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エピソード26 『トランク1つで生きていく』
「私、恋愛があまり良いものだとは思えないんです。 人生の足を引っ張るだけのような気もするし…」 「それはきっと、ハナちゃんがまだ、 良い男性と恋愛したことがないからよ。 恋愛とひとくちに言っても、色んなのがあるじゃない。 良い恋愛もあれば悪い恋愛もあるわ。...
『トランク1つで生きていく』まえがき
まえがき これは、熊本地震を機に生き方を一変させた女性を描く、 中編程度のヒューマンドラマです。 対象年齢は、高校生以上を想定しています。
エピソード15 『トランク1つで生きていく』
エピソード15 京都で暮らしはじめて、3ヶ月も経ったある日のこと。 その日は私もコウセイくんも、夜のバイトが休みだった。 コウセイくんは珍しく、私を夜の京都観光に誘った。 「舞妓さんの行きかう祇園の路地は、夜のほうが風情があるんだよ」と。...
エピソード1 『トランク1つで生きていく』
プロローグ ドォーーーーーーーーーーーーーーン!! あのときのすさまじい衝撃は、今でも鮮明に思い出せる。 けれど思い出さない。描写したりはしない。 「震災の恐怖を語り継ごう」なんてニュースは真面目な顔で言うけれど、 私はまったく賛同できない。無意味に思い出したくはない。...
エピソード13 『トランク1つで生きていく』
エピソード13 コウセイくんが連れていってくれたのは、伏見稲荷大社だった。 朱い鳥居がいくつもいくつも並んでる、CMとかでよく見るあの神社! 「わぁ、私ここ、見てみたかったんです!」 「そうだと思ってさ。たいていみんなそうだから。 ちょっとハイキングになるけど、大丈夫?」...
エピソード23 『トランク1つで生きていく』
エピソード23 バスはやがて、東の海沿いに出ました。 ところどころ、オーシャンビューのカフェがあって、 あとは大体、緑に覆われています。民家すらそう多くない。 私の住んでいた熊本の町より田舎で、愛子さんと行った角島に似ていました。...
エピソード14 『トランク1つで生きていく』
「万屋」での私の仕事は、掃除だけで良かった。接客は含まれていなかった。 けれど、お客さんからすれば誰が掃除要員で誰が接客要員かは、わからない。 なので、私に声をかけてくる人も大勢いた。 それが日本人ならまだ良いのだけれど、京都は一大観光名所。外国人客も多い。...
エピソード20 『トランク1つで生きていく』
エピソード20 話は続いた。 「そういう点から言うと、 私もう、沖縄にもトキメかなくなっちゃってて…」 「それって、『沖縄に』じゃなくて、 『那覇に』か、または『まりりんに』じゃなくて?」 「あ、そうかもしれないです。まだ沖縄ぜんぜん見てないです。」...
エピローグ 『トランク1つで生きていく』
家を失ったときって、壮大なチャンスなんだと思う。 ヘンテコな旅行をするチャンスであり、大きな冒険をするチャンス。 たくさんの出会いに感動するチャンスであり、 たくさんの変化にチャレンジするチャンス。 失ったものを数えて悲しむより、新しいことに目を向ければいい。...
エピソード3 『トランク1つで生きていく』
「ちょっとあなた、それ何て書いてあるの?山口とかって?」 良かった!女性だ!! くねくねのソバージュに大きなサングラス。勝気なしゃべり方をしているけど、 たしかに女性だ! 女性はサングラスを取って目を細め、口をぽかんと開けて、 私とスケッチブックを交互に凝視している。...
エピソード21 『トランク1つで生きていく』
エピソード21 翌日の晩にもまた、夕食を作ろうかとお誘いをしてみたけれど、 彼は笑って、それを断りました。 「今日は外食の日だから」と。 自炊だと食べる食材に偏りが出てくるので、 週に1度は外で夕食を食べるんだそうです。 私はそれに、同行させてもらうことにしました。...
エピソード12 『トランク1つで生きていく』
エピソード12 一番几帳面なのは、ひょっとするとコウセイくんかもしれない。 几帳面というか、彼はよく「リスクマネージメント」という言葉を口にした。 「りすくまねーじめんと?」私には聞きなれない言葉だった。 「そう。『リスクへの対応策』ってこと。 掃除と昼食を終えて、...
エピソード10 『トランク1つで生きていく』
私は翌日、メグちゃんに別れを告げて、京都の町を目指した。 電車を乗り継いで、無事京都駅にはついた。けれど。 はて、ゲストハウスとやらは、どうやって探せば良いのでしょうか? 私は、ゲストハウスというのはなじみがなくてよくわからない。...
エピソード6 『トランク1つで生きていく』
フレンチトーストは美味しかった。PAのテキトウな食事よりも、きっと美味しい。 愛子さんは手早く食事を済ますと、タオルを持ってお手洗いに行った。 タオルを濡らして、体を拭くらしい。シャワーの代わりだ。 彼女と入れ替わりで、私もそれをやってみた。思いのほかスッキリする。...
エピソード17 『トランク1つで生きていく』
エピソード17 12月の沖縄は、思ったよりは肌寒くて、 関空でダウンジャケットを捨てようか迷ったので、危ないろころだった。 それでも京都や熊本よりはずっと暖かい。いいな、南国って。 私はあのノマドのおじさんにもらったメモを頼りに、新しいゲストハウスを探した。...
エピソード16 『トランク1つで生きていく』
「万屋」で生活していると、ときどき誰かと仲良くなることがある。 宿泊客の中には長期滞在の人もいて、なぜか私の名前を覚えていたりもする。 「ハナちゃんは、毎日掃除ばっかりしてるね? 若いのに掃除を嫌がらない女は、イイ女なんだよ。」 私ははっと振り返った。...
エピソード18 『トランク1つで生きていく』
変な話を振られたり、変なことを頼まれると、「は?」と思うけれど、 何気にこれが、面白い。 熊本の暮らしでは、会話する人はいつも限られていて、 会話する内容もほとんど同じで限られていた。日々に刺激がなかった。 それが、熊本を出てきてからというもの、...
エピソード4 『トランク1つで生きていく』
けっこうワイルドなスピードで飛ばしていたのに、 愛子さんはなぜか、急に減速をはじめる。 「あらー。ダメね。迂回だわ。」 身を乗り出すように、前方を眺めている。 「何ですか?」私には見えない。 「亀裂よ。けっこう派手ね。コリャ通れないわ。」...
エピソード27 『トランク1つで生きていく』
麗子さんの民泊は素泊まり宿で、食事は付かない。 けれどしょっちゅう、麗子さんは私に手料理を振舞ってくれる。 私もまた、麗子さんや子供たちのぶんまで料理をしたりする。 ときどき私が、子供たちの宿題を見てあげたりする。 子供たちが私のために、スーパーに買い物に行ってくれることも...
エピソード5 『トランク1つで生きていく』
エピソード5 愛子さんは精力的に運転を続け、ついに九州を抜けた。 本州に入ってすぐのところ、壇ノ浦のパーキングエリアに車を停めると、 「今日はここで寝ましょう」と言った。 壇ノ浦のパーキングエリアも、ただならぬ喧騒があった。...
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