目は向いてこない。...


episode55 『王と悟り』
episode55 4つ目の大きな村を抜け、さらに峰を歩く。 ポタロ宮とシャンバラの寄り道を挟んだことで、この巡礼路は途端に容易に感じられるようになった。ソロはさらに逞しくなったようだった。 戦闘能力が上がったし、険しい山地に強くなったし、なんというか、人間の殺気や狂気のようなものに対してタフになった。 寒さに強くなり、悪路に強くなり、「どんな場所でもどうにか生き延びるだろう」といった楽観を得た。それは言葉に出来ない強さであり、数字に出来ない強さだ。 なぜあの密裡道の者たちがこんな過酷な巡礼路の文化を作ったのか、なんとなくわかった気がした。 魔物と戦わずとも、人は強くなれる。 宗教とは本来、人を高めるためにある。いや宗教には色々あって、人のすがる気持ちを濫用してお金を稼ごうとするようなものが多い。しかし人を高めるために諭すものもある。そういう宗教は、こうした過酷な修行を課すのだろう。 「山を歩け」と言っているのではない。「聖地を目指せ」と言っているのではない。「魔物を倒せ」と言っているのではない。「生きる強さを培え」と真意(い)っている。...


episode54 『王と悟り』
episode54 サザム ソロはサザムの家へと帰宅した。 龍の血の話も、洞穴の龍の話もしなかった。ただ「向こう側に冒険に出た」とだけ報告した。 しかし夕飯を囲みながら、違うことを尋ねる。 ソ「何百歳も生きる人っているんですかね?子供の頃におとぎ話で、山の上には仙人がいるって読みましたよ。すごい長生きしているんです」 サ「何百歳も生きた人間の話が、世界のあちこちにあるらしい。 だからって実在するとは言えないが、何人も報告されているというのはどういうことだろうな」 ソ「健康に生きたらいいんでしょうかね?」 サ「食事に気を付けるだけでは100歳を超えることは無理だ、という学者の説を読んだことがあるな」 ソ「じゃぁ魔法ですか?」 サ「回復魔法というものが本当にあるのを見ると、長生きもあり得ると思える。 長生きとは要は、細胞の回復が良いのだろう」 ソ「でも、魔法は効かないこともあるんですよ」 サ「そうだ。だから回復魔法を使えれば皆が不老不死、ということでもないのだろう。 僧侶だって普通は80歳で死ぬからな」 一泊の休息を経て、ソロとサザムはポタロ宮
episode53 『王と悟り』
episode53 3人はソロをまたいで扉の奥へと入っていく。 戦「うぉー!ホントにいやがった!!!」 雪山の奥深き洞穴には、緑色の大きな龍がとぐろを巻いていた。 盗「うほー!マンガで見たことあんぞ、こういうやつ!」 緑龍 ジャキン!3人は武器を構えた。 3人の構える武器を、龍は見据える。 龍「話し合いをする余地もなしか。仕方ないな・・・」 龍は大きく息を吸い込んだ! 「うぉー!」3人は武器を振りかぶって立ち向かっていく。 ビュゥゥゥ――――――!!!! 龍は冷たく輝く息を吐きだした! 3人は凍り付き、あっさりともう動けない・・・ 龍は凄まじく強いのだった。 ソ「う・・・あ・・・」 ソロは洞穴の向こうの声だけが聞こえている。 ソ「痺れたときはたしか・・・《まんげつ草》だ」 ソロは覚束ない手で懸命に鞄をまさぐり、《まんげつ草》を取り出し、口に入れた。 次第に痺れは引いてくる。 立ち上がり、扉の向こうへ目をやると、そこにいる大きな緑の龍に驚かされる! ソ「・・・!」 龍はゆらゆらと揺れている。 龍「そなたも私を殺しに来たのか?」 ソ「い、いいえ!」


episode52 『王と悟り』
episode52 里を端まで歩くと、まだ広大な雪山が広がっている。なぜここだけ雪がなく暖かいのか・・・なぜというか、そのために設けられた聖地なのだろうが。 そこからはぐれて探索に出ることは大きな危険を伴う。それなりの強さと覚悟がいる。しかし龍とはおそらく、そういった先にしか居ないのだろう。だから彼女は見つけられていない。 シャンバラの雪山 挿絵 by 生成AI ソロは台地から下に降りる。 すると、古い立札が佇んでいるのを見つけた。寄ってみる。 「この上、シャンバラの台地」 ソ「あの無政府世界、シャンバラっていうんだな」 位置のわからなくなった者が、この立札を見て上に登るのだろうか。帰りはこれが大事な目印になりそうだ。 ソロは道しるべの発見に満足して先へ行こうとしたが、ふと立ち止まる。いや、こんなところに立札は必要か?微妙な違和感を覚える。 もう一度立札を見る。 ソ「うーん」 裏側まで見る。 ソ「あ!」 『古の勇者ローシュの旅日記~シャンバラの奥編~』 詩人というのはいやらしい奴だ。なぜなら、比喩表現を多用するからだ。 ソ「う、うん。まぁ耳が痛い
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